編集提案のリジェクトの実例
スペース不足による文章の追加のリバート提案をリジェクトして、周囲の文章を少しずつ削ってスペース捻出
この本を書いている2017年現在、Wikipediaの記事の質は日本語版と英語版で大きな差があります。もしこの影響で英語圏の著者が書く本の想定知識水準が上がると、日本人がその翻訳書を読んだ場合の理解にかかるコストが高くなってしまいます。日本人が英語のWikipediaで基礎的なことを学ぶ必要に迫られるのか、機械翻訳が差を埋めるのか、どちらになるかは私にはわかりません。
編集者コメント
池田:「日本人が英語のWikipediaで基礎的なことを学ぶ必要に迫られるのか、機械翻訳が差を埋めるのか、どちらになるかは私にはわかりません。」を追加いただきましたが、ページ数の都合上挿入が難しそうです。こちら入れない形でよいでしょうか
西尾の修正(手前の段落を併合して削る)
before
著者が想定している知識を読者が持っているかどうかも、本の読み方に大きな影響を与えます。
本書『エンジニアの知的生産術』では、いろいろな本や概念に言及していますが、その本を読まなくても理解できるようになるべく簡潔にその本の内容を解説する努力をしています。一方で読者はソフトウェアエンジニアであると仮定しており、ソフトウェアエンジニアリングに関するごく基本的な内容については解説をしていません。
after
著者が想定している知識を読者が持っているかどうかも、本の読み方に大きな影響を与えます。本書『エンジニアの知的生産術』では、他の本で導入された概念に言及する際、その本を読まなくても理解できるようにその本の内容を解説しています。一方でソフトウェアエンジニアリングに関するごく基本的な内容については解説をしていません。
before
私はその種のサービスが現れることで、新しい書籍が書かれるときに、読者が知っていると想定する知識の水準が上がるのではないかと考えています。
著者が「こんなことは紙面を割いて解説しなくてもインターネットで検索すればすぐにわかることだな」と考えるわけです。
after
私は情報提供サービスが現れることで、著者が「こんなことは紙面を割いて解説しなくてもインターネットで検索すればすぐにわかることだな」と考え、読者に期待する知識の水準が上がると考えています。
西尾のコメント
前半の文言をすこし削りました。これで入ると思います。
助詞の修正提案をリジェクトしてif-then形式に書き換え
元の文章(p.52)
- 「次にとるべき具体的な行動」が複数のものを「プロジェクト」にする
- 「次にとるべき具体的な行動」が2分以内でできるものは今やる
- 「次にとるべき具体的な行動」を自分でやるべきではないものは他人に任せて連絡待ちリストに入れる
- 「次にとるべき具体的な行動」が特定の日時にやるべきものはカレンダーに書く
編集コメント
「次にとるべき具体的な行動」が2分以内でできるもの
↓
「次にとるべき具体的な行動」【で】2分以内でできるもの
「次にとるべき具体的な行動」を自分でやるべきではないもの
↓
「次にとるべき具体的な行動」【で】自分でやるべきではないもの
「次にとるべき具体的な行動」が特定の日時にやるべきもの
↓
「次にとるべき具体的な行動」【で】特定の日時にやるべきもの
西尾の修正(if-then形式に書き換え)
- 「次にとるべき具体的な行動」が複数なら、「プロジェクト」にする
- 「次にとるべき具体的な行動」が2分以内でできるなら、今やる
- 「次にとるべき具体的な行動」をやるのが自分でないなら、他人に任せて、連絡待ちリストに入れる
- 「次にとるべき具体的な行動」をやるのが特定の日時なら、カレンダーに書く
西尾の考え
「次にとるべき具体的な行動が2分以内でできるものは今やる」は「(次にとるべき具体的な)行動が2分以内でできるならば、その行動を今やる」の意図だったが、それを「次にとるべき具体的な行動で2分以内でできるものは今やる」に直そうとするということは「ある行動が次にとるべき具体的な行動であって、かつ2分以内でできるものは、今やる」という意味に解釈されたということで、そういう解釈揺れが起きるのは当初の文章が悪かったからなのでif-thenルールである意図が明確になるように文言を修正すべきである。
もっと面白い例があったんじゃないかという気がするけど、Gitlabのチェンジセットを一つ一つ見ていくのは思ったより面倒だった。