DXレポート
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、「2025年の崖」と称した課題が注目を集めたが、そこには誤った解釈が多くされてしまったと「DXレポート2」では語られている。「DXレポート」発表から約3年がたった今、企業が考えるべきDXとは何か。中小企業にとってのDXの重要性とは。経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長の渡辺 琢也氏に話を聞いた。 2025年を一つのターゲットイヤーにして、直ちに情報システムの刷新に取りかからなければ大きな経済的損失を招くことになると警鐘を鳴らしたのです。しかし、レガシーシステムに起因する課題をあまりにも強調しすぎたがゆえに、「DXは情報システムの刷新である」と捉えてしまった方が多くいらっしゃったのは確かです。
情報システムの刷新はあくまで手段の一つなので、そこだけに課題意識を持つのは間違いです。DXとは、そもそもは経営そのものが変わっていかなければならない。つまり、デジタル技術がある前提で企業としての経営ビジョンや事業戦略がなければいけません。それゆえの結果としては情報システムの刷新ですが、そこから考えてしまうのは順番が違います。
そこで「DXレポート2」では、例えば今回のコロナ禍のような大きな社会的変革が起こったときに、迅速に企業のあり方を変えることができ、価値の高い製品やサービスをお客様に素早く提供できる企業文化にするところから始める必要があると示しました。
経済産業省がここまで踏み込んでDXを推進する背景は何でしょうか。
国際機関が発表する各国のデジタル化の進展度合いの指標を見ると、日本は各国に比べて極めて立ち遅れています。日本の良さは現場が強いことだと思いますが、「デジタル」という新しいフェーズになると、それが逆に足かせになっています。日本企業は、担当を割り当てられた業務をこなすという意味においては、おそらく誰よりも優れたアウトプットが出せると思いますが、DXは、その枠組みであるビジネスカテゴリーを壊すことにもなります。DXは異分野との融合であり新しい発想なので、人材が流動化しているほど優位になりますが、日本はどうしても組織を大事にする企業文化が根強く、圧倒的に人材の流動化が進んでいません。一方でそれが日本の働きやすさでもありますが、デジタル技術はそれらすべてをたたき壊す破壊力を持っています。