ものを元の位置に戻す人と見えるところに置く人
2021-07-18
「ものを元の位置に戻す」に関して、二人の世界に対する認知になんらかの違いがあるのではないかと掘り下げていった結果面白い仮説にたどり着いた
妻は子供部屋が妹と共有だったため「適当に置いたものは勝手に動く」というメンタルモデルが形成された。一方で僕は一人だけの部屋だったので「適当に置いたものもそこにあり続ける」というメンタルモデルが形成された。
この二つのメンタルモデルの差が特徴的に現れるのは、たとえば何かを作りかけで離席する場合
妻の場合は暗黙に「きちんとしまわなければ壊れる」と感じ、僕の場合は「作業してた机の上に置いて置けばよい」となる。
どちらの判断もそれぞれの環境では合理的だ。僕の環境では片付けると作業開始のオーバーヘッドが掛かるから見えるところに出したままにするのが合理的だった。
大人になって一人暮らしを始めたタイミングで二人とも環境が激変することになる。
まず妻の場合は「一人暮らしだと誰もものを動かさないから、ものは置かれた位置にとどまる!」という衝撃があった
次にたとえば「ハサミが見つからない」を経験した時に「勝手に動かす人がいないのだから、100%自分のせいである」と考えるようになる
「ものがあると思ったところにない」は「あると思った」が間違いであるか、過去の自分がそこに置かなかったかのどちらか
これを解決しようとすると「ものの居場所を明確にする」「そこにきちんと戻す」という行動が生まれる。
「見えないところにしまう」という行動が子供時代に形成されてたのが僕と比較する場合のポイント。
次に僕の場合は、社会人になったことによる購買力の上昇で子供の時よりものの増える速度が上がった。
これによって「新しく現れたものによって古いものが覆われて隠される」が発生するようになった。
そうすると「その辺に置いたものがいつの間にかなくなる」が緩やかに確率を高めながら発生するようになっていく
それでも「今さっき使ったものは、周辺に置いておく」という戦略で「よく使うものが表面近くにくる」という性質が現れるので「使ったものはその辺に置く」行動が維持される
加えて「必要なものが見つからない時には地層の上から順に探す」という行動になる
つまり「今必要なものは見えてるところにある確率が高い」と暗黙に考える
で、この二人が一緒に暮らし始めたところでまた環境の激変が起こる。
が、しかし、お互い適応能力が高かったので根本的な世界の認知に差があることに気づかないまま10年間生きて来れてしまった。
妻視点から見ると「ハサミがあるべき場所から机の上に移動してる」と見える。
これは子供時代に体験したことなので「自分があるべき場所に戻す」という行動になる。
僕視点から見ると「ハサミが周辺にない」と見える。
妻が特定の場所にハサミをしまってることを徐々に覚えて、そこから持ってくるようになる。
で、僕が日中出社してた時には僕の存在によるエントロピーの増加速度を妻の存在によるエントロピーの減少速度が上回ってて、エントロピーの低い状態にあったわけ。
むしろ買い物で出かける時間などを考えると妻より僕の方が家にいる時間が長い。
ここでエントロピー増加が始まってしまった。
ここからどうするかはまだ考えてないのだけど、現象は正しく認識できたように思う
天井まである大きな本棚を買ったりするの、基本的には僕のメンタルモデルと同じ「見えてるところにある、なければ奥にある」的思考だと思う。
コンピュータで言えばデータを高速に検索できるメモリ上に展開し、必要になったら全検索するモデル。
一方で妻のメンタルモデルは一覧性に頼らない
よく使うものはピンポイントでどこにあるかわかる
そうでないものもおおよそどのあたりにあるかわかるのでその周囲で探す。
つまりこれはデータベースがインデックスを作ることでデータの範囲を絞り込むのににたモデル
おおよそどのあたりにあるかわかる
「料理に関するものはキッチンにある」という自然な原則がある
「物はそれが使われる場所の近くにあるはずだ」というメンタルモデル
これは「使った後でその辺に置く」でも「使うシチュエーションを考えて置き場所を決める」でも同じように再現される
ところがこの原則は物理世界ではバランスするとは限らない
たとえば机の周りに机での仕事に使うすべての書籍を置くことができない
参考資料に関してはどんどん電子化していくことが上手く機能する
僕みたいなメンタルモデルの人に取っては「見えなくなってしまう」というデメリットがある
が、かわりに「検索」が使える。
コンピュータがかわりに探してくれる
もう一つ僕の認知特性として「今考えていること以外に関しての認知の解像度がとても下がる」がある。
なので掃除機を出して掃除した後、また使う可能性があると考えたら元に戻さずにその場に置いて、その後掃除機のことが頭からなくなると掃除機を跨いで歩いてても「掃除機が出しっぱなしで邪魔だな」と認識しない
「新しく現れたものによって古いものが覆われて隠される」が発生する/「今さっき使ったものは、周辺に置いておく」「よく使うものが表面近くにくる」
そうか、これはつまり「今やってることに関するものは表面にある」だな
Scrapboxを個人で使ってDate modified順の表示にするのは「最近使ったものが表面にある」型のメンタルモデルにとてもマッチしている
Date last visited順の場合、勝手に散らかされてしまう感じが強くなる
妻がScrapboxに「整理できない」という感覚を持つのは「ものの置き場所を決めたい」という気持ちが発生するからだ
メモ
紙の形である資料や自分の中間生産物
物理的プロトタイプ
関連