室井尚
claude.icon室井尚(むろい ひさし、1951年-)は、日本の美学者、芸術批評家です。東京藝術大学で美学を講じ、現代アートや写真論など幅広い領域で活躍しています。
主な概念:
「関係性の美学」:アートを作品と鑑賞者の関係性において捉える視点。作品の意味は鑑賞者との相互作用の中で生成されるという考え方です。 「間主観性」:主観と客観の二元論を超えて、主体間の相互作用に着目する概念。室井は芸術体験を、作家と鑑賞者の間主観的な出来事として論じました。 主な著作:
『遊動―浮遊する思考』(1986年):「遊動」概念を提示し、現代社会の中で遊牧的な感性の可能性を探った著作。
『関係性の美学』(1995年):アートを関係性の中で捉える美学理論を展開。現代アートの解釈に新たな視点を提供しました。
『間主観性の芸術論』(2001年):間主観性の概念を軸に、芸術体験の本質を考察した論考集。
室井の思想は、西洋的な主体・客体の二分法に疑問を呈し、より流動的で相互作用的な世界観を提示しています。これは、ドゥルーズの哲学との親和性が高いと言えます。 特に「遊動」の概念は、ドゥルーズの遊牧論と響き合う部分があります。定住化した思考に抗い、絶えず脱領土化していく遊牧民的な感性は、室井の美学とドゥルーズの哲学に共通する問題意識だと言えるでしょう。 ただし室井は、ドゥルーズほど政治的な文脈では論じておらず、あくまで芸術論・美学の領域で遊動的な感性の意義を探究しています。二人の思想は方向性を異にしつつも、近現代の思想史の中で互いに呼応し合う関係にあると言えます。