裏ハイデガーとしてのアーレント
裏ハイデガーとしてのアーレント
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情熱的な師弟愛(1924–28年)がアーレントの思考の“原体験”になった。
戦後も往復書簡を交わし続け、アーレントはハイデガーのナチ過去を一定程度「擁護」する立ち振る舞いを見せた。
2. ハイデガー哲学の核心
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概念 概要
Dasein(現存在) 「世界―内―存在」として投げ込まれた私たち自身。
被投性 生まれ落ちた状況を選べないという条件。
死への先駆 本来的自己を回復する“決断”の根拠を死に求める。
世界–内–存在の世人性 他者との関係はしばしば匿名的な「世人」に埋没する。
(出典:Stanford Encyclopedia of Philosophy の “Heidegger” 項目)
3. アーレントの転換:〈存在論〉を〈政治論〉へ
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ハイデガー → アーレント 置き換え/反転 代表作
被投性 → 誕生(Natality):始まりを生む能力 The Human Condition (1958)
死への先駆 → 行為への開始:未来を開く実践的自由 同上
世人に埋没 → 多元性(Plurality):他者との共生を肯定 同上
現存在の内的決断 → 公共空間での発言と行為 On Revolution (1963)
(出典:Stanford Encyclopedia of Philosophy の “Arendt” 項目)
ポイント
“世界‐内‐存在” の分析を 外へ 押し出し、「誰と世界を共有するか」を問いに据えた。
“Authenticity” を個の内面に閉じこめず、公的行為の可視性で測り直した。
4. 「裏ハイデガー」として読む意義
概念フレームの再利用
Sorge(気遣い)→ 責任ある行為として政治倫理へ。
批判的継承
ハイデガーが「死」で閉じた時間軸を、アーレントは「誕生」で開いた。
ナチズム体験の裂け目
師の政治的失策を見たアーレントは、「思考停止」がもたらす凡庸な悪を分析。
まとめ
「裏ハイデガー」としてアーレントを読むと、
存在論→政治論 の回路が見え、
内面の自己決断→公共の相互行為 への視点シフトが理解しやすくなり、
ハイデガー的深層を知ることで、アーレントの 多元的で創発的な政治観 がなぜ生まれたのかを立体的に把握できます。
この“裏側”を意識することで、アーレントのテキストは単なる政治哲学ではなく、実存哲学の地層上に築かれた**もう一つの“存在論”**として読めるようになるでしょう。