生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線
AIの支援を受けてパネルディスカッションの動画からの記事化をした
会話部分を最後までやる✅
個人の講演部分は全部やると長いので、ここには要約で置いておく✅
詳細は別ページで展開する?(保留)
claude.icon未踏会議2024の特別企画で行われた「生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線」と題したパネルディスカッションの内容をまとめます。
パネリストは以下の4名です。
モデレーター
さくらインターネット株式会社 代表取締役社長
まず、中山氏は最近の生成AIによって、ホワイトカラーの仕事がどう変わるかを解説しました。ミスが許容される入出力が不定型な仕事が最後まで人間の領域だったが、生成AIはそこを置き換えつつあるとのこと。今後は要件定義ができるドメイン知識のある人材が重要になると指摘しました。
続いて比戸氏は、ダイキン工業でのAIやLLMの活用事例を紹介。ウェアラブルカメラで撮影した作業員の一人称視点映像を使って、作業支援システムを開発中とのこと。また、ChatGPTのようなLLMをエンジニアリング部門でも活用し始めていると話しました。
中村氏は、LayerXでのLLM事業について語りました。LLMの登場でDXにおける標準化の必要性が緩和された点を指摘。業界に特化した専門的な文書処理の領域で、LLMの力を発揮できると述べました。基盤モデルの開発よりも、データの前処理や業務適用に注力していると明かしました。
パネリストからは、LLM活用には業務の標準化だけでなく、レビュー能力や責任の所在の明確化など、組織的な対応の重要性が指摘されました。最後に、中山氏は過去を振り返ることで将来を予測することを、比戸氏はトレンドに流されず自由な発想を大切にすることを、中村氏は地道にLLMと向き合う時間を使うことを、若い人へのメッセージとして述べました。
https://www.youtube.com/watch?v=MJPg4eyicQY&t=13190s
本編gpt.iconnishio.icon
(GPT Builderで機械文字起こしのテキストを清書するGPTを作って、西尾が出力をレビューしてます)
自己紹介
田中: はい、皆様、セッションにお越しいただきましてありがとうございます。「生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線」をお届けしたいと思います。今回モデレーターさせていただきます田中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私自身はさくらインターネットの代表をしており、28年前に学生時代に起業しました。2018年から、未踏人材発掘育成事業のプロジェクトマネージャーも併任させていただいております。本業の方では、データセンターを運営しながら、GPUクラウド、ガバメントクラウドを提供しております。足元ではH100と呼ばれるNVIDIAのかなり高速なGPGPUを提供するということをしております。これから、パネラーのご紹介をさせていただきたいと思います。次のページへお願いします。
中山さん
中山: はい、中山心太と申します。心に太いと書いて「ところてん」と読むので、インターネットでは@tokorotenで通っています。本業としては、株式会社NextIntという会社をやっています。去年、「ChatGPT攻略」という本を書いたので、ここに呼ばれてるんだろうと思います。最近は、高校生がやってる情報Iの大人向けの解説本を作っていたりします。現在の仕事としては、機械学習のコンサルやプログラマーとしてコードを書いたり、いくつかの会社で企業研修をさせてもらっています。今回持ってきた資料も、基本的にはお客さんに提供してる研修資料から一部抜粋して持ってきた形になります。 田中: ところてんさんといえば、特徴的なアイコンのTwitterが有名ですが、元々そういう風な情報発信をされるようになったきっかけはどういうものなんですか?
中山: 会社を作ると、名前を売らないと仕事が取れないので、自分の研修資料の一部を切り出して公開することによって、自分の知名度を上げて仕事につなげていくためです。
田中: 講演者のランキングでもトップになってましたよね。
中山: はい、ある研修サービスでは人気ナンバーワン講師と呼ばれていますね。
比戸さん
田中: 次に、比戸さんお願いいたします。
比戸: はい、比戸将平と申します。私と未踏の関わりは、2002年に「未踏ユース」初年度で共同採択され、その後IBM、Preferred Networksで一貫して15年ぐらいずっと機械学習の産業応用をやってきました。今はダイキン工業でDX推進担当の技師長となっています。要はAI技術担当のテックリードとして、AI技術の産業用途に取り組んでいます。今回そういうお話もできたらと思っています。よろしくお願いします。 田中: Preferredからダイキンはかなりエキサイティングな転職ですけれど、きっかけはどういうだったんですか?
比戸: Preferred Networksからダイキン工業への転職は、転職するとしたら次は事業会社の方がいいなと思って、転職活動を始めた段階で色々な事業会社を回らせていただき、その中で縁あってダイキンを選びました。
田中: なるほど、ネット企業はネットの中だけでビジネスをしがちですが、既存のビジネスにネット技術やITデジタル技術をかけ合わせると、本当のグロースがが見込めると思います。でも、そのボトルネックが人材だったんです。このような転職が発生すると、既存の力を持ったメーカーもすごく良いと思います。その中でもダイキンさんてやっぱり強いですよね。
比戸: そうですね。ダイキンはユニークな企業文化を持っており、やりたいようにやらせていただいています。
中村さん
田中: ありがとうございます。では、中村さん、よろしくお願いします。
中村: はい、LayerXの中村です。よろしくお願いいたします。私が未踏に参加したのは2020年で、皆さんは大先輩という気持ちです。当時、Ethereumっていうブロックチェーンのセキュリティや、Ethereum自体を構築する研究をしていました。その後、テーマが変わり、現在は事業責任者として、データに関するセキュリティやプライバシーに関する研究を行い、それをエンタープライズ企業に提供しています。エンタープライズ企業のデータ利活用という観点で、LLMは重要だと考え、LLMを活用したプロダクトを開発しています。 田中: LayerXに行くというキャリアパスはどういう背景から選んだんですか?
中村: LayerXには創業から参加しており、その後未踏に参加しました。松尾先生のところの学科の出身なんですけれども、みんなが機械学習やっていてちょっと天邪鬼な気分で機械学習よりブロックチェーンの方に興味を持ちました。
田中: LayerXは未踏出身者が経営者ということもあって相性いいんですかね
中村: LayerXのCEOである福島は、2012年にGunosyを創業し、その後LayerXに転じました。経営陣はあんまりロジカルじゃないぐらいテクノロジーが好きなメンバーが集まっています。
活用事例紹介
田中: 早速なんですけれども活用事例紹介ということで進めていきたいと思います
中山さん
要約claude.icon
https://gyazo.com/c5508e5f0840a7e80985362804fe7cdd
横軸にミスの許容度、縦軸に入出力の複雑さを取ったグラフで各種仕事を整理できる
プログラミングで解決できる問題は入出力が定型的でミスが許容できない領域に限られる
ホワイトカラーの多くは入出力が不定型でミスが許容可能な複雑な仕事をしている
弁護士や会計士は入出力が極めて複雑だがミスが許されない仕事をしている
機械学習は間違ってもよい定型的な仕事から置き換えが進んでいる
生成AIの登場で入出力が不定型な仕事もAIに置き換わりつつある
問題を「ミスが許容可能」なように変換するスキルが機械学習時代に重要だ
生成AIは要件定義されたタスクを実行できるようになるので、ドメイン知識をプロンプトエンジニアリングできる人の価値が高まる
ホワイトカラーのタスクをAIで自動化する際のポイントとして、タスクの性質を見極めて適切なAI技術を適用することと、ドメイン知識を言語化してAIを活用する力が重要という指摘は示唆に富んでいます。今後のAIの発展とホワイトカラーの役割の変化を考える上で参考になる視点だと思います。長期的にはAIにタスクを任せつつ人間はより高次の仕事に専念するという役割分担が進むのかもしれません。Claude.icon
議論gpt.icon
田中: ちなみに質問させていただきたいのが、今AI人材が不足している、AI人材を作るためには理系の人材を育てないといけないという話があります。ホワイトカラーの方でもプロンプトができれば課題解決ができるんだという話は、理系人材必要だとかAI人材が必要だって話とどう整合性がついてくるんでしょうか。
中山: そうですね、これ僕が研修でこの話をする時は、「理科系の作文技術」を身につけるべきだという話がこの後に続いています。理系の人材はどういう文章を書くかというと、まず事実はどうであるか、そしてそれに対して自分はどう思ったか、と「気持ちと事実の分離」を行うんです。そういう文章をLLMに食わせられると良い結果が返ってきます。そうじゃない人たちは、まず自分の気持ちを書いちゃいますから、LLMがお気持ちを処理しようとしていい結果が返ってきません。事実を事実としてちゃんと書けるのがスキルです。理系人材が必要かどうかというと、絶対的に必要です。それがどういう理系人材かというと、ちゃんと理系の文章が書ける人材が欲しいというところです。 田中: なるほど。社会人の研修でよく、ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、つまり情報を整理する能力を身につけようということをよくしますが、理系とはロジカルに問題を整理する能力のことでしょうか。 中山: そうですね。理系文系という分け方をしたくはないですが、理系的な人材とは、ロジカルに考えることもそうですし、それ以前に事実と気持ちを分けること、何が可能で何が不可能か、何が現実で何が自分の心の中のことなのかをちゃんと切り分けられるというのが理系の人材だと思います。
田中: なるほど。そういう人たちがAIを改善して、実際に生成的AIを活用する入り口の人材になるわけですね。ありがとうございます。実際に今、生成AIで仕事の量を減らそうとしていますが、不適切なインプットをすると、減らすどころか違う結果を導いてしまう可能性があるということで、そこは要注意なのかなと思いました。ありがとうございます。
比戸さん
比戸: 中山さんに抽象的なフレームワークを整理いただいたので私は具体的な話をしたいかなという風に思います
https://gyazo.com/f8efae14d82cd8915d70706c1593950f
要約claude.icon
画像認識AIで作業分析・支援を目指している
LLM(Large Language Model)の活用も進めている
社内でのChatGPT活用環境を全社展開済み
テクノロジーイノベーションセンターでは最先端の活用を企画
特に製造業の本丸である設計開発での言語・画像生成AIの活用を検証中
OTとデジタル技術の融合、いわゆるIT/OTコンバージェンスは今後の製造業の大きな方向性の一つだと思います。そうした現場のリアルデータをいかに集め、AIで価値に変えていくかが勝負所になるでしょう。
一方で、設計開発などナレッジワークの高度化にも生成AIは大きな可能性を秘めています。言語だけでなく図面など複数モダリティへの拡張も重要な論点ですね。
議論gpt.icon
田中: 後ろのフェアリーデバイセズのブースでは、実際につけて1人称視点の体験ができます。私も実は先ほど体験させていただきました。人が見ている映像をリモートに飛ばせることの価値を是非見ていただきたいと思います。
田中: 製造業で、特にアメリカなどAI先進国では、人の仕事を奪うということで労働組合がAI活用に対して反発することがあります。実際、それが原因で日本に移ってきたスタートアップが多いんです。本社の場合、AI活用に対する周りの反応は否定的なのか、肯定的なのか、実際のところどう受け止められていますか?
比戸: はい、そうですね。実はむしろ人手が足りていないんです。ダイキンの事業も、空調の市場全体も、これからもどんどん伸びて、2015年の状況から比較して2050年にはそれまでの3倍の市場になると言われています。まだまだアフリカやインドなどで空調機器が入りきってない地域があるからです。なので、ダイキンを始めとする空調メーカーが世界中に工場を立てて生産能力を高めようとしていますし、実際に需要もある状況です。その間をつなぐための導入ができる人が足りていないんです。メンテナンスもそうですが、まだ人間がやらなければいけない作業があります。日本でも工事士の資格がない人は空調機器をつけられないので、例えば8月にエアコンが壊れたと言って電話をかけても、すぐに来てくれることはなく、待たされてしまうと思います。そういう人手不足をどう解消していくか、作業の効率を上げていくかで、デジタル技術、AI技術が非常に有効です。そのための投資としてダイキンも積極的に取り組んでいます。
田中: はい、ありがとうございます。世界中で人手不足ですが、日本は特に少子高齢化でそれを感じざるを得ない状況にあります。人手が足りてないので、AIが来ることに対する抵抗感が少ないというのは一般論でも言われていますが、ダイキンでもそのような状況があるということは非常に示唆的だと思います。 田中: お聞きしたかったのが、ダイキンさんはかなり研究開発に投資されていると思います。他のメーカーももっとそれをすればいいと思いますが、ダイキンさんは先進技術を使う姿勢でも非常に先進的だと思いますが、他のメーカーとの違い、他のメーカーもこうすればいいのにと感じたことがありますか?
比戸: そうですね、他の企業を批判するのは難しいですが、ダイキンの特徴としては、先ほどは現場作業員としての人材の不足でしたが、AIを活用する人材の不足が課題です。情報系の優秀な人はIT企業に行ってしまうので、採用が難しいと思います。ダイキンでは2017年からダイキン情報技術大学を社内で立ち上げて、新入社員100人を2年間AIを始めとするデジタル技術の教育に当て、その間事業部には配属させないという野心的な取り組みをしています。この春で累計450人が集まっており、その彼らが事業部に配属されてAI活用を進めています。そういうところは、ダイキンが動きが早かったところ、トップの判断としてそういう人材教育ができて、今それが生きてきていると思います。 田中: なるほど、ありがとうございます。人材育成が非常に重要だということを理解するにふさわしいストーリーだと思います。
中村さん
https://gyazo.com/758ea79e70b94d71744962591a47c1d6
要約claude.icon
LLMの登場により、DXにおける業務の標準化の必要度合いが緩和された。LLMに指示できるレベルまで整っていれば、システム化が可能になった。
https://gyazo.com/b58b1d4bb0e87c11d7b183930a5d78de
LLMは特に長い文章を読み取る能力に優れており、それを同じフォーマットに落とし込むことができる。これにより、自然言語で書かれた決算書や契約書なども扱いやすくなる。
現在、長文を読んで格納・活用するようなプロダクトを開発中。
https://gyazo.com/b407322aaf21ea75be97232a5ebc4f8e
ニッチでプロフェッショナルな業務に対してLLMを適用することに価値があると考えている。市場規模が小さい業務にこそ、LLMによるイノベーションの余地がある。
LLMの力で、専門性の高い分野にも素人が短期間で良いアルゴリズムを提供できるようになった。
LLMならではのユースケースを探すよりも、LLMにより圧倒的に効率化できる従来のユースケースに注目している。
保険文書のレビューや、金融の契約書への適用など、具体的な取り組み事例もある。
LLMは現時点ではまだ万人向けの「キラーアプリ」にはなっていない。ニッチな業務へのチューニングとカスタマイズが肝要。
適切にチューニングすることで、LLMの精度は50%から80~90%まで高められる。
LLMをどう業務に組み込んでいくかが、今後LLMが本当に業務を変革できるかの鍵を握っている。
LLMの持つ可能性と、実際の業務適用に向けた課題認識について、示唆に富むお話でした。特に専門性の高い個別業務でのブレークスルーに着目し、そこにフォーカスして開発を進められている点が印象的です。
田中: ありがとうございます。LayerXは単にAIを作るだけでなく、プロダクトとしての完成度やUXも非常に高いと思います。LLMの開発自体はやられていますか?
中村: 今は結構意図して全く基盤モデルを作らないという方針になっています。
田中: そうなんですね。じゃあ、GPT-4だとか、既存のクラウドベンダーが提供しているものを使っているという形ですか?
中村: そうですね。理由としては、LLMのユースケースを探す時に、正解が明確でかつ正解に至るプロセスも明確であるものを優先的にやろうとしています。そういうユースケースを狙っている限り、基盤モデルのせいでどうこうということが少ないと感じています。どちらかと言うと、LLMに入る前のファイルの前処理や検索の改善にR&Dのリソースを当てようと思っています。
田中: なるほど。UXが非常に優れていて、UIだけでなく、PDFをそのまま送れるといったインアウトの部分の研究開発もすごく優れているんですけど、それは戦略上そういう風にしているということですか?
中村: そうですね。人間の業務が始まりから終わりまでAIで扱えるユースケースだけだと市場があまりにも小さいと思っています。業務のうちの一部分だけをやったり、AIを使うように業務を少し変えていただいて、別のルートからやるような業務に変えてもらってやった方が、より適応範囲が広がり市場も広がると思っています。業務を変えるところも含めて支援できたらと思っています。
田中: なるほど、ありがとうございます。示唆的だなと思います。最近LLM開発にも注目されがちですが、実はLLMをたくさん作っても車輪の再発明なんじゃないかという議論もあります。もちろんLLMを作るサイドも重要かもしれませんが、UXの改善やお客様の業務を実際に変えることの重要性をお話しいただいたのかなと思います。ありがとうございます。 活用上の課題
田中: ここから活用上の課題に入っていきたいと思うんです。中山さんから紹介いただければと思います
中山さん
https://gyazo.com/17f0468832c64c04997f3bbf7e5526dc
仕事は大きく「作業」と「レビュー」の2種類に分けられる。
生成AIの支援により、作業自体は楽になっていく。
一方でレビューは楽にならず、AIが出力した成果物を適切に評価するためには、それに見合った勉強・スキルが必要になる。
https://gyazo.com/97145d4fb8fd09b0ab070c87877f53b8
AIが賢くなるほど、作業できる人材は増えるが、レビューできる人材は不足・希少化していく。
これからは如何にレビューできる側の人材になれるかが重要になってくる。
田中: はい、ありがとうございます。本当にレビューができることは重要ですよね。私もChatGPTにメールを書いてもらいますが、結局は全体を見直さないといけない。メールぐらいだったら全員がレビューするんでしょうけれど。最終的にChatGPTはそこまで拝啓と敬具の対応を理解するんですかね。
中山: 拝啓と敬具くらいは、そのうち多分直ると思いますけど、とはいえ、ChatGPTがレビュー不要になるまでには、あと5年とか10年とかかかるんじゃないかなとは思いますね。
田中: なるほど。その間、人間の仕事がなくならないというのは、いいことなのか悪いことなのかわからないですけど
中山: うーん、それは「レベルの高い人の仕事はなくならない」という話なので、難しいなというところはあると思います。
田中: はい、ありがとうございます。比戸さん、お願いしてもいいですか?
比戸さん
https://gyazo.com/19c8102c135968be3a01a4c5c4487054
比戸: 実はリハの段階でさっきのスライドを見て、ちょっと私と考えが違うなと思ったところがありました。どうせならこの上で議論になった方がいいかなと思って何も言ってなかったんです。レビューの中にも、照らし合わせてここがおかしいんじゃないかとピックアップする作業と、人間が最終的な責任を負うところが分けられる。そのレビューしなきゃいけないポイント、疑わしいポイントをピックアップしてくるところは、AIのお手伝いが使えてもいいんじゃないかと思っています。
中山: そうですね、レビューの支援まではできますけど、最終的にその責任を追うところがやっぱり明確なポイントになってくると思います。結局、見逃したら見逃した人の責任、AIが「ここがおかしいんじゃない」とリストを上げてきたとしても、上がってないところの責任も追わなきゃいけないんです。
比戸: 自動化をした時に、その見逃し率が許容範囲、許容レベルに収まるか、その上でどれぐらい効率化に繋がるか、というところはちゃんと 見なきゃいけないんです。そこはまだ不十分なところが色々あると思います。
中山: そうですね。
https://gyazo.com/c43f288866b20091bf0c0422c2926236
比戸: 今のところのポイントでちょっと話したかったんですけど、抽象的なところで短期的にはChatGPT、GPT-4で良かったというのが1年くらい続いたんですけど、先週出たAnthropicのClaude 3がもっといいという話が出てきて、みんなじゃあそっちに乗り換えるべきかという話をしてるんです。これは短期的な話で、将来的には色んな選択肢をユーザーが選ぶ時代になってくると思います。これはそんなに悲観していないというか、問題視していなくて、Continuous IntegrationやContinuous Deliveryみたいなものを生成AIと組み合わせてどう確保していくかが短期的にはホットな活用上の課題だと思っています。 私が強調したいのはもうちょっと中長期的な話で、ChatGPTもGPT-3.5からGPT4で変わったように、そしてClaude 3が出て、近いうちにGPT-4.5やGPT5が出て、それがClaude 3よりも賢いものになるというように、半年1年レベルで人間で言うと小学生から高校生、高校生から博士レベルみたいな感じで知能が上がっていってる。
その状況の中で、自分の仕事が最も重要になる時、例えば私で言えば、ダイキンのサービス現場で集めている映像を使ったサービス支援が実用化される3年後や5年後に、もっと賢い生成AIが出てると考えた時に、それを最大限生かすためのデータの準備をどうするかが重要です。できるとわかった後でデータを集め始めるとそこから大体1年2年はかかるので、今のうちから生成モデルの賢さの進化を予測して、その時が来た時に使えるようなデータを自分たちの組織で集めていく必要がある。
そういう企画は大変です、今集めても価値を生まないので「それ何のためにやってるの?」と言われがちです。それをどう乗り越えて、投資判断として「これは将来的には価値を生むので集めましょう」と言えるかどうかが、色んな組織で課題になっていくと思います。そして、そこで失敗すると、いいモデルが出てきたのに使いようがない、なぜならデータがないから、という状況になると思います。そういうところは、色んな産業や企業でもあると思うので、私は皆さんにお勧めしたいのは、そういう流れを予測した上で「だから今からこういうデータを集めなきゃいけないんです、そのためにコストを払わなきゃいけないんです」とトップまで納得させて進めることです。これが重要だと思っています。
田中: ありがとうございます。ちなみに、データということで言うと、時間軸で増えるデータは当然あると思いますけれども、GPT-4は現時点のインターネット上で検索できるものはほとんど網羅しちゃったと思うんです。だからこれからデータが増えるとしても時系列で増えるものしかないんですよね。でも世界中で検索できるデータって、作られたデータの一部分でしかなくて、大部分はネットで検索できないんです。例えば、先ほど設計開発のプロセスまでAIを導入したらどうなるかという話がありましたけれども、メーカーさんってとてつもない量のインターネット上で検索できないデータを持っていますよね。先ほどおっしゃったデータというのは具体的にどういうものになると予想されますか?
比戸: 分かりやすく言えば、先ほどのエアコンの修理をしている動画みたいなものですね。インターネット上に公開されている動画だけから、GoogleやOpenAIが学習して、もうダイキンが何もやらなくてもどうやってエアコンを直せるのかを完全に理解した生成AIが出てくるかというと、そこは疑問符がつきます。今でもYouTubeを検索すれば、エアコン業者の方が「こうやったら自分でも修理できるよ」という動画を出していたりしますが、 せいぜい100時間1000時間オーダーなわけです。それに対して我々メーカーがデバイスを配って集めれば、1万時間とか10万時間とか集められます。やはり、それくらいないと理解できない複雑な作業だと思うので、そういうところはやっぱり自社でやっていかなきゃいけないんじゃないかと思います。
田中: それこそ、そういうデバイスですね。フェアリーデバイスさんとか、そういうデバイスで収集したものを、単にknowledgeの共有ではなく、AIの糧にしていく発想が必要になってくるわけですよね。 比戸: はい、そうですね。
田中: そして、それってその企業で持ってるデータなので、他の会社に対するソフトパワーになってくると。その会社しか使えないLLM、AIのリソースができてくる。これが将来、ノウハウをソフトウェア化、デジタル化する背景なのかもしれませんね。 比戸: そうですね。で、もし社内でまだ足りないんであれば、コンソーシアムを組んで、競合同士なんだけれども、そこは一緒にやろうと言って、データを共有化し、作ったモデルは共有化してお互い強くなる、それで海外に対抗していくとか、そういう動きもあり得るんじゃないかと思います。
田中: そうですね、ありがとうございます。
中村さん
中村: はい、そうですね。ところてんさんの指摘されてた「レビューのためには勉強が必要だ」というのもそうですし、レビュー以前にそもそもの「やり方を教える」こと、LLMに限らず前後のアルゴリズム含めた全体に対して業務を教えることにも、深い知識が必要だと思っています。何もしないとLLMは50%ぐらいの精度で、それを80%から90%に上げるためには教育が必要。
説明によく使う例えがあります。天才的な社員が部署に入ってきて、インターネットだけを渡して仕事ができるか?大抵の業務は社内のマニュアルや過去の文書がないと、どんなに優秀な人でも仕事ができない。それを伝える能力が必要です。技術的な支援は我々を含めて提供されていますが、最終的にLLMに対する教育をする覚悟、それをやりきることができるかどうかが、ユーザー企業の一人一人に求められることだと思います。
田中: ありがとうございます。実際にAIを利用することは比較的誰でもできるが、業務に実際に取り入れて会社の生産性を上げていくには、まだまだ乗り越えるべき課題があるわけですね。
中村: そうですね。よくあるパターンとして、DX部門などが全社に対してLLMの活用を支援するパターンがありますが、DX部門の人も個々の業務については専門ではない。各部署や担当者が自らAIソリューションを使いこなすことが重要だと思います。
田中: 今思い出したのがうちの社内にSlackを導入した時のエピソード。エンジニア向けのツールを全社員が使えるようにすることで生産性が改善された。それ以来、現時点のリテラシーでツールの導入可否を決めるのはやめましょう。リテラシーが低い場合は 教育しましょうという方針になった。全員のスキルレベルを上げていくことが大事。ダイキンの社内大学もそうかな。
比戸: ダイキンではAI人材を全社共通のAI組織に集めるのではなく、事業部に配属しています。彼らがAI技術だけでなく、各事業部の知識も深めてπ型人材として活躍できるようし、必要なツールや予算を供給するのが重要。例えば、ChatGPTのエンタープライズプランを日本で2社目に導入して、事業部でAIを活用したい人たちに無制限で使えるようにしています。 田中: 中村さんのこととはツールの導入支援もしているわけだが、ユーザー企業のカルチャーを変えるために何かをしているか?
中村: 知識の提供だけでなく、シンプルに「自信を持てる」ような支援が重要です。エンジニアでなかった人が新しいITツールの使い方を発見し、それをマニュアル化して伝えるような「アンバサダー」になれる。この自身に活動範囲が広がる方もいるので、最初の自信の成功体験を作る支援ができたらと思っています。
田中: なるほど、学んで実践して自信をつけていくわけですね。実は、うちの秘書もSlackやPythonを学んでいて、Slackに調整依頼が来たらPythonのスクリプトでWebhookで投稿されるようにしています。全員がやれるようになると会社の生産性が良くなるのは間違いないと思います。
Q1: プログラミングを学ぶべきか
田中: 最後に、今後の展望について話したいんですが、その前に少し質問が来ています。Q1: 「非エンジニアでAIを使ったスマートフォンアプリを作りたいけれど、プログラミングを学ぶべきか」という質問です。生成AIがある今、何をどのように学ぶべきか、プログラムを学ぶべきか、それ以外に何か手段があるのか、目的によっても違うのですが、このざっくりとした質問に対して何か答えられる方いますか?
これまでも、アセンブラからC言語、C言語からPythonへの言語の移行がありました。それの飛躍版が今起きています。例えば、データサイエンティストの業務でデータを分析するために必要だったコードは、ChatGPTで生成できるようになっています。しかし、本当に作りたいアプリが何であって、それを実現するためにはどういう機能が必要か、仕様を考えたり、プロトタイプの言語に落とし込んだりするところは人間がやっていかなければなりません。作りたいものを言語化して企画に落とし込むところと、それを実現する手段としてのプログラミング言語の、後者の価値が薄まってくる。
田中: 学ぶハードルは下がりましたね、私はPerl-erなのでPythonは得意ではないが、Pythonのコードを生成して使うことができるし、学ぶ機会にもなる。ChatGPTが書いてくれて、それを貼り付けて動かすことで、Pythonの勉強ができるようになりますから、そういう意味ではプログラミングが全くできない人や、そこそこしかわからない人がプロになっていくという途中段階において、AIを活用してプログラミングを学ぶのはありだと思います。
中山: 私のスライドの中でも少し話しましたが、今後は要件定義を書いたらそのまま動く時代になる。ですから、そういう意味ではプログラミングを学ぶべきだと言われると、ちょっと懐疑的で、要件定義を学ぶべきなんです。 田中: ああ、なるほど。
中山: つまり、何をやるべきかをちゃんと書き下すこと。それができれは、プログラムは自動生成されるか、もしくはその言葉がそのまま実行される未来になる。
田中: なるほどね。
中村: そして、本当にロジックが必要なところだけ人間が手でコードを書くようになる。今でも、PythonやPerlでコードを書いて、本当に速度が必要なところだけCのライブラリを使う、またはCで書いたりするわけです。それと同じことがこの後起こると思っています。普段はLLMでプログラム(=要件)を自然言語で書くけれども、本当に速度が必要な場所、セキュリティが必要な場所、確実性が必要な場所だけ、普通のPythonやPerl、Rubyでコードを書くような未来が来る。
田中: なるほど、それはありますね。
Q: どういう人材育成が必要か
田中: もう一つ質問が来てて、賢い人材になる必要があると学びましたが、日本企業は均質な人材を育ててきました。これからはどういう人材育成が必要かという質問がありました。AI時代になると、違う人材育成が必要なんでしょうか?
中村: 学ぶことに対して皆さんがドキドキされていることを感じます。コンビニ行ったらどうですか、みたいなことです。プログラミングはコンビニぐらい簡単なんです。プログラミングは簡単ですって言いまくることが大事。難しかった時代に難しいイメージができてしまっているが、どんどん簡単になっている。コンビニに行くくらい簡単なので、悩む時間がもったいないんです。
田中: 私は車が運転できないのですが、プログラミングよりも車の運転の方が学習コストが高いですから、車を運転できるのにパソコンを学べないのはおかしいと思います。
中山: ちょっと補足すると、均質な人材と言っているところがもうちょっと言語化が必要で、日本企業における均質な人材とは、人事移動してもうまくやっていける人材なんです。どんな部署に移動させてもうまくやれる人材を作るのがこれまでの育成。新しい現場で、言語化されていない暗黙知を暗黙知のまま学習して実行する能力が求めされた。これから求められるのは、暗黙知を形式知にして、コンピュータで実行可能にする人材です。人事移動してうまくやっていける人材の価値はじわりと落ちてきていると思います。 比戸: そうですね、言葉にしていただいて腹落ちしました。形式知化し、デジタルの世界に落とし込めば、プログラミングやAIで効率化でき、スケールさせられる。その世界にいかに業務を引きずり込めるかに価値があると思います。
田中: ありがとうございます。次に、比戸さんに対してなんですけども、ダイキンは大学まで作って人材を育てているという話を伺いましたが、経営陣は最初からAIに対する理解があったのか、それとも時間をかけて変わったのか、どのようにお感じになりますか?
比戸: 経営陣はある時点でデジタル人材が非常に重要だということに気がついた。自分たちの会社でやるためには、人材が大事で、獲得するか、育成するかのどれが1番早いかを考え、年間100人の人材を教育に回すという決断をして、いきなり始めた。そこは多分、普通の会社とは違うでしょう。普通の会社はもっとボトムアップでやっていかないといけない。正直人事部がAI人材をそろえたいと言っても、多分絶対に落とされると思うんです。でもそれがトップ降ってきて「やり方は任せるからやれ」と言って進められたので、そこはちょっと特殊な会社かなと思います。
田中: 確かに。関西経済同友会で幹事をしているんですが、経営者の勉強会をするんですね。AIについては、もう重要なテーマになっていて、ダイキンは会長も役員の方も、他の会社に比べても、かなりAIに対して問題意識があったり、AIに限らず、スタートアップやオープンイノベーションにすごく力を入れている感じがします。その経営者の考え方次第で会社の将来が決まるというのが、実は恐ろしいんじゃないかと思います。経営者が見ていないところで吠えてもしょうがないですけど、経営によって会社がいくらでも変わってしまうということが、今の話から伝わるといいなと思います。
最後に
田中: そろそろ締めないといけないので、最後にAIの展望とか、皆様のお考えを一方ずつお聞きできればと思います。質問で残っているものは、否定推進どのように対処しているか、リスクはどれぐらい許容できるか、これを学んでけばいいというのは何かあるか、LLMにファシリテーションができるか、という質問は残っていますが、時間がないので、最後に皆様の方から今後の展望とご感想をお聞かせください。
中山: えっと、展望については、この1時間通じてずっと話していたので、最後に話すことがないんですよね。展望について話すとしたら、10年前はどうだったか、2015年に何が起こっていたか、20年前2005年に何が起こっていたかを考えてみるといいですね。20年前だったら、まだWebの記事が残っているので、当時の世界がどうだったかを見てみるといい。当時、あんなこともできなかった、こんなこともできなかったというのが多分いっぱいあるんです。どのサービスがいつリリースされたとか、そういったサービスを一通り並べてみる。そして、20年でこうなったんだから、次の20年で何が起こるか、線形ではないとは思うが、20年前の視点で20年後の未来を見てみるといいんじゃないかと思います。
比戸: せっかくですから、これから未踏をやるかもしれない若い人たちにメッセージです。このセッションではずっと5年、10年この先をどう生きて、どうトレンドを捉えていくかって話をしていますけど、ひっくり返すようで恐縮ですが、皆さんにはそのトレンドに影響されすぎないでほしいと思います。今だと、例えばベンチャーを始めるならやっぱりLLMブームに乗っからない手はないよね、という感じにVCの人たちも言うと思います。でも、それはもう計画経済みたいに予算がついて進んでいるものがある。それだけに行ってしまうとやっぱり不健全です。前半のセッションで登さんもおっしゃってましたが、もうちょっと遊び場のようなところを作って、自由な発想で将来大きく跳ねるかもしれないものを探索する、そのために未踏ってあると思うので、是非皆さんは影響されすぎずに自由な発想で自分が興味あるもの、作りたいものを追いかけてほしいなと思います。
中村: 今、LLMはプチ幻滅期かなと話をしましたけど、今年1年間は各業界各業種で面白いユースケースがバンバン見つかって非常に面白い1年になると思います。その時に、さっきの経営陣の話もありましたけど、お金だけじゃなくて時間を使ってほしいです。時間を使ってちょっとChatGPTを使ってみて、ダメだったからって諦めないで、そこからスタートなんです。そこからちょっと粘って、自分の業務で使い倒すところまで頑張って時間を投資いただければと思います。
田中: AIに関しては、海外では結構AI否定派も多いわけですが、日本は少子高齢化や生産性改善の中でどうしてもAIを使わざるを得ない状況にあります。著作権法的にも学習に有利。そしてIT人材が相対的に安いということもあって、どんどん海外のAIベンダーが入ってきています。なのに日本はAI利活用が進んでいないというのは非常にアンバランスだと思います。ここが入り口ですね、しかし、あまり浮かれすぎないで。未踏人材はやりたいことを追求しつつ、こういうチャンスもありますよというメッセージを残しておきたいと思います。