減点主義の報道
(old title) JAL機と海保機の事故「管制官の指示聞き間違えか」
元日本航空機長で航空評論家の小林宏之さんは、「日航機と海保機のいずれかが管制官の指示を聞き間違えたのではないか」と指摘する。
英ガーディアン紙は「まず第一に、私たちは奇跡を目撃したと言わなければならない。あの飛行機から乗客全員を降ろした方法は、ほとんど信じられないほどだ」との元民間パイロットの談話を伝えた。
米ニューヨーク・タイムズ紙は旅客機の安全教育の専門家の話として「驚くべきだ。CAたちの反応速度は目を見張るものがあった。本当に奇跡だった」。
またロイター通信は「CAたちは素晴らしい仕事をしたに違いない。乗客全員が降りられたのは奇跡的だった」との航空分析会社の専門家の話を伝えた。
・「早く出して」口々に叫ぶ子どもら
・JAL機と海保機の事故「管制官の指示聞き間違えか」
・日航が会見「着陸許可出ていた」「海保機の存在視認できず」
【海外報道】
・「私たちは奇跡を目撃した」
・「あの飛行機から乗客全員を降ろした方法は、ほとんど信じられないほどだ」
・「乗員がどれだけ避難訓練に時間を割いてきたかを思い知らされた。素晴らしい仕事をした」
日航機衝突事故にまつわる国内外の報道と記者会見をウォッチしてましたが、つくづく我が国のマスコミ報道、および会見における記者の姿勢は本当にクソだなあと暗澹たる気持ちになりましたね。どのあたりがクソであるのか、具体的に述べていきましょう。
(1)悪意とアラ探しと批判に満ちたネガティブな報道姿勢
⇒今般お亡くなりになった海保職員の方々には謹んで哀悼の意を表しますが、新型機を焼失するほどの大きな衝突事故であったにも関わらず、操縦士の方々は燃えさかる機体を安全に胴体着陸させ、乗員の皆さん方は旅客機の乗員乗客379名を着陸後18分で全員脱出成功させるという完璧な避難誘導を成し遂げられたわけです。
さらには関係者の尽力の結果、空港運用も当日中に再開できているというのもまた奇跡的でしょう。本来、事故対応と復旧にあたった関係者全員が賞賛されるべき事態ですし、実際海外メディアはそのような論調です。一方我が国のメディアでは、事故に対処したプロフェッショナルを称える論調は見られず、ひたすら重箱の隅をつつくようにミスを探し出し、やれ子供が叫んでた、ペットが残されていたと非難。実に陰湿で嫌な気持ちになるからクソ。
(2)子供をダシにして不安を煽るだけのコタツ記事
⇒乗客が提供してくれた映像を単に解説するだけの記事、という時点で既にクソなのに、「燃えている機体から『早く出して』と子どもや女性が口々に叫ぶ中、フライトアテンダントは着席をうながすよう叫ぶ」「泣き叫ぶ子どもの悲痛な声も聞こえた」などと、まるで子供の叫び声を無視して対応した日航の乗員に不手際があるかのような、主観的なお気持ちが滲み出て煽情的になってるところがクソですね。
乗客が不安になるのも、子供が早く出してと叫ぶのも分かりますが、そもそも「フライトアテンダントは保安要員であるから、緊急時に乗客は指示に従う必要がある」「火災発生時は、開けていいドアを見極めなければ、炎が機内に入ってきたり、乗客が転落してしまうリスクがある」という大前提があるわけです。乗員が人命を守るべく必死で行動しているときに、子供の叫び声に同調して大人まで叫び始めると機内はパニック状態となり、助かるはずの命さえ助からないかもしれない。そんな状況において、公の報道機関が子供の叫び声を擁護するような記事を出してしまうと、今後同様の場面で間違った選択をする人が出てくる可能性に思い当たらないものでしょうか。
「乗員は子供の叫び声にほだされることなく、迅速に脱出口を決定して乗客を誘導でき、乗客も冷静に協力した結果、全員の脱出に成功した」と書かず、不安を煽り、将来的な事故リスクを多少なりとも高めてしまってるからクソ。
(3)「糾弾」ありきの、傲慢で高圧的な記者の態度
⇒今般に限らず、記者会見に出てくる記者って、まともな質問もできないクセになんであんなにイキり散らかしてるんですかね。
そもそも航空事故の場合、運輸安全委員会が時間をかけて徹底的に調査するので、事故直後で混乱しているときに不確定情報を出すわけにはいかないんですよ。だから日航側としては「確認中」としか回答できず、その中で真摯に対応していました。なのに記者どもの態度はなんですか。「着陸許可が出ていたかどうかは確認中」だと再三回答してるのに、「御社の評判にも関わることと思うんですが、それをまだ言えないってことですか?」とは何様のつもりだよ朝日新聞。「俺たちはお前らの評判を下げさせられるんだ」と言わんばかりの態度がクソ。
まあ、どの点に関しても「確認中」だと記事にしようがなかったという事情もあるんでしょうが、他にも「冒頭で謝罪したのはどういう意図だ」だの、「機長のプロフィールを教えろ」だの、「アナウンスに不備があった」だの、「脱出後に誘導がなかった」だの、記者たちによるひたすら失言狙いの揚げ足取りのような質問には辟易しましたよ。どこかで「記者はあえて無知を演じて、素朴な疑問をぶつける役割もあるんだ」みたいな言い訳を見たことがありますが、その無知を演じるという立場に甘えて勉強してないだけじゃないですか。ホントクソ。
(4)憶測で見出し詐欺
・JAL機と海保機の事故「管制官の指示聞き間違えか」
・日航が会見「着陸許可出ていた」
っていう見出しだけ見たら、読者は「なるほど、日航機には着陸許可が出てたっていうことは、海保機が管制官の指示を聞き間違えたんだな」と思うでしょう。でも実際は、現時点で実際の事故原因はまだ判明しておらず調査中です。このように、あたかも誰かが悪いと誤認させる見出し詐欺をやるからクソ。
ちなみに「管制官の指示聞き間違えか」というのは、朝日新聞のインタビューに答えた専門家が提示した見解のうちのひとつでしかなく、記事中ではその他の可能性についても言及されています。また「着陸許可出ていた」というのも、記者会見を見てないと微妙なニュアンスの違いが分かりにくいんですが、日航側は「通常は着陸許可が出てから着陸するもの」という一般論を語っているに過ぎず、当日実際に着陸許可が出ていたかどうかはあくまで確認中と回答しています。それを「出ていた」と見出しにつけるのはもう誤報レベルでしょう。クソ。
とくに航空事故の場合、様々な原因が複合的に絡み合って発生するので、誰か特定の責に帰する類のものではないでしょう。大切なのは不幸な事故が再発しないように仕組みを改善することです。ヒューマンエラーを咎めて犯人を吊し上げるような論調になると、こんどは隠蔽に至って更に大事故になるケースもありますからね。結論:クソofクソ。
メディア各社は権力の監視も結構ですが、目についた悪い点をただ指摘するだけなら誰でもできるんですよ。また、イデオロギーがこびりついた想いを吐露されても気持ち悪いだけなので、ぜひ各社は不必要に煽情的にならずに、「報道事実を曲げずに描写する」、「報道する者の意見を含まない」、「意見が分かれる事柄は一方の意見に偏らず報道する」という報道三原則に立ち返ってほしいです。あと「意見を含まない」とはいいつつも個人的には、賞賛すべき点や評価すべき点があれば素直に(たとえ政治的スタンスが違っていても)賞賛し、評価して頂きたいですね。
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