プリンシパルエージェント問題
これもう少し発展させた方が良さそう
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プリンシパル=委任者、エージェント=受任者。両者の利害がズレ、かつ情報の非対称性(相手の行動や能力が見えない)ゆえに、エージェントが委任者の望む行動をとらない問題です。
主な型
逆選択:契約「前」の隠れた情報(能力・性向)。
モラルハザード:契約「後」の隠れた行動(努力・リスク選好)。
代理コストの分解(Jensen & Meckling 的整理)
監視費用+誓約/担保費用(ボンディング)+残余損失。
**代理コストの分解(Jensen & Meckling, 1976)**を掘り下げます。要点は
代理コスト = 監視費用(Monitoring)+ 誓約/担保費用(Bonding)+ 残余損失(Residual Loss) です。
1. 3要素の中身
監視費用(プリンシパル側の支出)
エージェントの行動・成果を“見える化/制約”するためのコスト。
例:外部監査・内部統制、取締役会/独立社外取、KPI/ログ計測、コンプラ/リスク管理、四半期開示、監査法人費用、コーチング・評価面談など。
誓約/担保費用(ボンディング)(エージェント側の負担)
「害を与えない/約束を守る」ことを自ら保証するためにエージェントが負う期待コスト。
例:業績連動の繰延報酬(未達なら失う)、自己資本投入(株保有・共同出資)、パフォーマンスボンド(保証金)、クローバック条項、競業避止や守秘による機会損失、違約金条項、プロ責任保険の自己負担など。
※ストックオプション“付与そのもの”は即時コストではないが、未達で失う/制限付株の没収など「守れなければ自分が痛む仕掛け」になっている部分がボンディング。
残余損失(両者が費用をかけてもなお残る効率低下)
完全に利害を一致させ、完全観測できた“理想(ファーストベスト)”に比べてなお残る価値の目減り。
例:経営者の“規模拡大嗜好”でNPVがやや落ちる、見えない努力が少し足りない、短期指標最適化で長期価値がわずかに毀損、など。
2. 直観的な設計原則(どこまで費用をかける?)
目的は M(監視)+B(ボンディング)+RL(残余損失)の合計最小化。
監視を増やせばRLは下がるがMが増える。ボンディングを強めればRLは下がるがBが増え、採用困難・人材の機会費用上昇も起こる。
限界便益=限界費用で止める が基本。
6) よくある誤解
「監視を最大化すれば良い」→コスト過剰・士気低下・創造性阻害。
「成果連動を最大化すれば良い」→リスク転嫁と短期化、測れない価値の軽視。
「ボンディング=罰則だけ」→利害共有・自己投資・クローバック等の“自ら痛む仕掛け”全般が該当。
まとめ:
代理コストは「見張るコスト(M)」「自ら縛るコスト(B)」「それでも残る損失(RL)」の最小合計をめざす設計問題。可視化→利害共有→必要最小限の拘束の順で、限界便益=限界費用を合図に止めるのが実務のコツです。