戦場の霧
古来より作戦・戦闘における意思決定の的確性は収集された情報の質と量に依るため、軍隊では情報収集のために偵察・捜索を組織的に行ってきた。しかし戦場において常に完全に状況が把握できるほど情報が揃うことは歴史的に見れば極めて稀であった。なぜなら地形や自軍・敵軍の状況、行動を完全かつリアルタイムに指揮官が把握することは技術的な観点から不可能であったからである。特に敵情については非常に流動的であるため、常に更新の必要性と情報の不完全性がつきまとい、指揮官が充分な根拠と確信を以て意思決定することを妨げてきた。クラウゼヴィッツはこれを「戦場の霧」と呼んだ(『戦争論』第2部第2章-24など)。