意見述べにおける日本人の論理展開についての一考察
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本論文は「日本人の意見表明における論理展開が、本当に“帰納的(結論をあとに述べる型)”ばかりなのか」を会話データをもとに検証した研究である。先行研究では、文章での日本語は「帰納的になりがち」とされてきたが、著者は自然会話のコーパス(インタビュー音声の文字化データ)を分析し、意見を述べる際の結論(中心文)が最初(冒頭)に来る「演繹的」パターンと、最後(末尾)に来る「帰納的」パターンの両方がほぼ同程度存在することを示した。
さらに、性別や社会的立場よりも、海外在住経験が強く論理展開に影響している点を明らかにしている。海外で暮らした経験がある人ほど、話の冒頭で結論を提示する「演繹型」を取りやすかったという。これらの結果から、「日本人だから常に帰納的」という一括的理解は誤りであり、使用言語・相手との関係性・海外経験など多様な要因が論理展開に作用することが示唆される。加えて、意見表明の教育や異文化コミュニケーションの場面でも、「どの型を取るか」は状況によって使い分け得るという視点が重要であると論じている。