国が諸君に何をしてくれるかを問うな。諸君が国に対して何をできるかを問え
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短くまとめると――これは1961年1月20日のJ.F.ケネディ大統領就任演説の一節で、「受益者としての発想から、市民としての貢献へ」意識を切り替えよという、市民的義務(civic duty)を呼びかけるメッセージです。原文は
“Ask not what your country can do for you—ask what you can do for your country.”(続けて “My fellow citizens of the world …” と世界市民にも広げる一文が来ます)。(National Archives)
何がうまいのか(レトリック)
同語反復を語順反転で用いる アンチメタボリー(antimetabole) と、語順倒置 アナストロフィ(“Ask not …”) によって、耳に残る対句になっています。(LitCharts)
背景と意図
冷戦初期の「新しい世代にたいまつが渡った(the torch has been passed)」という世代交代の文脈で、公務・ボランティア・納税・兵役など公共への奉仕を強調。実際、この年に**平和部隊(Peace Corps)**が大統領令で創設されました。(JFK Library)
関連: 新たな冷戦
よくある誤解と日本語訳のニュアンス
“country” は 政府(government) より広い 国=共同体 を指します。権利を求めることを否定する文ではなく、「権利と責務の両立」を促す標語だと読むのが自然です。演説末尾では「アメリカがあなたに何をするかではなく、共に自由のために何ができるか」と、国益を越えた協働へも広げています。(National Archives)
先行表現(“JFKオリジナル”だけではない)
O.W.ホームズJr.(1884年メモリアル・デー演説)に「国が我々にしてくれたことを想起し、我々が国に何を返せるか自問せよ」という近い構文がある。(インターネットアーカイブ)
W.G.ハーディング(1916年)も「政府がしてくれることより、国に何ができるかを」と語っている。(wist.info)
In the great fulfillment we must have a citizenship less concerned about what the government can do for it and more anxious about what it can do for the nation.
これはgovernmentとnationを使い分けているnishio.icon
また カリール・ジブラーン(1925年「新しい国境」)に「国があなたに何をするかを問う政治家か、あなたが国に何をするかを問う政治家か」という一節があり、JFKの標語との連関がしばしば指摘されます(借用の確証まではない)。(The Poetry Foundation)
どう受け取ればよいか(実務的な読み)
個人の要求を黙らせるスローガンではなく、公共財をともに生み出す主体としての自覚を促す呼びかけ。とくに、投票・地域活動・公共サービスへの参加・グローバル課題(自由や人権)の協働といった、**「受け取る」よりも「加える」**行動の優先を示します。演説全体の調子もこの方向です。(JFK Library)
要するに、この一文は「国家に依存する受給者」から「公共を担う共同製作者」への視点転換を一撃で促す、構文も意味も美しく練られた市民倫理の名句だ、ということです。