代議制民主主義は民意のローパスフィルタ
(東 浩紀)欲望というものは、この瞬間に欲望するもの...ある欲望が高まり、その欲望を果たしてしまった後、しばらくたつと、「俺、何であんなことに金を使ったのだろう」と思うことはよくあるわけです ... 代議制民主主義は、たとえば4年であったり、6年であったり、というかなり長いスパンでし か民意を反映しないので、あの制度が欲望の抑止力になる ... 政治家を変えるのに時間がかかるし、選ぶのにも時間がかかるし、とにかくゆったりしているわけですよ。 代議制民主主義が遅いことによって民意のローパスフィルタとして機能して、熱狂が通過しないようになっているのだなnishio.icon 議会制民主主義 が前提としていた時間感覚とは全然別の時間感覚のメ ディアが出てきたのです。そして、それらは欲望の体 現化ということに対してとても向いているメディアで もあったわけですね。
議会制民主主義ができてきた時期は、長い時間の意志集約しかわれわれは考えていなかったのですが、20 世紀、21世紀と時がたつにつれて、どんどん短い単位 の意志集約が可能になっていったのです。そして、短 い単位の意志集約が可能になればなるほど、さっき無意識とか情念と呼んだ突発的な盛り上がりが、意志集約の中で大きな比重を占めるようになってきた、とい う話だと思います。
技術の進歩によってもたらされた速い情報伝達が熱狂の民意に占める割合を上昇させたnishio.icon アーレントは、特に『全体主義の起源』(1951)や『革命について』(1963)で、メディアによって情報が瞬時に広まることが、短期的な熱狂や情念を生み出し、それが政治決定に強い影響を与える危険性について述べています。彼女は、こうした熱狂が個々の深い思考や討論を妨げ、全体主義的な動きを生みやすくすることを懸念していました。