交渉
幸せ軸の話
世の中の人はあなたのママではない。
世の中の人は「あなたの幸せを一番に考える」わけがない。
親とか先生など周りの人があなたの幸せを五番目ぐらいには考えてくれる人ばかりだったのなら、今まで恵まれていた。その発想のままだと将来不幸になるのでさっさと発想の転換をすべき。
その発想の転換とは「全ての人はその人の幸せのために動いている、けっしてあなたのためではない」というもの。
幸せ軸はみなバラバラなので、あなたと食い違ったからといって、相手が邪悪であなたが正義なわけではない。単に相対的に見て差があるだけのこと。
あまりひどいことにならないように法律というルールがあるが、逆に言えば法律に反しない範囲で相手の行動があなたの幸せを損ねたとしても、それはあなたの責任である。
他人と交渉する上では、まず相手の幸せ軸の把握に努めなければならない
提供者の量と交渉力の関係
資源の交換の交渉において、提供者が少ないほど提供者の交渉力は高まる。
ある工場でしか作られない部品を複数のメーカーが欲しがったら、その工場はどのメーカーにいくらで売るかの決定に強い交渉力を発揮できる。
逆にどこの工場でも作れるような部品を作っている工場は、メーカーからの値下げ要求に抵抗できない。
というわけで、交換の交渉においては、何が交換される資源であって、その希少度はどうなのかを考える必要がある。
労働時間をお金と交換する交渉において、お金を出す側が強い事例を見て「お金は強い資源なんだ」と勘違いするかもしれない。そうではなく「特に技能を持たない人間の労働時間」がとても弱いだけ。お金も割と弱い資源である。
自分の価値の評価
中山ところてん:
若いクリエイターの場合、彼らの周辺(学校、大学)が世界なので、ちょっとした技術がものすごい価値になっていることがあって、それが、そのまま自分には社会での価値がある、と思い込んでしまう傾向があることかなー。
(注: 逆に誤読している) 指摘の通り、周りにすごい人がいるせいで自分の価値を過小評価するかもしれない。
よく名前の知られか企業から交渉を持ちかけられた場合、自分より強い存在との交渉だと思ってしまうかも知れない。
しかし、実態は逆である。あなたは希少な資源を持っており、その大きな会社はその資源がほしい。だから交渉を持ちかけてきているのである。
知識は交渉力の要
知識は交渉力の要である。もし初回のミーティングであなただけが情報を提供し、相手から情報を引き出すことができなかった場合、次のミーティングではあなたはより不都合な立場に立たされることになる。情報自体が資源であることを忘れないように。
質問を恥じてはいけない。自分が優れた人間であるかのように見せようと、わからないことに対してわかったふりをしてはいけない。
例えば知財のライセンス契約に関して知識がないのにわかったふりをしたところで、誰もあなたのことをすごいなーとは思わない。その他の受け答えから滲み出る「わかってないなコイツ」感から「コイツは背伸びしてるのだな」と判断するだけである。相手は親切に解説書を送ってくれるかもしれないし、そこにつけ込んであなたに不利な契約を提案するかもしれない。
なお、不利な契約を提示されたとしてもあなたが契約に合意したら、法に反する契約でもない限りあなたの責任である。あいてが自分の幸せのために行動してくれてなかったと気付いてから弁護士に泣きついても「なんでこんなのに契約した」ってなる。
中山 ところてん
プロフェッショナル同士の会話では、お互いに相手の分野を知らないことが当たり前なので「~~~という言葉の意味が分からない、どういう意味ですか?」が割と連発する
専門性が多軸であることを知れば、相手に対する質問が怖くない。相手だって自分のことを知らないわけで。
質問して相手の解説したことが正しいとは限らない。もちろん悪意を持っている場合もあるが、悪意がなくても単に無能により誤った情報を伝えることがある。 例えば「協力してプロジェクトをやるにあたって、そこで作られたプログラムの著作権は当然うちの会社のものだよね」とかいってくる可能性がある。これは社員に対しては正しいし、共同プロジェクトの経験があまりなければ悪意なく社内と同じ扱いをしようとするのも理解できる。しかし誤りである。
なので、わからないことを聞くことは大事だが、教える役を交渉の相手だけに任せると、正しくない理解に至る可能性がある。自分も相談できる専門家を持つべきである。
特に社会のルールであるところの法律に関して、我々も交渉相手も基本的には専門家ではない。交渉相手は社内に法務部門があったり顧問弁護士を雇ってたりする。我々の側にも相談できる専門家が必要だ。
誰が決定権、決裁権を持っているのかの情報を探るべき。なぜなら、何かを交渉する際、説得すべき人はその人なのだから。
平和的に振舞おう
真っ先にギスギスした話をしたが、実際の交渉の場においてギスギスを表に出す必要はない。人間、ギスギスした関係は避けたいものだから。
対決はなるべくなら避けたい、一体感を引き出した方が良い、だけど最終的にどうしても譲れないなら対決することになる。
交渉に時間をかけると、企業の社員はどんどん弱くなる。「長らく議論したけど破談になりました」と上司に報告することにためらいを感じる人が多いからだ。合理的に振る舞うならそれまでに投下した時間や資源のことは無視して現時点での最適行動をとるべきだが、それをできない人の方が多い。
不必要に敵対する必要はないし、可能であればお互いに幸せになることが好ましい。しかしそのことは相手の幸せのために自分の幸せを犠牲にすることではない。
譲る必要のないものを譲ってはいけない。自分にとって価値の低いものを譲る時、それが自分にとってもっと価値の高いものと交換できないか考えるべきである。それが交渉のカードである。
欲しがると高い対価を払うことになる
交渉のテーブルで、相手は何かの資源、具体的には商品化の機会などを提示するだろう。あなたが「これを逃してはいけない」と思ったなら、あなたはとても弱い立場になる。
ある商品があり、あなたがそれをどうしても手に入れたい場合、あなたは相手の言い値を払うことになる。
利他は善ではない
大久保 康平 交渉の下手な人には利他的な人が多いので、「あなたが安く仕事をうけることは社会全体にとってマイナス」という認識が必要
無償や安い金額で引き受けることを「善」だと思ってはいけない、それはダンピングであり、市場破壊行為であり、買い手であるあなたの交渉相手は喜ぶかもしれないが同業者はあなたを憎むだろう、という感じかな
一方で「同業者の幸せ」もまた「あなたの幸せ」ではないのである。
特に売り手過剰の状況での売り手にとっては、同業者は限られた買い手という資源を奪い合う競合である。
そういう状況下では、ダンピングによって資源を奪い、実績を作って、それを信頼などに変換して、競合より有利な立場を占める、という戦略が有効。
原田 惇: 交渉のコツは、経験則だけども
①商習慣を知る
業界ごとに固有の商習慣があるので、まずはそういう標準を知るだけで無茶な注文聞かずに済むし強気なこと言えるようになる気がする。
②客観的に見て欲しい成果を明確にしておく
打ち合わせひとつ取っても「今日はスケジュールを握ろう」「来期の予算を抑えよう」「偉い人を引き摺り出そう」とか欲しい成果を明確にしておくと失敗が少ない気がする。逆に譲れるところは交渉カードになる。
③power, time, informationの三要素を抑える
You can negotiate anythingという本に出てくる三要素だけど、結構これを意識すると変わる気はする。中身は本があるので割愛。雑にいうと、決定権がある人を抑えて、相手の時間を奪って(他を検討させない)、外堀が埋められれば大抵勝てるという。
④そもそも負け戦はしない
やむを得ないことはあるにしても、そもそも筋悪いことには関わらないのが上策。
⑤自分に余裕を持つ
お金ないときにお金の交渉すると、お金が欲しすぎて負けるのでよくない。嘘でも余裕持っておくの重要。
⑥見た目に気をつける
スーツを着たプログラマが微妙と思う人と同じくらいに、腕時計ない革靴じゃないビジネスマンが信用されない法則あるので、なんにしてもそれっぽい格好してるといいことある。