流行り物に飛びつくことについて
2015-09-09
首都大学東京でのオムニバス講義で、他の講演者の講義を聞いていて書いたこと 「流行りものに飛びつこう」も、割とハイコンテキストな言い方なのではないかと懸念している。「数学が大事」「より抽象度の高い知識ほど応用範囲が広い」というテーゼが通奏低音として流れていることを前提として、アンチテーゼとしてあえての「流行りものに飛びつこう」だよね?
抽象度の高い知識の方が応用範囲が広いから、年を取るに従ってそういう知識の重要度が上がる。だからオッサンたちは普段の生活の中で必要性を痛感して、学生に「大学の数学とか超重要」ってアドバイスをする。一方で抽象的知識は経験と結びつかないと応用しにくい、やる気も出ない
それを踏まえて「流行りものに飛びつこう」は若者の戦略としては有用。スタートラインの差が小さいから、経験を積み上げているオッサンと若者が戦った時に、若者の勝ち目が大きい。有利な土俵で勝つことで、注目や実績や人脈を(オッサンに取られる前に)奪い取る戦略は若者向きだ
一方で、その「流行りもの戦略」での成功体験に囚われるとジリ貧になる。僕が最初に出した本はJythonの本で、本を出す実績を積んだ点は成功だったが、個人的には内容の陳腐化の速度が予想以上で、題材選択の失敗と解釈している。それが二冊目の題材選択に強く影響している
まあそんなこといいつつ、流行りもののword2vecの本を出す話が来た時には「飛びついて実績を作る」戦略を選んでだわけだなあ、今考えると。機械学習の広いテーマの解説だと蓄積の量で機械学習自体が本業のPFNの人にかなわないから流行りものに飛びついたと解釈できる。
話を少し戻すと「流行りものに飛びつこう」が若者の戦略として有用なのは対オッサン戦略としてだけではない。積み上げの少ない分野だから、他人のやってないことを実現するまでの時間が短い。注目の分野だからフィードバックを貰える確率も高い。つまり学習サイクルが早く回せる
「学習のサイクルを速く回す」というコンセプトは、実は教育関係の本ではなく、意外かもしれないがベンチャーの経営に関する本で学んだ。リーン・スタートアップ。遡るとこれは経営戦略における派閥の一つで、その話はサイボウズ式の原稿に書いたのでそのうち公開される予定