通常実施権設定の裁定
特許法はアイデアを公開・シェアしつつ、公開・シェアした人に利益が与えられるようにするためのもの。
なので、特許を取って使わない、他人に使わせない、などの産業発達を妨げる行為には、対抗するための条項がある。
アイデアが公開・シェアされる世界が望ましいなら、特許制度をなくすのではなく裁定制度をもっと使いやすくすればよい。
(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)
第八十三条 特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。ただし、その特許発明に係る特許出願の日から四年を経過していないときは、この限りでない。
協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許庁長官の裁定を請求することができる。以下の条項でも同じ。
(自己の特許発明の実施をするための通常実施権の設定の裁定)
第九十二条 特許権者又は専用実施権者は、その特許発明が第七十二条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその特許発明の実施をするための通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
第九十三条 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
参考:特許法の目的
(目的)
第一条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
保護だけではなく「利用」も図る
発明を奨励したい
それによって産業の発達に寄与することが目的
特許法第 83 条第 1 項において「実施が適当にされていない」とは
需要に対し極めて小規模で名目的な実施に過ぎないと認められる場合
単に輸入をしているだけで国内では生産をしていない場合
等が原則としてこれに該当すると解される。
特許法第 85 条第 2 項において「特許発明の実施が適当にされていないことについて正当な理由があるとき」とは、諸般の事情を総合的に勘案して判断するものとするが、その主要な事例としては、次に掲げる場合等が考えられる。
○その特許発明の実施に必要な設備等が災害その他被請求人等の責に帰すことができない事情によって整備することができないためその特許発明の実施ができない場合。
○その特許発明の実施に必要な許認可手続が被請求人の責に帰すことができない事情によって遅延しているためその特許発明の実施ができない場合。
改善すべきなのはここだろう:
5.裁定の実績
これまで特許権、実用新案権及び意匠権を合わせ計 23 件(不実施 9 件、利用関係 14 件)の裁定請求が行われているが、いずれも裁定に至る前に取り下げられており、裁定により通常実施権が設定された事例はない。
個々の事例で何が起こったのか詳しく知りたいな