抱擁→拡張→排除
「抱擁→拡張→排除」は、米マイクロソフトが1990年代に採ったとされる競争戦略 *Embrace, Extend, Extinguish (EEE)* の直訳です。手順は次の三段階です。
抱擁 (Embrace)
既存のオープン標準や人気技術を全面的に取り込み、「互換性が高い」とアピールしてユーザーと開発者を安心させる。
1995年頃、Internet Explorer が HTML/HTTP を“標準通り”実装して登場。
拡張 (Extend)
独自機能を追加し、標準と微妙に非互換な“便利さ”を提供する。競合が追随しづらい独自 API/仕様を押し広げる。
ActiveX、VBScript、独自拡張 HTML タグなどを IE に実装。
排除 (Extinguish)
独自拡張が事実上の標準になると、元の標準だけを守る競合製品は「互換性がない」ように見え、シェアを失う。
Netscape Navigator は IE 独自拡張の氾濫で動かないページが増え、急速に凋落。
米司法省が 1998-1999 年の反トラスト訴訟でこのフレーズを証拠に挙げ、社内メモや証言で「embrace, extend, extinguish」と述べられていたことが確認されています。
戦略の要旨と各ステップは後に公開された 1994 年の J. Allard メモや複数の技術ブログでも整理されています。
今日でも「OSS を取り込んで独自拡張で囲い込み、最後に競合を市場から排除するやり口」を揶揄する際に「抱擁→拡張→排除」という比喩が使われます。