プロジェクト提案書ってどう書くの?
2022-03-09
今年の未踏ジュニアの応募フォームが公開されました。
未踏ジュニアへの応募で、初めて「プロジェクト提案書」を書く人が多いと思います。有益なアドバイスをできる大人が近くにいるかどうかで提案書の質に差がつくのは良くないので、僕が近くにいたなら何とアドバイスするだろうな、ということを考えて書いてみました。 まず提案書テンプレートを開いて眺めてみましょう
これを頭から順番に埋めていこうとするのはやめましょう
まず、なんでも自由に書けるものを用意しましょう
テキストエディタでも、紙と鉛筆でもかまいません。
考える作業は大変なので、道具は頭を使わないでも使えるものがよいでしょう。
以下では「メモ帳」と呼ぶことにします
提案するプロジェクトのタイトル
これは提案内容が明確になった後で書くので飛ばしましょう。
メインクリエータ(代表者)の氏名
グループの場合、メンバーの氏名
メンバーが多い方が有利になるということはありません。
実際、2021年の採択プロジェクトはすべて一人プロジェクトでした。
提案するプロジェクトの簡単な説明(200字以内)
まず字数を気にせずに書きたいだけ説明を書いて見ましょう。
書いてから文字数を調べましょう。
もし200文字未満だったのなら、プロジェクトに対する思考が全然足りていません。
400〜600字くらい書いて、それから必要のない言葉を消したり、言いたいことのうちの優先度の低いものを諦めたりして、濃縮した結果として200文字になるのが良いと思います。
今の段階で400文字書けないなら、気にせずに先に進みましょう。他を書いてから後で戻ってきます。
今の時点で400文字書けた人も、他の部分を考えてから戻ってくると、別のことを書きたくなると思うので、まずは先に進みましょう。
提案内容
提案書のメイン部分です
最初から提案書に綺麗に整えて書こうとしないで、まずは書くとよさそうなことのアイデアをメモ帳に書きましょう。
思いついたことをどんどん書いていきましょう。どれをどの順で提案書に書くのかは、後で決めればよいのです。
思いつくことが途切れたら、質問文を読んでみましょう
それはどんなもの?
おじいちゃん、おばあちゃんに説明する〜
まったく知識のない人に説明しようとすることで、自分がまだ語っていなかったものに気付き、言葉になります。
あなたは「自分が知ってるようなことはメンターも知っているのでは」と思うかもしれません。しかし、意外と知らないものです。
メンターが知ってることを書いても害は少ないです。むしろあなたがよく理解している証拠になります。
一方であなたが「メンターは知ってるだろう」と思って書かなかったことをメンターが知らなかった場合、それは「あなたの提案をメンターがよく理解できない」という大きな損失になります。
どこが適切なバランスなのかは難しい、正解のない問題です。迷ったら書く方が安全です。
これができると誰がうれしい?
たくさんの人の役に立つ必要はありません
役には立たないかもしれないけれど、おもしろいというのもありです
この二つを組みあわせると、もちろん「自分が面白い」というのもありです。
勝手に「自分が面白いだけではダメなんだ、世のため人のためになる提案にしなきゃ」と思い込んでいる人が大人にもいるのですが、そうではないのです。
大事なのは、あなたがしようとしている提案が「自分が面白い」タイプのものなのか「それを喜ぶ人がいる」タイプのものなのかを、あなた自身がしっかり考えて言葉にすることです。
「自分が面白い」タイプなら、それがどう面白いのかを言葉や画像や動画で表現して、それを見た人に「面白い」と思わせるにはどうしたらいいかを考えるとよさそうです。
「それを喜ぶ人がいる」タイプなら、具体的にどのような人か?どうやって作ったものを使ってもらうのか?本当に喜ぶのか?などを考えていくとプロジェクトが上手くいく確率がが高まると思います。
似た問題を解決している既存の手段(なんらかの方法や、製品、サービスなど)は何がある?
たとえば「家族で買い物情報を共有するサービスを作ります」という提案の場合、その「情報共有ができてない」という問題は、既存の手段ではどのように解決されているのでしょうか?たとえば冷蔵庫にメモを貼ったりとか、LINEで家族チャンネルを作ったりとか、いろいろな解決方法があるわけです。
それらと比べた場合のあなたの提案するものの良いところはなんでしょうか?
このように考えていくことで、あなたの提案の強みが明確になっていきます。
どのように作る?
あなたが提案するもの(ソフトウェアやハードウェア)は、どんな技術やデータ、ツールを使ってどのように作っていくか、具体的に書いてください
すごく大事なことなのですが、ここで提案したものを作るのはあなたです。
なので、あなたが作り方をどの程度まで考えているのかに興味があります。
現時点で100%わかっている必要はありません。「ここまではわかったが、ここがわからない」という書き方はとても良いことです。何がわからないかを言葉にできているわけですから。
逆に作り方をまったく書けないなら、少し調べてから提案書を書いた方がいいかも。実現できない計画を綺麗に書いても意味がないですから。
あなた独自のアイデアは?
既存のものと比べて、提案のユニークなところはどこでしょう
改良した点を書いてみましょう
なにか既存のものを丸コピーしたのでもない限り、何か「違い」があるはずです。
この違いを説明して欲しいです。あなたにとっては当たり前でも、メンターにとってはよくわからないことがあるからです。
3. あなたが自分の貴重な時間を使ってこのプロジェクトを実現したい理由 (任意)
あなたが、他の誰かと比べて、このプロジェクトを進めるのに適していると思う理由を教えてください。たとえばあなただけの強みや、過去の経験などがあれば教えてください。
大事なことなので繰り返しますが、この提案を実行するのはあなたです。
有益なプロジェクトは基本的に、計画通りに進みません。あなたは「思った通りにいかない状況」を、自分の「実現したいこと」に近づけるためにたくさん考えることになるでしょう。
それをやっていくあなたの中の原動力は何でしょうか?
それをやっていくことの手助けとなるあなたの周囲の状況は何でしょうか?
4. このプロジェクトについて現在までに取り組んだこと (任意)
類似品の調査や、仮説検証をするためのアンケート、実験、プロトタイプの開発など、今までに取り組んだことがあれば書いてください。なにがどこまでできていて、どういったことがこれから難しそうかを詳しく書いてくれたら、面談でのやりとりがスムーズになります。
このプロジェクトに関して、何をやったか、何がどこまで検証されたのかを知りたいです。
まだここに書くことがないなー、と思ったら、提出締め切りまでに何かをできないか考えて、やってみるといいでしょう。
一つ注意点としては「何かプログラムを書いていれば偉い」というわけではないことです。
「このサービスを作ると嬉しい人が多分いると思う、なので作りやすいWebUIから作り始めてます」
…それって「嬉しい人が多分いる」が間違いだった場合、無駄になる作業ですよね?
「嬉しい人がいるかどうか」について、人に話を聞いたりしたのですか?それともあなたが一人でそう思ってるだけですか?
これが書かれていないと「一人でそう思ってるだけなのかな」と思ってしまいます。
「友人3人に話を聞いてみた」であっても、それはれっきとした「仮説検証のためのヒアリング調査」です。価値のあることです。
繰り返しになりますが「やったことが偉い」のではありません
「何々をやった」よりも「何々をやったことによって、〜が得られた」の得られたものが大事
「プロトタイプを作ってみたら〜という問題点が明らかになった」とてもいい話!
「想定ユーザに話を聞いたら、意外なことで悩んでいた」これもいい話!
5. 提案者がこれまで制作したソフトウェアまたはハードウェア
何か物を作った経験がどれくらいあるのか、どのような種類の経験をしているのかを見ています。思いつくものはなんでもアピールすると良いでしょう。
プロジェクトに使うのと同じ技術を使っているなら技術力の評価もプラスですが、関係ない技術であっても「ものを作る」ということはすべて「うまくいかない状況を試行錯誤してなんとかする」という経験なので、その経験がわかるものが書かれていると理解しやすいです。
6. 週あたりの作業時間の目安
7. 開発費の使用計画
これは時間の計画とお金の計画です。計画は状況が変われば修正されるものなので、現状でどう思ってるかを書けばいいと思います。
作業時間が長い方が採択されやすいということはありません。1時間でどれくらい作業できるかは人それぞれですし、そもそもプロジェクトは予期しない出来事で遅れるものですから。
開発費は、予算50万円を全部使う計画を立てる必要はないです。そもそもハードウェアプロジェクトに比べるとソフトウェアプロジェクトは必要になるものが少なめですから。
使う額が多いが少ないかで採択されやすさが変わることはありません。全員が予算全額を使っても大丈夫です。
8. 自己アピール
毎年面接で「えー、そんな面白い話があるなら自己アピールに書けばいいのに」と言われてる応募者がいる気がします。
面接に進んだ人はそうやって「書けばいいのに」と言われるけど、アピール不足で面接に進まなかった人にはそれに気づく機会がないのでもったいないですね。
自分のアピールのための情報はどこかにデジタルで書き溜めておいて、こういう提案書を書く時にはそこからコピペすればいいと思います。
「自分がやったこと」を整理し、必要に応じて人に伝達することは、あなたが社会人になった後も大事なスキルです。この機会に練習すると良いと思います。
さて、ようやく提案書の最後まで来ました。
あなたのメモ帳はどんな感じになりましたか?
提案書に書き込みたい内容がギュウギュウにひしめいていますか?それともスカスカですか?
一部のテーマに関してはそれなりに分量があるが、一部のテーマに関してはあんまり考えたことがなかったのでスカスカ、というのが一番ありがちなケースかなと思います。
どこが足りないと思ったのか、メモ帳に書き足しましょう。「ここが足りない」と。そして、それを埋めるために何が必要か考えましょう。机に座って考えるだけでいいのか、何かを調べる必要があるのか。
全般的にギュウギュウになったら次のステップです。
空欄にしていたプロジェクトのタイトルを決めましょう。
このタイトルは、提案書を読む人が一番最初に目にするところです。一番繰り返し目にするものでもあります。
下記の2つの提案書の、どちらが良いと思いますか?
A: 123-西尾泰和-Kozaneba
B: 123-西尾泰和-かんがえをまとめるデジタル文房具Kozaneba
Aは全然記憶に残らないでしょう。あるメンターが「Kozanebaの提案が〜」と話しても他の人が「えっとKozanebaってどんな提案でしたっけ」って言いそう
この件に関しては未踏ジュニアメンターの鈴木さんが良い記事を書いています
2. 提案タイトルで「領域」「目的」「手段」を説明しよう
ぜひ読みましょう。タイトルの書き方の部分以外もおすすめです。
さて、ここまできて、メモ帳には提案書に書くとよさそうな情報と、いい感じのタイトルとが集まってるかと思います。
次のステップとして、さっそく提案書を書いていく…その前に
提案書サンプル
昨年度までの採択者による提案書を下記から一部公開しています。フォーマットは今年の提案書とは一部異なる可能性がありますのでご注意ください。
これをダウンロードして読んでみましょう。
目的は「伝えたいことを伝える上での、表現方法のレパートリーを増やすこと」です
あなたは既に「伝えたいこと」をメモ帳に溜めましたが、それをどうアウトプットするのが効率的かを知りません。
今まさに必要な知識ですよね。それは、他の人の書いた提案書を読んで、良いやり方を真似することで効率よく学ぶわけです。
もうそろそろ、提案書を書きたくてうずうずしてるのではないかと思います。書きましょう。
提案書は何度でも応募し直せるので、一通り書いたら応募しましょう。
締め切りギリギリに初めて応募する人は、たぶん締め切りが近づいてから書き始めて、ギリギリに書き上がったものを送信してるのだと思います。騙されたと思って締め切りを1週間早く勘違いしてみてください。1週間早く応募して、一晩寝てから昨日応募した書類を読み直してみてください。きっと直したくなりますから。
一晩寝かせて読み返すことで文章が良くなります。ギリギリに仕上げて出す人はこのチャンスを失っているのです。
old title: 未踏ジュニアに応募する人へのアドバイス