ニュートンの時間・ベルグソンの時間
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ノーバート・ウィーナー『サイバネティクス』第1章では、機械的・物理的世界を扱う「ニュートンの時間」と、生物や意識現象を扱う「ベルグソンの時間」が対比されます。ニュートンの時間は均一で客観的な「絶対時間」であり、古典物理学の方程式には時間の矢印がない(時間可逆的)ことが特徴です。一方、ベルグソンの時間は、主観的な継起感や持続(ドゥレー)に重きを置き、連続的で不可逆的な流れとして捉えられます。
ウィーナーは、生命やコミュニケーション系には「不可逆性」が含まれるとし、そこでは情報のやりとりやエントロピー増大などが時間の不可逆的な性質を示すと考えます。つまり、サイバネティクスにおいては、単なる物理法則(ニュートン的時間)だけでなく、生物や意識の動的側面(ベルグソン的時間)を考慮する必要があるのです。これにより、制御や情報伝達を理解する枠組みとしてのサイバネティクスが、機械と生物・人間の両方を包含する学問へと拡張されていきます。