2024年のPlagmatism
nishio.icon2024年版の原稿を書いて
プラグマティズムという言葉は今でも哲学の分野でよく使われていますが、その起源は20世紀初頭にさかのぼります。1907年、ウィリアム・ジェームズ氏は「プラグマティズム」と題した講演シリーズでこの概念を広く世に知らしめました。 ジェームズ氏によると、プラグマティズムの核心は「真理」の捉え方にあります。真理とは静的で不変なものではなく、私たちの経験に基づいて絶えず更新されていくものだと考えます。ある考えが「真実」であるかどうかは、それが実生活にどのような影響をもたらすかによって決まるのです。 こうした真理観は、従来の合理主義的な哲学とは一線を画すものでした。合理主義では、この世界には人間の認識とは独立した絶対的な真理が存在すると考えます。一方、プラグマティズムは多元論的であり、真理を相対的に捉えます。 ジェームズ氏は「現金価値(cash value)」という独特の表現を用いて、真理の実践的な意義を強調しました。私たちが何かを「真実」だと信じるとき、それは具体的にどのような利益をもたらすのか。それが問われなければならないというわけです。 プラグマティズムはその後、ジョン・デューイやF.C.S.シラーらによってさらに洗練されていきました。彼らは「真理」だけでなく、倫理や価値の問題にもプラグマティックなアプローチを適用したのです。 以上のように、ジェームズ氏の思想は20世紀以降の哲学に多大な影響を与えました。100年以上を経た今日でも、私たちはプラグマティズムから学ぶべきことが多いでしょう。迷えるこの時代だからこそ、「生きた思考」を取り戻すことが求められているのではないでしょうか。