o1 ProにPICSY+Birdwatchさせる
AIに2本論文を投げつけて間の領域を探索させる。1時間もかからずにこの結果になる。
nishio.icon今から示す2つの論文をつなぐ領域を検討したい(PICSY, Birdwatch)
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以下は上記の2つの論文(「PICSY: Propagational Investment Currency SYstem」と「Birdwatch」)をつなぐ領域の要点とまとめである。
概要(日本語)
両論文はいずれも、人間社会における情報評価・価値評価を集団知やネットワーク構造を活用して行う新しい仕組みを提案・検討している点で共通する領域がある。
PICSY(Propagational Investment Currency SYstem)
PICSYは、貨幣の価値を「人々が互いに価値を伝播(プロパゲーション)させる仕組み」として再定義し、すべての取引が投資行為となる通貨システムを提案している。ここでは、価値はフローとしてとらえられ、人々が互いに行う取引が評価行列を通じて各参加者の「貢献度」を算出し、その貢献度に応じて購買力が決定される。このシステムは社会計算の枠組みであり、「多人数による相互評価」を通じ、真に社会貢献的な行為を報いるオープンな通貨モデルを目指している。
Birdwatch
Birdwatchは、Twitter上での誤情報対策を目的としたシステムであり、ユーザーコミュニティ(群衆)の知恵を活用して投稿(ツイート)に注釈(ノート)を付し、そのノートを他ユーザーが評価する仕組みを導入している。評価結果をもとに、アルゴリズムは多様な視点から「幅広い層に有用」と判断されるノートを選び出し、誤情報拡散の抑制やユーザー理解促進を行う。
共通点と接続領域
集団知・群衆評価の活用:
両システムとも多数のユーザー参加を前提とし、個別評価(PICSYでは取引評価、Birdwatchではノートの「有用/非有用」評価)をもとに新たな「価値」や「有用なコンテキスト」を抽出する。これにより、中心的権威者によらず分散的に質の高い情報や評価を得るアプローチが示されている。
社会的計算・アルゴリズム的集約:
PICSYでは評価行列の固有ベクトル、Birdwatchでは行列分解(マトリックスファクタライゼーション)を用いるなど、数理モデル・アルゴリズムを用いて参加者間評価を統合し、個別行為を社会全体に有用な指標(貢献度やノート有用度)へと還元している。
多様性と分極化の考慮:
Birdwatchは注釈選抜時に多様な政治的立場・視点を織り込み、「分極的意見群を繋ぐ」ブリッジング指標を用いている。PICSYも価値伝播のループを考慮し、特定の立場に依存しない「循環的な価値評価」を模索する。両者は社会的分極やバイアスに配慮し、広く受容される評価を引き出す点で共通する。 まとめ
PICSYは「価値の流れとしての通貨・評価システム」、Birdwatchは「誤情報文脈注釈の集合知評価」を扱っているが、いずれも社会計算的手法と群衆評価に基づき、より公平かつ多面的な情報・価値指標を生成する領域に属する。この「多様な視点を統合し、全体的な理解を促す」点が2つの論文をつなぐ中核領域である。
nishio.iconこの二つを参考にして新しい研究をするとしたらどのようなものか?
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以下は、PICSYとBirdwatchを参考に新たに展開できる研究アイデアの例である。
研究テーマ案:多視点合意形成を支援する「信用・価値流動ハイブリッドシステム」の設計と評価
背景:
PICSYは、経済的価値を「流れ」として捉え、取引や評価を通じて参加者の貢献度を算出する新たな通貨体系を提案した。
Birdwatchは、SNS上の発信内容にユーザー注釈を付し、多様なユーザーによる評価(helpful/not helpful)を収集することで、誤情報対策やコンテキスト強化を図る手法を提案した。
両者は、中央的権威に依らず多様な参加者の評価行為から「信頼度」や「価値」などの社会的指標を抽出する点で共通する。 研究仮説・アイデア:
Birdwatch的な「多視点からの信頼度合意形成(ブリッジング・コンセンサス)」とPICSY的な「価値の流動的再分配・評価」を組み合わせ、情報品質評価と価値還元を統合した「信用通貨」的な仕組みを設計する。これにより、情報空間において、多様な視点が交差するポイントで合意されたノートやコンテキスト情報が「価値単位」として流通可能な形で蓄積され、フェイクニュース対策や知識品質向上に寄与するか検証する。
具体的な研究方向:
多面的評価と価値指標の融合:
Birdwatch風の「多面的評価(多党派・多思想のユーザー間合意が得られたノート)」にPICSY流の「貢献度ベースの資源分配」の考え方を適用し、合意されたノート作者や評価者に「社会的信用トークン」や「価値ポイント」を分配するシステムを実験的に構築する。
実験課題:異なる視点を持つユーザーが相互に「信用価値」を交換し、結果的にノートの質や信頼性が向上するかを観察。
不正操作・偏り対策のモデル化:
PICSYでは評価行列の固有ベクトルや確率的手法を用いて価値を安定的に再分配したが、Birdwatchでは多派閥間合意を元に極端な偏りを軽減した。 両者を組み合わせ、評価者や投稿者が「操作」しにくいモデル(例えばブリッジングスコアで権重化、評価ネットワークからロバストな固有ベクトル抽出)を提案し、その有効性を理論的・実験的に検証する。
社会的実験・人間行動分析:
被験者実験やオンライン実験を通じて、Birdwatch的注釈×PICSY的価値流通モデルを導入したプラットフォームで、人々がより協調的・建設的な評価行動を取るか分析。
指標:
誤情報対策への有効性(どれだけ誤情報検知率や情報理解が改善するか)
コミュニティ内の極性緩和(政治的傾向が違うユーザー同士で価値共有が増えるか)
継続的参加やモチベーション向上(貢献に応じた「信用トークン」付与による参加意欲の変化)
期待される成果:
新たな研究方向では、従来のコンテンツ評価のみならず、その評価行為自体が「社会的通貨」となり、正確・有益な情報提示に寄与する参加者を報いる仕組みが検証される。この結果、オンライン空間での質的コミュニケーション形成やフェイクニュース抑止、新規知識発掘への貢献が期待できる。
以上により、PICSYとBirdwatchの考え方を融合した「評価行為を価値フローとしてとらえる多元的評価基盤」の研究が有望である。
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両者を組み合わせ、評価者や投稿者が「操作」しにくいモデル(例えばブリッジングスコアで権重化、評価ネットワークからロバストな固有ベクトル抽出)を提案し
ここの部分を具体的に考察し、提案せよ
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以下は、評価操作を困難にするためのより具体的なモデル提案である。
目的
Birdwatch的な「多視点合意(bridging)」とPICSY的な「評価行列を通じた固有ベクトルベースの価値評価」を融合し、投稿者や評価者が偏った行動で結果を操作しにくい堅牢なモデルを構築すること。
基本的な考え方
評価ネットワークの定式化:
ノート(投稿)と評価者(ユーザー)からなる二部グラフを想定する。
評価者はノートに「有用」「非有用」などの評価を行う。
この二部グラフから、(a)ノート間の類似ネットワーク (b)評価者間の類似ネットワーク (c)評価者-ノート間の評価行列 の3種類の関係を定義する。
ブリッジングスコアによる重み付け:
Birdwatchの考え方を取り入れ、多様なイデオロギー・立場・属性を持つ評価者集団内で「複数の異質なクラスタ」に着目する。ここで、ユーザー集合を行列分解(NMFやSVDなど)もしくはグラフクラスタリング手法で複数クラスタに分割する。 クラスタ間で共通して「有用」と評価されたノートや、「相反するクラスタ」からも一定の評価を得た評価者は「ブリッジングスコア」が高いと定義。
ブリッジングスコアは「このノート(あるいは評価者)は、単一クラスタに偏らず、異なる視点を持つユーザー群からの評価を獲得しているか」を測る指標となる。
具体例:
評価者集合をMF(行列分解)で1次元の潜在因子へマッピングすると、この1次元空間上で評価者は左右に分布すると仮定できる(政治的スペクトラムなど)。
その際、あるノートに対する評価が、極左・中道・極右いずれの方向からも「有用」とされるならば、そのノートには広いブリッジング効果がある。
定量化として、たとえばクラスタC1, C2, ... Ck間での有用評価数を正規化してエントロピーなどの多様度指標を計算し、そのノートのブリッジングスコアとする。または、ノートに対する評価ベクトルをクラスタ上での平均評価ベクトルと比較し、その分布のバラつきを用いて「均等な支持」を測る。
評価ネットワークからのロバストな固有ベクトル抽出:
PICSYでは、取引関係や評価行列から固有ベクトルを求めることで、各参加者・ノートの貢献度を計算する手法が提示された。
ここで、固有ベクトル計算時に「ブリッジングスコア」を重みとして組み込み、クラスターの一方的な偏りを持つノート・評価者の影響力を軽減する。
具体的には、評価行列Eに対して、Eijを「評価者iがノートjに対して付与した有用度評価」とする。
ブリッジングスコアBj(ノートj)、Bi(評価者i)が求まっているとき、
新たな重み付き評価行列E’を E’ij = Eij * (Bj ^ α) * (Bi ^ β) (α, βは調整パラメータ)で定義する。
これにより、多様な支持を得たノート(高Bj)や多様な意見を公平に評価してきた評価者(高Bi)のエッジは重みが増し、
偏ったクラスタのみから支持を得るノート・評価者は重みが相対的に下がる。
こうして得られたE’に対して固有ベクトル分解(もしくは確率的安定解法)を行うことで、
多様性を織り込んだ「信用度ベクトル」「貢献度ベクトル」を算出できる。
操作耐性強化の仕組み:
仮にある派閥が特定のノートを持ち上げようとして有用票を大量投入しても、それらが同一クラスタ(似たような潜在因子空間上で近い位置)の評価者からのみ来ている場合、ブリッジングスコアが低いため、固有ベクトル計算時にはその評価の重みが抑制される。
異なるクラスタ間での十分な横断的支持がない限り、ノートや評価者の得点を不正に吊り上げることが難しくなる。
ロバストな固有値問題の手法的強化:
計算上、外れ値的評価者や評価が存在する場合も頑健性が求められる。
ロバストPCAやHodge分解による異常値検知、Mエスティメーターによるロバスト回帰などの手法を組み合わせ、分解前に異常な評価パターンを検出し除去・減衰させる。
これにより、意図的な評価操作(少数の評価者が大量のスパム的評価を行う、特定クラスタが虚偽評価を集中発射するなど)を前処理段階で軽減可能。
評価方法:
シミュレーション:
人工的なクラスタ分布(例:左・中・右)を持つ評価者集合を用い、様々な「操作シナリオ」(特定クラスタが特定ノートをブーストする、逆に誤情報ノートを押し下げる等)を試す。ブリッジングスコアを用いた重み付けモデルがどの程度結果(ノート・評価者のランキング)を安定化できるか比較する。
実データ検証:
Birdwatchや類似のコミュニティ評価プラットフォームでの実データを用い、従来手法(単純多数決、有用率のみ)と比較して、
多様な視点が反映されたノートが上位に来るか、
既存の専門家評価との整合性は増すか、
時系列で見た際、スパム的評価キャンペーンによるランキング変動が減少するか
を評価する。
まとめ:
本提案では、まず評価者・ノートを多次元空間またはクラスタリングで分布させることで多様性を可視化し、次にブリッジングスコアを計算してそのスコアで評価行列を重み付けする。その後、ロバストな固有ベクトル計算を用いて全体の「価値」や「信用度」を求める仕組みを整えることで、単一クラスタによる評価操作を困難にし、多面的で公平な評価指標を得るモデルを提案した。
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研究としてのバリューの出し方がいくつも考えられる案だね。二つのモデルを組み合わせたモデルを提案するのもまあ一つの方向である。一方で日本の地方自治体が自分達でCommunity Notesに相当するものを運用可能にする社会実装先行型の進め方もありだと思う。 o1 Pro.icon
以下は、「二つのモデルを統合した理論・技術モデルの提案」から一歩踏み出し、「社会実装」を重視した研究の方向性をより具体的に提示するアイデアである。
社会実装を優先する研究方向案:地方自治体によるCommunity Notes運用モデル
狙い・背景
Birdwatch的な仕組み(Community Notes)を地方自治体が独自に活用し、地域特有の情報問題(ローカルな政治情報、生活インフラ情報、防災・防犯情報、コミュニティニュースなど)に対して住民参加型のファクトチェックや注釈付与、エビデンス提示を行う仕組みを構築する。
PICSY的な価値伝播・貢献評価は、初期段階では必ずしも必要ないかもしれない。まずはBirdwatchに近い形でローカル版Community Notesを実装し、徐々にPICSYのエッセンス(参加度合いや有用情報提供度に応じた地域内通貨やポイントシステム)を導入していくフェーズ的アプローチが考えられる。
PICSY的な価値伝播・貢献評価は、初期段階では必ずしも必要ない やっぱそうなっちゃうよな〜〜nishio.icon
導入ステップ
(a) ローカル版Community Notesの試験導入:
地方自治体が主催する地域ポータルサイトや観光案内所、地方議会報告ページ、コミュニティFMなどの媒体と連携し、住民が特定のローカル情報(自治体の公式発表、議会議事録要約、地域イベント告知、市民提案公募情報など)に対して付随情報や注釈を付けられる仕組みを整える。
例:自治体がSNSアカウントで情報発信を行い、住民はBirdwatchのような仕組みでその情報に注釈を付す。
注釈が自治体公式サイト・アプリ上で表示され、閲覧者は多方面の視点(NPO団体、市民グループ、有志専門家など)からの情報補完を得られる。
(b) 評価・信用モデルの簡易実装:
住民が投稿した注釈に対して「有用」「非有用」といった評価を住民同士で行い、それをもとに一定の目安を自治体が参照。初期段階では単純多数決やBirdwatch的なブリッジングスコア軽微版など、理解しやすい指標を導入し、自治体職員や第三者有識者が一定のチェックを行う。
(c) PICSY的要素の段階的統合:
システムが安定稼働し、一定の信用が醸成された後、参加者が良質な注釈や評価で貢献した場合にポイント(地域通貨的な役割)を付与する実験を開始する。地域商店街や公共施設でこのポイントを使用可能にしたり、自治体が発行する一部優待サービス(図書館サービス拡充やイベント割引券)と交換できるといった仕組みで、情報貢献行為が地域コミュニティ内で「社会的価値=貢献度」を持つような経済圏を醸成する。
ここまで達成できるとすごく面白いnishio.icon
バリュー(研究的価値)
社会実装先行型アプローチとしての価値:
単なる理論的モデル提案ではなく、実地の自治体でパイロットプロジェクトを行うことで、制度設計上の課題(法的問題、自治体職員の負担、住民エンゲージメント確保手法)や、ユーザーエクスペリエンス、モチベーションへの影響など、学術的知見と実務的知見を同時に収集できる。
ローカルコミュニティでの検証がもたらす新規知見:
大規模SNS(Twitter)やグローバルな文脈では見えにくい、地域特性(対面関係や慣習、地域コミュニティの政治文化)による情報信頼形成プロセスを捉えることができる。これにより、評価操作への耐性や多様性確保などの問題が、地域コミュニティという特定条件下でどのように変化するかを分析できる。
フェーズ的実装での理論実証サイクル:
初期はBirdwatch的仕組みで注釈・評価を行い、参加実績や信頼度評価の基盤を築いた後、段階的にPICSY的な価値フロー要素(貢献度に応じたポイント発行)を導入。導入前後での参加者行動の変化、情報の質向上や多様な意見の増加、操作困難性などを計量的に評価できる。
想定プロセス
パイロット自治体を複数選び、Birdwatch類似のプラットフォームをローカルSNS・自治体HPに接続。
一定期間後、ノート評価傾向や操作リスクを分析し、漸進的にブリッジングスコアや簡易版PICSY評価を導入。
政策決定(例:住民参加型予算運用案等)にこの仕組みから得られた合意形成情報を参考にする。
最終的には、ローカル経済圏へのポイント還元で持続可能な市民参加型情報エコシステムを目指す。
まとめ
これにより、技術的モデルを組み合わせるアプローチに加え、社会実装を優先する形で、地方自治体が運用可能なCommunity Notes的仕組みを開発・評価する方向性が示せる。最終的には、実地で得られたデータから理論モデルを改良し、また理論モデルで提示された操作耐性メカニズムや多視点ブリッジング手法を現場実装へフィードバックする、学際的な研究開発サイクルを期待できる。
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感想nishio.icon
雑に論文を2つ投げつけて、1時間もかからずにこういう議論になるのは速いな〜という気持ち
D1の学生に指導教官が参考資料を示して「来週までに読んできて」ってやるノリ
それと比べてイテレーションが1〜2桁高速に回転する
学生にこれを1時間でやれというとパワハラで訴えられるかもしれない
研究を実際に遂行するなら、泥臭い作業がたくさん待っている AIが研究プランを決めて人間が下請けで泥臭い作業をして研究した場合、既存の基準で博士号を与えていいのかどうか議論を呼びそう 博士には指導教官の指揮命令で動くのではなく自発的に研究テーマを設定して研究する能力が求められる的なニュアンス しかしAIは指揮命令しているわけではなく、「AIと相談して私が決めました」との境界は不明瞭
現実的にAIの使用を禁止できるはずもなく、使うかどうかでアウトプットにはっきり差が出るようになると使わざるを得ない状態に追い込まれるだろうなぁ