良い成果を出した未踏卒業生が気を付けるべきこと
2018-02-12 一般社団法人未踏 理事 西尾泰和
Mitou 2017 Demo Dayで夏野さんの良い言葉があった
「来るオジサン、来るオバサンを待つのではなく、自分に必要なものを自分たちで取りに行ってください。こちらから手を差し伸べるのは期間中で終わりです。」
これの前半が特に良い。成果を見てから近づいてくる人には警戒が必要だ。(2022年追記: 昨今では未踏ブランドの価値の上昇によって「未踏に採択された」というだけで利用価値が発生するようになった。なのでここで語られているような問題は「成果報告会の後」ではなく「採択期間中」にも警戒が必要となった。) 成果報告会を見て「ビジネス化しよう」と声を掛けてきた人に二つ返事でハイと言ってはいけない。それはなぜか?
そういう人Xは、例えば「私がお金を出してあげよう」と言う。Xが300万出して会社の株式を30%取る。あなたが権利を100%持っていたはずの知財が、会社に譲渡される。Xは週に2日働くことを約束していたが、実際には何もしない。あなたのビジネスを黒字化するにはあなた一人が頑張る必要がある。そしてあなたのビジネスが黒字化した際にはXは利益の30%を取っていく。あなたはXを追い出したいが、Xは自分を追い出すなら株式を買い取れという。事業に使ったのでお金は残っていない。こんなことが起こりうる。
Xは「これはビジネスの話だから他人に相談してはいけない」という呪いをあなたに掛ける。あなたがそれを真に受けると、あなたが相談できる相手がX以外にいなくなる。Xの行為が正しいかどうか迷いが生じてもどうしたらよいかわからない。Xはあなたよりも知識が多いことを使って、あなたが不利になるような契約を結び、あなたを搾取する。Xはあなたが知識を持つと困る。だからこのような呪いを掛ける。 Q: どうやったら悪い人を見分けられる?
Q: 誰に相談すべきか?
A: 一概には言えない。下記を参考に自分で考えよ
利害関係のない人の方が良い
1人の人より複数の人が良い
ブースト会議や中間合宿に呼ばれるOB/OGは、PMやIPAからの信頼によって選ばれ、みなさんのプロジェクトの手助けのために無償で休日を割いて活動するという利他的行為の実績があるので、ランダムな1人よりはマシ。しかし適切でない人を呼んでしまったこともあるので100%信用してはならない。
PMは、IPAから信頼されて選ばれ、自分の名前を露出して継続的に活動しているので、かなりマシ。ただしビジネスに詳しいとは限らない。
あなたが雇った弁護士。あなたをだますインセンティブがない。ただし、あなたのビジネスの成功に対してもあまりインセンティブがない。
お金持ち。あなたをだましてお金を得るインセンティブがない。ただし、真のお金持ちとお金持ちの振りをしている詐欺師の識別は難しい。
誰かから信頼されている人。ただし、信頼されていることは、彼/彼女が本当に信頼に値するということを意味しない。信頼している人の勘違いかも知れない。また彼/彼女の知識が100%正しいということを意味しない。善意で誤ったアドバイスをする人もいる。
一般社団法人未踏の窓口(head-office@mitou.org)に相談してもよい。送られたメールは竹内、荒川、西尾、川合、の4理事を含む事務局全員に転送される仕組みなので、秘密の相談事がある場合は直接書くのではなく相談したい旨を書くとよい。
立場の違う人を混ぜるとよい。
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