海馬シータリズム
海馬での位相差によって10倍程度の時間軸圧縮効果
特集:海馬におけるシータリズムに協調した神経活動と記憶形成 - 理研BSIニュース No. 22(2003年11月号)- 独立行政法人 理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI)
自発行動時のラットでは4~12Hzの安定なリズム
行動してないときには出ない
海馬の機能についての仮説: 空間認知地図説(O'Keefe and Nadel, 1978)
ラットの居場所に選択的に細胞が活動し、細胞集団として外界の地図を表現する
場所細胞と呼ばれる。
場所細胞とシータリズムの関係はO'Keefe and Recce (1993)により報告された。
この最初の報告は、個々の場所細胞の発火に関するもの
Skaggs et al.(1996)
シータ位相歳差
場所細胞集団の刻むリズムの性質
場所細胞の発火周期が、シータリズムの発火周期よりも少し短い
結果として、発火し始めた時期の早い細胞がシータリズム1周期の中で前の方に来る
結果、時間軸が10倍程度圧縮される
LFP(local field potential)がクロックのような働きをする
なぜ周期が短いのか謎
シータ位相歳差と学習
引込現象から説明できる
引込現象=リズム相互作用系の基本的な性質
神経細胞のリズムとLFPシータリズムとの相互作用によって、細胞集団としての時間パターンが形成され、
それが海馬の神経回路に伝えられることで、海馬内のシナプス可塑性を選択的に生みだす
ような海馬のダイナミクスのモデルを提案した(図2)。
「海馬錐体細胞のシナプス可塑性は、前シナプス細胞、後シナプス細胞が数十ミリ秒の時間差で活動した時に選択的なシナプス増強が起こる。」
これは観測事実ではなくて、そういうモデルにしてみた、ということ?
ちょうどよい時間差ので活動した海馬内細胞に一方向的なシナプスが形成される
ということは基本的には全体全結合?
位相歳差生成の鍵となる仮定
海馬への入力部位にある細胞が、シータリズム程度の振動数で活性化する
その自発振動数が、活動持続にともなって徐々に増加する
海馬の入口である内嗅野およびその周辺では、シータリズム付近の周波数で活動し、しかも周波数が変化する神経細胞が報告されている(Egolov et al. 2002など)ので無茶な仮定ではないはず
計算機実験で、時系列の正しい貯蔵能力に明らかな差がでる
記憶装置としてのこのモデルの利点
シナプスの識別する固定した時間差(数十ミリ秒)と
経験される出来事(~秒)のギャップをつなぐこと
→シナプスの時間差は固定
実験データ:一様な位相シフトの成分に注目すると、
海馬の入口に近い歯状回の活動は単調な位相シフトのみで構成される
CA1の位相に比べて0.2周期分先行している
モデルの挙動と一致
ヒトでは海馬はエピソード記憶に関与するとされている。
ラットでも海馬だけでなく、辺縁系のいくつかの部位で同時にシータリズム活動が生ずる
ヒト脳波測定による知見では前頭中心部のシータリズム(Fmシータ)が認知思考課題中に発生する
海馬の時間圧縮