2050年の世界 見えない未来の考え方
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kensuu ここ数年で読んだ「未来予測系」の本で一番おもしろく、納得度が高かったです。この作者の「2020年を予測した本」も念のため買ってチラチラみたんですが、かなり精度が高かったので、信頼感が高い。
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kensuu 本の各国の現状分析のメモ
【アメリカ】
アメリカは別格。EUなどと比べても高いペースで成長しており、存在感は高まっている。人間の資源がすごい。出生率は日本やヨーロッパより高く、野心を持った若者が移民してくるのが強い。エネルギー生産国としても世界最大の原油生産国。安価なガスもある。高等教育も世界トップ20大学の半数を占めている。カナダも事実上のアメリカ経済の拡張区。
【ラテンアメリカ】
このさきも失望を呼ぶ状況が続きそう。南アメリカの殺人率は高い。世界からみた人口では8%しかいないのに、殺人件数では世界全体の38%を占めている。1世紀前には経済はよかったのに、、
【ヨーロッパ】
EUの拡大は成功だがユーロは失敗。
【イギリスとアイルランド】
英語圏の国はこれからも繁栄が続きそう。英語が広く話されている国の競争優位は高い。コモンロー(英米法)なのもプラス。起業家文化も高等教育でも明らかに優位。アメリカに対抗できるのはイギリスだけ。格差はものすごくある。経済格差も健康格差も大きいし、教育も偏っている。企業業績も格差がある。
英語話者国の競争優位
【ドイツ】
自動車や医薬品、その他セクターでも世界トップかそれに近い水準で称賛と羨望を集めている。最先端の製造業で世界をリード。貿易黒字が世界最大。一方、輸出は強いが、国内サービス業の質が見劣りする。金融、高等教育も弱い。
【フランス】
高級品産業が強い。高級ブランドはやばい。世界の高級ブランド10位のうち6ブランドがフランス。観光客も多いし、世界3位の武器輸出国。失業率が9%と高く、幸福度はドイツやイギリスよりも低い。雇用管理が厳しく、すでに雇用されている人は守られるが、仕事を探している人は犠牲になる。
【イタリア】
イタリアは平均寿命は高いが出生率は低く若者が大量に流出している。ハイエンドの手工芸産業があり、高級品産業はフランスに次ぐ世界2位。観光産業が強く、ワイン生産国でもある。21世紀に入ってからはイタリア経済はほとんど成長しなかった。ユーロ導入のせい。
【北欧諸国】
豊かであり、裕福。社会の結束が強く、相対的に平等、生活水準が高く、医療と福祉が手厚い。世界のモデル社会。国への信頼が高い。ノルウェーは北欧最大の産油国、スウェーデンは技術力が高くエンジニアリング企業やサービス輸出が増えている。カナダと並ぶ世界最大の音楽輸出国。デンマークは石油、ガス、食品生産からの収入が多く、世界で一番幸せな国。先行きは明るい。
【ロシア】
世界一大きく、石油、ガス、鉱物、レアアースなど膨大な天然資源があり、これらの需要は低くはならなそう。優れた人的資本があり、教育水準が高く、起業家精神に富んでいる。EUと中国の陸上国境がある。一方、人口動態は問題を抱えている。2050年には1億4300万人から1億1600万人に減ると予測される。法律と規制が安定していないので、外国資本が投資されづらい。エネルギーや原材料輸出の依存度が高いので、それ以外に富を生み出す方法がない。地位はどんどんと沈んでいっている。
【中国】
言うまでもないけど、経済成長やばかった。中国は本書でもたくさん取り上げられているので、逆にここに書ききれないので余裕があったらメモする。
【日本】
最大の課題は老いに対処すること。世界のどの国も経験していない領域に入っており、ある意味ではフロンティア。過去半世紀でジェットコースターのような急激な変化を経験している。世界でもっとも急速な経済成長をして、世界2位の経済国になったが、2018年にはアメリカ市民よりもずっと貧しくなった。内向きになり、国民の生活を最優先に考えるようになった。ソニーや東芝、パナソニックなどは20年前の優位を失っている。
世界には日本から学ぶところは多い。犯罪率が世界で一番低く、世界一の長寿国。支え合い、助け合って、課題を効率的に解決する関係があり、サービスの質が高く、都市が清潔で、世界に類を見ない社会を築いている。
日本は世界で最も高齢化が進んでいるが、人口動態の変化に実にうまく対処している。社会の結束が強く、協調性が高い、家族も大事にする。
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2045年には日本の労働力の1/4が75歳を超える。この場合、日本の生活水準はどうなるのか?生産性は明らかに下がっており、G7諸国で労働者1人あたりの生産量がもっとも低い。時代遅れのビジネス慣習も大きな原因だが、生産性をあげるのはかなり難しいだろう。
今、穏やかで秩序が保たれ、清潔で、犯罪が少なく、市民は快適な生活を送っているが、1980年代のようなイノベーションを生み出す社会ではなくなっており、ダイナミズムを取り戻すことはまずない。経済は90年代からほとんど成長していないが、これからも長く続くだろう。
外国からの流入が大規模にあれば変わるだろうが、日本人はそれを拒否しているようだ。
少子高齢化が進んで生活水準が下がることを、若い人が受け入れる覚悟があれば、高齢化社会は円滑に機能できるのでは。
今後、移民によって他の国が混乱をすればするほど「国境を閉じて、外国人労働者をあまり入れないのは良かったよね!」という確信が強まりそう。困ったときに助け合う精神などが日本社会をまとめる接着剤になってきたし、こういした社会契約は残る。
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要するに・・・。日本は日本であり続ける。日本はより日本的になり、世界から見ると異質になっていき、世界の考え方からさらに切り離されていき、「今の社会は日本人にとって正しいよね!」という思いを深めそう。
外の世界に目を向けず、内向きになる。
経済規模は相対的に小さくなっているが、2050年にも、世界4位の経済大国であり続ける。アメリカとの同盟関係は揺るがない。高い能力を持つ製造大国であり続ける。日本の文化は他の国に強い影響を与え得続ける。高齢者社会の社会の手本であり続ける。
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直視しないといけない現実がある。
1つは経済の構造。テクノロジーリーダーの座を維持できるのか?一世代前に培われたスキルの上に今の高い技術は成り立っている。2050年も世界の大国であり続けるが、経済のほとんどの分野で世界の最先端から遠ざかるようになりそう。
もう1つは、財政状況。公的債務の対GDP比が世界の主要国の中でもっとも高く、上昇し続ける。この状況は持続不可能。次の30年のどこかで、債務の再構築する必要がある。どのような形態のデフォルトになるかはわからないが、国外の動き、たとえば世界的な金利の上昇が引き金になるかも。労働力が急速に縮小しているし、この公的債務残高は維持できないんじゃね?
地政学も懸念。中国に対抗する勢力にはなれない。自国に領土は防衛するが、中国の領土拡大の盾には加わらない。
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日本は2050年も結束力のある、安定した社会であり続けるが、世界に関心をもたなくなる。国民を支えることが日本の優先課題になる。犯罪が少ない、清潔、秩序を大事にする。
kensuu 本書の1%にも満たないメモですが、気になる点をまとめいました。 個人的に、日本の行く末とかは非常にリアリティがあり、「そうだよな!」と思いました。
グローバル志向が強い人ほど、アメリカかイギリスにいく、という選択肢をすることになりそう。… さらに表示
kensuu ちなみに、日本は「大国の中でもっとも平均年齢が低かった国」だったんですが、二世代で「もっとも高齢化が進んだ国」になったの、結構おもしろいなーと思っています。変化が派手すぎる。