AIコストの両サイドのリスク
nishio AIのコストがとても下がって、自分の知的生産の市場価値が失われる未来のリスクと、AIのコストがとても上がって、自分が格差断絶の「AIが使えない側」に落ちる未来のリスクの両サイドのリスクがある、と最近思ってるって話をした nishio で、しばらく経って「エンジニアはこの数年で稼いでFIREすべき」論についてぼんやりと違う気がしてたのが、もう少しはっきりとした形になった。 短期的に金を稼いでそのお金で余生を生きるプランは金の価値に一点賭けしてる。前者のリスクでは、自分の生産力が減るので相対的に金の価値が高まる。
nishio しかし逆サイドのリスクの世界では金の価値が減っていき、相対的に「その世界でもまだ価値があると思われているものの生産力」の価値が高まっていく、それを作ってAI利用クレジットに変えることができるかが豊かさの主要因になる、金の価値がなくなり始めると金の「金を産む」という価値もなくなる nishio ここまで書いてから関連するツイートを最近見たのを思い出した、友人が「資本主義が終わるリスク」に備えてる、という話だった。 この概念を使うと話がもっとシンプルになる。要するに金融資産を溜め込んでその運用で生きていこうという発想は今の資本主義が安定継続することを仮定してるということ
o1 Pro.icon上記のツイートでは「AIのコストが極端に下がる」「AIのコストが極端に上がる」という二つの未来が描かれており、それに伴う“貨幣価値の変動”や“労働・生産力の変化”が大きなテーマになっています。歴史を振り返ると、似たような「テクノロジーの急激な進歩」や「貨幣・経済体制の崩壊」などにより、人々の生活や資産価値、労働の意味が激変した事例があります。以下にいくつかの具体例を紹介します。 関連キーワード: 「知的生産コストの急激な低下」「旧来の仕事の価値下落」
15世紀半ばのヨハネス・グーテンベルクによる活版印刷術の改良は、書物の大量生産を可能にし、知識や情報を扱うコストを劇的に下げました。
背景: それまでは修道士や専門の書写人が手作業で写本をつくっており、書籍は非常に高価でした。
インパクト: 大量生産によって本が安く手に入るようになると、手書きの写本を生業とする人々の仕事は激減し、それまで「知識の集積」としての価値を独占していた修道院や教会の権威にも変化が生まれました。 教訓: 「知識の複製コスト」が急落すると、個人のスキル(写字など)の希少価値が急激に下がり、新たなビジネスモデル(出版業など)が台頭する構図は、AIがもたらす価値変動とも重なる点があります。
関連キーワード: 「テクノロジーによる生産性向上」「従来の職能の価値喪失」
18世紀後半から19世紀にかけての産業革命では、紡績機や織機、蒸気機関などの発明により生産コストが劇的に下がりました。その一方で、手工業者が長年培ってきた技能の価値が急激に落ち、仕事を奪われる問題が発生しました。
ラッダイト運動: 機械が職を奪うと考えたイギリスの織物工たちが、1810年代に機械打ちこわし運動(ラッダイト運動)を起こしたのが象徴的な例です。
教訓: 新技術によって生産コストが下がると、短期的には「技術に取り残された側」の雇用や収入が激減する一方、新たな産業が興隆し、長期的には経済全体が拡大することもある――という構図が見られます。AIの世界でも似たリスクと機会が表裏一体です。
関連キーワード: 「貨幣の価値喪失」「資本主義的な財産の目減り」
第一次世界大戦後のドイツでは、賠償金や経済不安などが原因で通貨発行量が急増し、1923年前後にかけて猛烈なインフレーション(ハイパーインフレーション)が起こりました。
背景: 紙幣は刷れば刷るほど需要を満たすかに見えたものの、結果的に通貨は暴落し、人々の貯蓄や給料は実質価値がほぼゼロに。
教訓: 「お金を持っていても意味がなくなる」という未来を実際に体験した人々が存在するわけです。ツイートで語られている「資本主義の終わりのリスク」「金の価値の下落」に対して、ハイパーインフレーションは極端な実例といえます。
関連キーワード: 「資本主義の崩壊感」「富の集中と大規模失業」
1929年のウォール街の株価大暴落をきっかけとする世界大恐慌では、銀行の取り付け騒ぎや企業の倒産、失業率の急上昇により、多くの人々が資産・職を失いました。
背景: 株式投資で豊かになろうという「投機熱」が高まった結果、泡のように膨れ上がった資産価値が一気に崩壊し、資本主義そのものの存続が危ぶまれるほどの混乱となりました。
教訓: 「資本主義が終わるかもしれない」という不安は、必ずしも空想ではなく、歴史的にも何度か現実的な危機として意識されてきたという点が、ツイートの「資本主義が終わるリスクを考える」という内容と重なります。
5. ソビエト連邦の崩壊(1991年)
関連キーワード: 「社会体制の変化」「経済モデルの激変」
ソ連崩壊(1991年)に伴い、それまで国民が慣れ親しんでいた社会主義の分配システムが急速に瓦解。急激に導入された市場経済への移行で、旧ソ連地域の通貨価値は不安定化し、多くの国民が積み立てていた貯蓄や年金は実質的に目減りしました。 教訓: 大きな体制変化によって、それまで有効だった財産の形式が一夜にして価値を失う事態は起こりうる、という実例です。ツイートでいえば「金の価値がなくなる」「別の権利やクレジットのほうが重要になる」可能性は、歴史的にも珍しくないといえます。
6. 明治維新(19世紀日本)
関連キーワード: 「武士の特権廃止」「新しい時代の能力評価」
1868年の明治維新により日本の封建体制が崩壊し、武士階級は秩禄(家禄)と呼ばれる俸禄や特権を失いました。
背景: 廃刀令や秩禄処分により、武士はそれまで専業としてきた武芸や身分的特権に依存していた生活基盤を失い、新しい時代で自活する手段(資本主義的な商売や技術学習など)を習得せざるを得なくなりました。
教訓: 「自分が築いてきたスキルや身分が、社会制度の変化により一気に陳腐化する」という事態は、ツイートのAI文脈において“使える人・使えない人の格差が拡大する”というリスクと重なります。
まとめ
歴史を紐解くと、急激なテクノロジーの進歩や経済・社会体制の変化によって、「これまでの価値が突然目減りする」例や、「従来は大変だったコストが一気に下がって生産性が爆上がりする」例が数多く見られます。ツイートにあるような「AIコストの両サイドのリスク」は、まさに歴史が繰り返してきた「大転換」に近いものといえそうです。現代ではAIの急進展がカギになりますが、その構造は過去の社会変動からも多くを学べるでしょう。