生まれた後の命と生まれる前の命のバランス
為末 大
繊細な議論だということは分かった上で申し上げますが、国を継続していくことは「生まれた後の命と生まれる前の命をバランスし続けること」と言い換えられると思います。大雑把に言えば生まれる直前から生まれた後の命を担当するのが医療、生まれる前の命を担当するのが社会の枠組みや政治だと思います。
医療が発達することは生まれた後の命を守り延ばしていくことです。医療は生まれた後の人たちの幸福感を高めます。しかし、極論を言えば人が生まれてこなければ守るべき命もまたありません。では生まれる前の命をどう守っていくか、つまりは生みやすい社会や制度や環境ということになるかと思いますが、担当している省庁はありながら非常に横断的で複雑です。なにより生まれる前の命が抱える最大の弱点は、票として表現すること