新しい曲線に投資した方が得
2014年6月に描いた絵とその説明
https://gyazo.com/e2857c7b42cbdba8fe7b8cc1baa07164
全体
https://gyazo.com/a322e66095217076ba7d10048f99c69b
図中の「でも更に長期的には新しい曲線に投資するほうが得」は「でも新しい曲線に投資するほうが更に得」とすべきだ
時間などを投資してもすぐにリターンが増えるわけではない。
ある程度以上投入すると、単位時間あたりのリターンの量が増え始める(生産性の向上)
同じ分野に投入し続けると徐々に単位投資量あたりの向上量が減少してくる
3番目に異論があるのはわかるが、まずは作業仮説としよう。
このモデルからどういう現象が起きるか?
しきい値より手前では「学んでも生産性は伸びない」という状況なので、短期的に見れば投資をしないほうが合理的になる。一方(流れで学校に行って勉強するなどして)ある程度投資が行われてしきい値を超えると「学んだら学んだのにかかった時間以上に生産性が向上する」という状態になって、短期的に見ても投資が合理的になる。
この成功体験から、投資を続けていると、だんだん伸びが緩やかになっていく。曲線の傾き「単位時間に得られるリターンを時間換算したもの/投入した時間」が1を下回ると、投資してもすぐにはペイしなくなる。でも「まあ生産性の向上は少しだけだからすぐにはペイしないけど、長い目で見れば細々と時間が節約されてペイするんだ」的な正当化ができるので、まだ長期的には投資を続けたほうが得なように見える。
今まで繰り返してきた行動が「短期的に見て損」になったので「長期的に見れば損ではない」と視点を長期に移しているけど、探索範囲が「今まで繰り返してきた行動」に絞られているために最適解を見つけられていない。その長期的なレンジでは、別の曲線に投資して、リターン0の領域を通り抜けるって選択肢が実は最適解である可能性がある。
予想される反論「徐々に緩やかになるんじゃなくて、徐々に急になるんだよ!」
その気持ちは僕もとても良くわかるのだけど、それを正当化できる根拠が思いつかない。
Q: 新しい曲線に投資する場合に、既存の曲線からリソースの転用が利くか?
「新しい曲線に投資する場合に、既存の曲線からリソースの転用が利きますよ」が真で、新しい曲線ではより少ない投資で同等のリターンが得られるってモデルにすると、新しい曲線への挑戦を繰り返すことで指数的に成長するって説明はできる。ただ、このモデルだと「どんな場合でも加速効果あるのか?どういう時にあって、どういう時にないんだ?→既存の分野と関連が強いほど加速効果が高い」という話の流れになって、結局「新しい分野に挑戦すべき」って話が骨抜きになる気がする。
(tokoroten) 曲線をイノベーションをベースにすると、徐々に急になるけど、文献化された既存知識を集めるだけだと、徐々に緩やかになる、かな。 (nishi)既存の知識を集める場合だと「既存知識の総量」があるから必然的にどこかで傾きがゆるやかにならざるを得ないって主張はわかりやすい。だけど「イノベーションの方は徐々に急になる」ってのの方は(僕個人的には正しいような気がするけど)それを正当化する根拠が思いつかない
(tokoroten) イノベーションのジレンマ・破壊的イノベーションの数理モデルだよね?だったら、近い分野に投資して製品を改良して継続的イノベーションを続けていくのが正しい、という話だと思うのだが。 多角経営で失敗した会社は、シナジーを生めなくて、曲線間を足し算できなかったという話で。 (nishio)「個人が物事を学ぶ活動の経済的合理性についての数理モデル」というイメージでした。まあアイデアの由来としては、この曲線自体は破壊的イノベーションの文脈で「製品の性能が低すぎると効用は0、ある閾値を超えると効用が伸び始めるが逓減する」ってやつだし、S字曲線をつなぐ際に一時的にマイナスになるってのは技術のS字曲線をつなぐいわゆるイノベーション論ではあるのだけど。
https://gyazo.com/c19c59b7fff1d8acba7e59deddb23e38
数年前の僕は漠然と「学べば学ぶほど学ぶ効率が向上して加速する」と考えていたんだけど、一方で「S字曲線で飽和する」という主張も説得力があって、どう理解したらいいんだろうと考えていたの。
とりあえずFacebookに書いて説明したことで、図中の「でも更に長期的には新しい曲線に投資するほうが得」は「でも新しい曲線に投資するほうが更に得」とすべきだってのに気づけた
「異なる曲線のリターンが足し算されたものが全体のリターンとは限らない」という指摘はありだな
多分僕が今から音楽理論に全力投球しても、給料は上がらない。
学んだことによって単位時間に出せるアウトプットは増えるかもしれないが、そのアウトプットがお金に変換できるかどうかや、時間に変換して次の学びに再投資できるかどうかはなんともいえない。
単純に足し算なのが「シナジーのない多角化」で、1+1が2より大きくなるような関数が掛かっているのがシナジーのある場合か。
でもシナジーの多寡は事前にはわからない
(tokoroten) 縦軸が知識量軸だとすると、ここから利益軸にもう一度射影される。利益は、情報のわずかな差異によって産み出されるので、expのようなグラフ形状になる。
(nishio)そうだね、知識のS字曲線の縦軸を「知識量=単位時間あたりリターン=お金=時間」と暗黙に仮定してたあたりに問題があるわけだ。
「知識→利益」は関数じゃなくて、こんな感じの確率分布かもしれないな。
https://gyazo.com/a28b67d4c4bdfe0dc2be5809bd2baf25
ポワソン分布:単位時間内に平均λ回の頻度で起こる現象が、単位時間内にk回起こる確率の分布。 (tokoroten) 成功率の改善と、紛れ当たりしたときのリターンがでかくなるわけか。説得力ある。これをゲームに組み込んだのが、Aの魔方陣、なのかー。頭のなかでパズルのピースがガチガチっとはまった。