AIが進歩すると給料が下がるのか?
src
AIが進歩すると給料が下がるのか?という問いに対してカジュアルに一つの経路だけの話をしたけど、これは詳細に考える価値のあることだと思う。人々が1の労力で1の成果を出して1の収入を得ているとする。そのうちの一部の人が1の労力3の成果を出すようになったら何が起こるか。
まず労力(や会社にいる時間)によって仕事量が測られてる人は給与が上がらない。生み出す価値によって仕事量が測られている人は基本的には収入が3倍になるが、重要な係数として「会社のリソースに対する依存度」が掛かる。どういうことかというと、
会社のリソースに100%依存しててそれなしで価値を生み出せない人は給料がほとんど上がらない。その扱いでも転職される恐れがないから。
会社のリソースに全く依存していない人は3倍になる。ただし買い手が十分にいることが前提。そうでないなら過剰生産によって価格が下がる。
ここで面白いのは、3倍になるタイプの人がしばしば「3倍の金銭を得るより金銭以外のものが欲しい」と言い出すことだ。
2/3の時間で2の価値を生んで1.8の収入を得て、1/3の余暇時間をたとえば家族と過ごすとか、趣味に使うとかし始める。
この時、自分の都合を押し通すことのバーターとして、少しダンピングが行われている。やってる本人は収入が十分増えてるので気にならない。
趣味が価値創造であるタイプの人はもっとヤバくて、余暇時間で1の価値を生んで、それを無償で配ったりする。
こうして生産性が高い人がよりよく生きるために価格が崩れて、生産性の変わらない人の収入が下がる。
---
kuro_shirty これの前半は賛成だけど後半は異論あるかな
出力3倍世界で、同一給与で1/3にダンピングされているサラリーマン労働力が存在するのに、生産性の分インカムが3倍増える(=全くダンピングされない)商売が同時に存在できるとは思えない。
kuro_shirty 出力が3倍ではなく人件費が1/3になる世界を想像すればわかるが、
中国で服が安く生産できる、ったら人件費の高い国内生産は減るわけで。
出力3倍だから同じ給料でノルマ3倍な!で働く会社がある限り、他のフリーランスやらが同じ生産単価でいられるわけないのでは、と思う
---
o1 Pro.icon前半の人(「生産性が3倍に上がった人は収入が3倍になるが、一部ではダンピングも起こり得る」という主張)の議論が言葉足らずなのは、「同じ市場の中で、なぜ“3倍の成果を出して3倍のインカムを得られる人”と“3倍の成果を出しても同じ給料のままの人”が同時に成立するのか」という説明が薄い点です。
具体的には以下があいまいになっています。
1. 市場全体の需給バランス
高生産性(3倍出力)の人がたとえ自由に値段をつけられるとしても、他に“3倍出力を同じ給料で引き受ける”労働力が十分存在すれば、市場価格が下がりやすくなる。
一部だけ高賃金を維持するには、「他の多くのプレイヤーが同じレベルの生産性を得られない理由」や「差別化された価値」が必要だが、その説明が不十分。
「需要が満たされて初めて、雇用は減少し始めます。」だよnishio.icon
2. 技術・リソースの広まり方
「会社リソースに依存しない人が3倍のインカムを得る」ためには、高度なAIやスキルが限られた人だけのものであるか、あるいは特殊な顧客ニーズを独占できるなどの条件がいる。
しかし多くの場合、技術進歩(AI)そのものが広がれば、同じことが誰にでも可能になりやすく、それが賃金全体を押し下げる。
特殊な顧客ニーズを独占できるこれは確かにそう。「社会資本が王である世界」だね。nishio.icon
3. ダンピング(余暇での無料配布)と高賃金の両立
「余暇で作った成果を無償配布して市場価格を下げる」一方で「自分だけは3倍の賃金をもらう」構造が、同じ市場に同時に存在し得るのかが不明瞭。
なるほど、これ「単一の市場」や「均衡」を前提にしているわけだなnishio.icon
要するに、前半の人の議論では「AIなどで生産性が極端に上がった場合に、“高い成果報酬を得る人”と“従来どおりの報酬しか得られない人”が並存している状況」が描かれていますが、その両者が同じ市場で競合したときに均衡がどう変動するかの説明が不足しているのが、後半の異論者が指摘している根本的な問題です。
---
なるほど、これ「単一の市場」や「均衡」を前提にしているわけだなnishio.icon
これについての解説
from The End of Programming as We Know It
nishio 2022年の人類が「プログラミング」と読んでいたものがA, B, Cの三つのセグメントに分解されて、AはAIで需要が満たされ、Bは効率化されつつあるけどまだまだ供給が足りておらず、Cは需要が増加しつつある。全体としては「まだまだ雇用が減少する段階ではない」が、Aに固執する人にとっては減少
https://gyazo.com/eae54aa3115ea9a0fc6c22eb94b9da57
単一の市場や均衡を前提にして考えている人は「プログラミング」という仕事の市場を(1)のようなイメージで捉えている
しかし実際には(2)のように「プログラミング」という一つの言葉で指していたものがA, B, Cの三つに分かれている
時間経過でAの需要はほとんどなくなり、Bも効率化によって減少し、Cが大きく増加する
「余暇で作った成果を無償配布して市場価格を下げる」一方で「自分だけは3倍の賃金をもらう」構造が、同じ市場に同時に存在し得るのかが不明瞭。
ここの食い違いが(1)(2)の食い違いから発生していて、Cから収益を得ている人が余暇で作った成果の無償配布ってCの需要を食うとは限らず、むしろやりやすさ的な意味ではAやBの需要を食うんだよね
逆の視点から見ると、やりにくいからこそCは膨れ上がってしまうわけだ