年長者意見重視の原理
年長者は「有用な知識を蓄えている可能性が高いから」有用である
本質的には「有用な知識は有用」というトートロジー、これは真
ところが「ある知識Xが有用かどうか」を正しく判断するためには知識Yが必要。これを持っていなくて判断できないケースがしばしばある。
そこで一段階の推論として「有用な知識を生み出してきた個人から生み出された知識は有用な知識である可能性が高い」を使う。
これが賢者の言葉をありがたがる原理。
ところが「有用な知識を生み出してきた」の判断にまた知識が必要。
そこでラフな近似として
「年長者はたくさん知識を蓄えている可能性が高い」
「知識をたくさん蓄えている個体からは有用な知識が生み出される可能性が高い」
を使う。
この合成によって「年長者の生み出した知識は有用」と推論する。
(別のパターンとして社会的証明の原理が使われることもある、つまり「みんなが賢人だというからこの人は賢人」という思考パターン) この各ステップについて真なのか偽なのかと議論するのは誤った真偽二分法であって、全部確率的推論。 確率的推論は、十分成功率が高ければ有用。どの程度成功率が高ければ十分であるのかは、受け手の属性であり、推論自体の属性ではない。
確率がなめらかに減少した時に、ある時点で受け手にとって「有用である」から「有用でない」に切り替わるが、推論の側にはなにも明確な境界はないし、その「有用かどうか」は受け手によって異なっている
愚かな個体がすぐ死ぬ環境においては、長く生き残っている個体が愚かでない確率は高かった。
この「愚か者を殺す淘汰圧」は文明の進歩とともに緩やかに下がってきた。
時代の属性ではなく状況の属性。現代でも類似の構図の状況はある。例えば無能が即座に左遷や解雇をされるような組織において長期的に生き残ってる人は無能でない可能性が高い。
他の状況変化
「有用な知識を蓄えている」と「有用な知識を生み出すことができる」の相関の低下
「有用な知識」における「知識」が「有用」である期間が縮む
知識の種類による
新しい環境に対して「過去に蓄えた知識」を適用することの有用性
「新しい環境から速やかに知識を獲得すること」との比較
価値観が多様化すると「有用」の指すものが変わる