休日の自発的活動の労務管理
Builderscon 2018のサイボウズのOSSポリシーの発表から発展
労務管理の視点の議論自体は有益だと思うので保存したが、僕はOSSポリシーとはレイヤーが異なると思う
「自分の趣味で開発したOSSを業務で利用する場合、業務時間で開発していても著作権が個人に帰属する」という趣旨
これが採用されているケースで、ブラックなマネージャーは「月曜までにこの機能を実現せよ」というプレッシャーを掛けることで、「従業員が土日に自発的に趣味でソフトウェア開発をした」という形で、費用を払うことなく「サービス休日勤務」をさせることが可能である、という指摘
「著作権も個人に帰属しているし、趣味でやってるんだよね」という口実
OSSポリシーによってやりやすくなってしまうのは事実だが、そもそもサービス休日勤務は
「休日なのに仕事のことを考えている」
「休日なのにアイデアを思いついてしまったので社内のグループウェアに書き込んでおく」
「休日なのになんとなくグループウェアにログインして、通知を見て返信を書いてしまう」
などの形でプログラムの著作物の有無に関わらず発生する問題なのでOSSポリシーとはレイヤーが別である。
サービス休日勤務がやりやすくなった原因は
在宅勤務やリモートワークを行いやすい仕組みを整えたこと
それによって好きな時間に好きな場所で働けるようになったこと
これを元に戻すというのはあり得ない。就業環境の変化に合わせた労務管理の議論が必要。
労働者性の議論に関して、作成した著作物の著作権の帰属で議論をするのは筋悪
Kazuho: 休日に使用者の指示なく業務をした場合にも労働時間になると解釈すべき
「いわゆる自発的残業や持帰り残業は、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間となると解され〜一般には、自発的残業等をしないことを明示的に指示し、それが行われているときには中止を求めるなどの措置が必要だと思われます」
----Twitterでの議論(2018-09-10)
Kazuho Oku:
会社で使っているOSSへのコミットについて「労働者の判断基準について」を援用を提唱されていますが、僕はそれには反対します。会社で使うコードであっても直接指揮下になければ労働により生み出されたものでないというのは脱法行為とみなされる危険が高すぎるでしょう
「いわゆる自発的残業や持帰り残業は、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間となると解され〜一般には、自発的残業等をしないことを明示的に指示し、それが行われているときには中止を求めるなどの措置が必要だと思われます」
明確な指示がなくても労働とみなされるわけです。これは職務著作としてcommitしても個人名でcommitしても同様です。しかしながら「個人名ならば職務ではない」と誤解する労働者がいるわけです。このような誤解のもとに休日労働されることは労務管理の失敗
nishio 単に「趣味のリポジトリで個人名であるからといって休日に仕事をすることはよくないことであって、休日に仕事したいなら上司に許可をもらってちゃんと給与を受け取れ」と周知すれば良いだけの話であって、制度に違法性があるとか脱法行為とみなされる恐れがあるとかいう状況ではないのでは?
Kazuho:
労働者を誤解させて時間外労働させるのを脱法行為というのです
西尾さんは実際に、休日に会社で使うコードを、指揮を受けることなく個人名義で書いた場合は労働にあたらないかのような主張をされていましたよね? 企業には社員の労務管理をする責任があるので、そのような誤解のもとに休日労働を誘発すること自体が問題なのです
nishio 僕が「労働である確率が0%」と解釈されるような発言をしたことは誤りであったとして撤回しますが、あなたが「労働である確率が100%」と捉えられる発言をしていることも適切ではないと思います。そして具体的なケースを明示しないと結論は出ないと思います。
Kazuho: 「脱法行為とみなされる可能性が高すぎる」というのは、会社を規制対象とみる労働関連法の理解として正しいと考えます
nishio: 僕はそこには同意しませんが、とりあえず「そういう意見もあるので、従業員がサービス残業とかサービス休日労働をしないように周知しましょう」って感じでいいですかね?従業員が幸せにコードが書ける方法についてアイデアがあれば教えてください。
Kazuho: 僕としては、OSSガイドラインの導入にあたっては社員が無意識の時間外労働をしないよう会社側に留意してほしい、そのことは会社のリスク管理と、社会全体の労働者保護につながることであるし、労務管理について理解することは社員本人にとっても有益であろう、というあたりかしら
---- Twitterでの議論(2018-09-08)
Kazuho Oku: 職務著作は会社の業務、個人の著作物は業務外、としているなら、日曜に会社で使われているOSSのコードを書いたとして、それは趣味であって労働ではない、と主張することは可能かもしれない(というか僕はそう主張する)けど、それでも労務管理上は微妙だと思うし 著作物としての区別がないとなると、よりいっそう労務管理的な曖昧さが増すのは懸念点だと思うということです
Kazuho Oku: ちゃんと給与を払ってるホワイト企業が社員の意欲を削ぐような労務管理をやるべきではないと思うけど(僕は自由に働きたい)、ホワイト企業には(悪法であれ)法律遵守の姿勢も、また求められると思うのです
労務管理の話、趣味のプロジェクトに日曜にコミットしてるのも趣味だから労務管理とは無関係では。その日曜の行動に対して上長などからの指揮管理があるわけではないので。
Kazuho Oku: 「こういう機能が水曜までにほしい」という指示があったとして、それを日曜に個人の著作物としてやった場合は、労働として認識されるべきなのでは? 会社の著作物としてやった場合は明確にそうなわけで、職務著作かの規定次第でそれが免除されるとなると、脱法行為とみなされる可能性があると思います
その場合に労働であることには異論はないですが、コードを書くなどの著作物作成がない場合(電話応対、障害対応待機)でも命令によって労働が発生しうるわけだから著作権の話とは全く別レイヤーなのではないかと。
Kazuho Oku: 少なくとも、(たとえ個人の趣味OSSへのコミットだとしても)「仕事は業務時間外にするな」という指示をちゃんと出しておくことが法令遵守の観点からは必要になると思います。そして、著作権の帰属をもって労働か否かの認識の区別ができなくなるのは、ちょっとめんどくさいかも... と
「仕事は職務時間外にするな」「もししたならきちんと報告せよ」ですね、同意です。一方でプログラムの著作物ではない場合は職務著作になる条件が異なりますから著作権帰属を職務かどうかの切り分けに使うのがそもそも筋悪かと。
Kazuho Oku: はい。僕はプログラムの著作物を前提に考えていますが、それ以外だと使いづらい点も、プログラムの著作権帰属での切り分けを主張したとしてそれが果たして認められるものか、という論点があるのも確かだと思います