多様性への一元主義
イギリスの哲学者・歴史家アイザイア・バーリンは、ある一つの価値を重視する一元主義と対比させる形で多元主義を追究し、自らの立場とした。しかし、さらに一歩進めれば、多元主義とは、価値の多元性への一元的なコミットメントという点で、実は一種の一元主義(「多元主義という一元主義」)と言えるのではないのか。多元性そのものは疑わないというところで、多元主義は成立しているのではないか。多様な価値の中から選択する可能性の保障という、いわば一段上のレベルの価値として、バーリンが自由を位置付けていることも注目される。 同様に、社会の多様性を求めるとは、どんな生き方でもよく、多様性を否定する生き方でも構わない、ということではなく、多様性への一元主義なのではないか。そう考えることができるとすれば、差別主義的な主張への批判に矛盾はないことになる。