ルソーは商業国家アテナイが嫌いで軍事国家スパルタが好き
ルソーは商業国家アテナイが嫌いで軍事国家スパルタが好き
gpt.icon
ジャン=ジャック・ルソーが商業国家アテナイよりも軍事国家スパルタを好んでいたという話は、彼の『社会契約論(The Social Contract)』や『政治経済論(Discourse on Political Economy)』、さらには『学問芸術論(Discourse on the Arts and Sciences)』などの著作にその根拠が見られます。以下、その理由と背景に関するいくつかのポイントと、該当する主要な著作について解説します。
1. 『社会契約論』での政治的理想
『社会契約論』では、ルソーは市民の徳や共同体の連帯を重視した国家の在り方を説いています。彼は、市民の自由や平等を守り、全体の利益を追求する「一般意志」に基づいた国家を理想としました。この文脈で、商業がもたらす富や贅沢、腐敗は、市民の徳を損ない、共同体の結束を弱めると考えました。
スパルタはその点で、市民が軍事訓練を通じて国家に奉仕し、厳格な規律と質素な生活を保つ理想的な共同体のモデルとされました。スパルタでは、市民の平等と徳が最優先され、商業的な富の追求や贅沢品の存在は排除されていました。このことが、ルソーの理想と一致し、スパルタへの好意につながっています。
2. 『学問芸術論』での文明批判
ルソーは『学問芸術論』で、商業や芸術、学問の発展が社会の道徳的な堕落と密接に関係していると批判しています。アテナイは、文化や芸術が繁栄した商業国家として描かれますが、ルソーはそのような商業的な富や贅沢が市民の徳や公共心を損なうと考えました。彼は、商業国家アテナイのような社会では個人の自己利益追求が優先され、社会の全体的な利益や道徳的な美徳が軽視されると主張しました。
これに対して、スパルタは商業を軽視し、国家への奉仕や共同体の連帯を重視する社会であったため、ルソーはそれを高く評価しました。特に、スパルタの厳格な教育制度や軍事訓練は、市民を道徳的に育て、国家に対する奉仕の精神を養うものであったため、ルソーの理想と合致したのです。
3. 『政治経済論』での経済観
ルソーは『政治経済論』で、商業が人々の道徳を堕落させ、国家を弱体化させると主張しています。商業国家では、個人の利益が社会の利益に優先されるため、全体としての統合や共同体の精神が失われやすいと考えられました。アテナイは、そのような商業的利益を追求する国家の典型として描かれています。
一方で、スパルタは商業活動をほとんど行わず、軍事力と市民の連帯を基盤とする国家であったため、経済的な繁栄ではなく、共同体の徳や規律を最優先としました。この経済観は、ルソーが求める「市民の徳と共同体の結束」を実現する理想的なモデルとして賞賛されました。
4. その他の著作と全体的な評価
ルソーのスパルタへの好意とアテナイへの批判は、彼の多くの著作で一貫したテーマとして見られます。商業国家であるアテナイの個人主義と贅沢な生活、そして商業活動によってもたらされる不平等や腐敗を嫌い、共同体の徳と市民の平等を強調する軍事国家スパルタを理想視するという態度は、彼の政治哲学全体に流れています。
以上のように、ルソーのスパルタに対する称賛とアテナイへの批判は、『社会契約論』や『学問芸術論』、『政治経済論』といった彼の主要な著作に根拠があります。これらの著作では、商業によってもたらされる道徳的堕落や不平等に対する批判と、共同体の徳と結束を重視するスパルタのような国家への理想が示されています。