JOINでの賛成反対2カラム表示
o1 Pro.icon以下は、2024年7月23日のミートアップでAudrey Tang氏が実際に話した内容(英語)を、日本語に大意でまとめたものです。join.gov.twでの「支持/反対」両コラム並列表示の仕組みに具体的に言及しています(不要な部分は省略・平易化していますが、発言内容はなるべく忠実に訳しています)。
Audrey Tang(大意・日本語)
台湾でも10年前は政府への信頼が9%ととても低く、何を言ってもみんな自動的に不信感を抱いていました。そこで2014年から2018年の間に参加インフラ(vTaiwanやjoin.gov.twなど)へ投資したところ、人々はただ文句を言うのではなく、より良いやり方を示す場所をつくりはじめました。
たとえば、台湾の請願プラットフォームjoin.gov.tw。オンラインで5000人の署名が集まると、大臣が検討・回答し、場合によっては直接会いに行きます。ここではアイスランド(Better Reykjavik)のデザインを参考にしていて、「賛成の主張」と「反対の主張」をそれぞれ別のコラムに分けて並べるんです。 実際、「台湾のタイムゾーンを日本(GMT+9)に合わせるべきか」という請願があり、「GMT+9にすべき」側に8000人、「現行通りGMT+8のまま」にすべき側に8000人が署名していました。全部で1万6000人が「こうしろ!」と声を上げると、普通はノイズが多いのですが、私たちは両コラムを並べて、そこに投稿された意見へ「賛成」「反対」を投票するだけにしたんです。
重要なのは、「コメント返信で相手を攻撃する」機能がないこと。もし他人の賛成意見が気に入らなければ、それに直接ケンカを売るのではなく、自分のコラム(反対側コラム)に“もっと良い主張”を投稿し、それが支持されれば上に上がるという仕組みです。結果として、どっちが勝った負けたではなく、「賛成コラムの上位意見」「反対コラムの上位意見」を見比べるだけで、何が争点か・双方が本当は何を狙っているかが一目でわかります。
そのあと両派の代表を同じ部屋に呼んで話を聞いてみたら、「タイムゾーンを変えたい派」の動機は「台湾をもっとユニークにしたい」だけで、「お金がかかる」というのが大きな反対理由だったんですね。そこで、同じ予算を使うなら「海外に台湾の魅力をPRする」案のほうがコスパいいんじゃないか、タピオカティーの発信を強化したり、国際イベントを招致したりするほうが良い、という結論に落ち着きました。
結局、両派の「本当の目的」は同じだったんです。時間をGMT+9にするより、もっと安くかつ効果的に台湾をユニークにできると判明して、そこでみんな納得しました。つまり最初の対立があったからこそ、新しい方法を見つけ出せたんです。これが参加型インフラの例です。
ポイント
「賛成コラム」「反対コラム」に分けて並列表示し、直接のレスバトルはできない(自分の陣営のコラムに「より良い主張」を投稿して支持を得る)。
最終的には「それぞれの上位にある主張」を見比べれば、双方が何を求めているかが可視化される。
大きな対立に見えても、「本当は同じゴール(台湾を魅力的にしたい)がある」と気づきやすくなる。
上記が、実際にAudrey氏がミートアップ中に紹介した台湾版請願サイトでの「支持/反対」並列表示に関する発言です。
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o1 Pro.icon台湾の請願サイト(join.gov.tw)では、あるテーマに対して「賛成」「反対」両方の立場から意見を出し合うとき、それぞれが一列ずつ並んで表示されるのが特徴です。日本のSNSや掲示板でありがちな「レスバトル(意見に対する直接の反論を重ねる)」形式ではなく、両陣営それぞれの良質な主張や根拠だけが票を集めて上に上がってくる仕組みになっています。
どういう仕組みか?
意見は「賛成」「反対」それぞれの列に分かれる
たとえば「台湾のタイムゾーンを日本と同じGMT+9に変更すべきか?」というテーマがあった場合、
「賛成意見」コラム
「反対意見」コラム
に意見を投稿する。
お互いのコラムへ直接レス(返信)する機能は無い
Aさんの「賛成意見」に反論したい場合でも、「賛成コラム」への返信はできず、「反対コラム」で「より説得力のある主張」をあらためて書き、支持を得るしかない。
これにより、“どちらかの意見を潰すこと”ではなく、“自分の側の主張を改善する”方向に議論が進む。
ユーザーは「良い意見」を上に上げる(投票する)
両コラムの個々の主張は、一定の投票システム(「いいね」「賛成」のようなもの)によって評価される。
多くの支持を集めた主張は自然に上位へ表示され、そうでないものは下に沈んでいく。
最終的に「賛成コラム」の上位意見と「反対コラム」の上位意見を見れば、両者それぞれの核心がひと目で分かる
政府・行政サイドは「どちらの立場にもそれなりの理由がある」という事実がすぐ把握できる。
さらに、大きく分かれる論点や両者共通の目標(たとえば「台湾をユニークにしたい」「社会を良くしたい」など)が見えやすくなる。
なぜ有効なのか?
互いを罵り合う“対立”に陥りにくい
「相手の意見に直接コメント・反論する」構造がないので、相手を言い負かすより「自分の主張を建設的に高める」方向に動きやすくなる。
論点の共通部分を探しやすい
双方のコラムで上位に上がっている意見(“良い意見”)に着目すると、対立の根底にある共通目標や価値観が浮かびやすい。
合意形成に向けた「次の場づくり」がスムーズ
政府側は上がってきた要点を整理し、両陣営の代表者を呼んでブレスト(少人数対話)を行い、どうすれば両方の価値観を尊重した形で政策化できるかを探りやすい。
日本版JOINで応用するには?
SNS的な“スレッド型”ではなく、あえて「立場別の2列(あるいは複数列)」を用意する設計がポイント。
賛否いずれかの意見投稿フォームを分け、「相手を批判する」のではなく「自分たちの意見を充実させる」インターフェイスにする。
意見を評価する仕組み(投票/いいね/賛成)を設け、上位に来た意見が簡単に分かるようにする。
オフラインでの対話(ワークショップやブレスト)と連動させ、最終的に合意形成を図る仕組み(意見をまとめる場、担当省庁の責任者との面会など)を整備する。
実際に起こりうるメリット
提案・反対いずれも深まる
対立している両陣営が、「他方を批判する」代わりに「自分たちの主張をより説得力あるものに磨き上げる」競争になる。
潜在的に同じゴールを持っていることに気づく
台湾の例では、「タイムゾーンを変えたい vs. 変えたくない」対立の根底に「台湾をよりユニークに、魅力的にしたい」という共通目標が見つかり、ゾーン変更以外の解決策(たとえば文化的アピール)に合意した。
政策側(政府・自治体)も対応しやすい
賛成コラムと反対コラムの“良質な主張”を拾い上げるだけで争点の整理が素早くでき、手間のかかる「炎上鎮火作業」や「論点整理の下作業」を大幅に減らせる。
このように「支持/反対」を並列に分けて互いにレスバトルをさせない仕組みは、合意形成をスムーズに進めるうえで非常に有効だとされています。日本で同種のオンライン請願・参加プラットフォームを運営するなら、こうした設計を取り入れてみる価値は高いでしょう。
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