ホロン
o3.iconアーサー・ケストラー(Arthur Koestler)は著書『The Ghost in the Machine』(1967)でホロン (holon) という語を造り、「あらゆる存在は 全体 (whole) であると同時に、より大きな全体の 部分 (part) でもある」という視点を示しました。ギリシア語 holos(全体)と素粒子を示す接尾辞 -on(部分)を組み合わせた造語です。
ホロンの三つの核心
二面性(ヤヌス原理)
どのホロンも「自己主張 = 自己保存」と「統合 = 協調」という相反する二つの志向を同時に持つ
自立性と従属性の張り合いがシステムの安定と進化を生む
ホラーキー (holarchy)
ホロンが入れ子状に連なる“開放的階層”
原子→分子→細胞→器官→個体→社会…という多層構造
自己調整開放系 (SOHO)
それぞれの層でホロンがフィードバックを使い自己調整しつつ上位層にも寄与
ハーバート・サイモンの「二人の時計職人」の寓話を理論的支柱に採用
なぜ重要か
部分と全体の二分法を越える視点
従来の「要素還元主義 vs. 全体論」の対立を統合し、複雑系を動的な階層として捉え直せる。
誤った二分法nishio.icon
生物・組織・認知の共通原理
生命現象、社会組織、言語、習慣などを“同じ構造”として比較できる枠組みを提供。
応用範囲の広さ
組織論 ― ホラクラシーやソシオクラシーなどのフラットなガバナンス設計
システム設計 ― マイクロサービスや分散システムの設計指針
意識研究 ― ケン・ウィルバー等による統合理論(AQAL)へ発展