コロンブスの卵
新大陸を発見したコロンブスが「船に乗って一方向に進んでいけば見つかるんだから、新大陸発見は難しくない」と言われて、「じゃあ卵を立ててみろ」を言いかえした、という逸話
新しいことが成し遂げられた後で「それは容易に実現できる」と言う人が世の中にはいる
後付けでそう言うことは、成し遂げることよりも圧倒的に容易に実現できる
アイデアを思いつくことと、それを実際に行うことの間には大きな差がある
アイデアを実行する際には、最初には見えなかったたくさんの障害が発生しそれを乗り越えることが必要
アイデアと実行の差に思い至らず「簡単だ」と言ってしまうことは、それ自体が話者の至らなさを示している
卵を割って立てた話が史実かどうかはあやしい
新大陸発見を祝う凱旋式典で「誰でも西へ行けば陸地にぶつかる。造作も無いことだ」などとコロンブスの成功を妬む人々に対し、コロンブスは「誰かこの卵を机に立ててみて下さい」と言い、誰も出来なかった後でコロンブスは軽く卵の先を割ってから机に立てた。「そんな方法なら誰でも出来る」と言う人々に対し、コロンブスは「人のした後では造作も無いことです」と返した。これが『コロンブスの卵』(Egg of Columbus)の逸話であり、「誰でも出来る事でも、最初に実行するのは至難であり、柔軟な発想力が必要」「逆転の発想」という意の故事で今日使われている。
しかし、ヴォルテールは『習俗論』(第145章)にて「これは建築家フィリッポ・ブルネレスキの逸話が元になった創作だ」と指摘し、会話の内容などもそのまま流用されていると説明した。逸話の内容は1410年代、『フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラ(ドーム部分)の設計にみな難儀していた際、ブルネレスキは設計図面も完成模型も見せないまま「私に建築させて下さい」と立候補した。他の建築家たちが大反対したところ、ブルネレスキは「大理石の上に卵を立てられる人に建築を任せてみてはどうか」と提案。誰も出来なかった中で、ブルネレスキは卵の底を潰して立てた。当然の如く周囲から批判されたが、ブルネレスキは「最初にやるのが最も難しい。もし先に図面を見せたら、あなた達は真似をするでしょう?」と切り返した。』というものである。