パストゥールあるいは微生物の戦争と平和、ならびに「非還元」
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1984年に刊行された本書は、生涯、ラトゥール自身がその着想の源泉としたルイ・パストゥールによる微生物研究の、その社会的側面を分析する第Ⅰ部「パストゥールあるいは微生物の戦争と平和」、そしてラトゥールの哲学・思想の根本をなすと言える「非還元」の思想が展開される第Ⅱ部「非還元」からなる。 パストゥールおよびパストゥール派の研究を通じて、自然・科学・社会の関係を問い直し、ラトゥールは科学を社会に還元することからも、両者を区別することからも遠ざかっていく。
ラトゥール哲学・思想を知るための必読の書。
前半はパストゥールの微生物研究がどのように世の中に広まって行ったかの歴史書スタイルで、後半はヴィトゲンシュタインみたいなタイプの哲学的記述 トルストイの「戦争と平和」は偉人とされる軍人の動きを相対化して描写したもの
伝播モデル: 科学者の着想が、妨害されなければ、勝手に社会に伝播する
翻訳モデル
ラトゥールはこっち
着想の受容者が自らの利害関心に基づいてその着想を積極的に取り入れ、その着想を再解釈することが必要(p.456)
社会は単なる媒体ではなくて、自律的に行動する人のネットワーク
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1984年にこの本が書かれた頃にはなかった語彙だが、2024年のベンチャー文化を知ってる僕はこれを説明する語彙を持っている
ある程度マーケットを取れたらそのリソースを利用してより大きなマーケットを取れる方向にピボットする 科学的に「正しい」とは主張できない、と反論したペテールが失敗した理由
科学的な実験が奪い取られてしまい、奇跡的なものや神的なものにされてしまったり、証拠もなく全ての病気に当てはまるものとして拡大されてしまったりすることを、ペテールは望まないのである。科学的な方法は彼の側にあるのではないだろうか。しかし彼は間違える。ただしそれは、人が思うのとは別の理由によってである。彼は一人の研究者と戦っていると勝手に思い込んでいるが、実は彼はある巨大な社会運動の代弁者、名義人、増幅器に既になっている人物と戦っているのであり、その社会運動はその人物が正しいことを熱烈に望んでいて、したがってその人物の研究室の全ての仕事に「迅速さ」と本当に「驚異的な」「展開」とを手に入れさせようとしているのである。ペテールは王様が裸だと主張するが、他の人々が大急ぎで王様に服を着せようとするのだ。 ペテールはよく戦ったが、諸力の関係を正しく算定することができず、それゆえ笑い者になってしまったのである。(p.68-69) これはPluralityの現状とも被る
Pluralityは社会運動であり、AudreyやGlenはもはやその代弁者になっている Theyが正しいかどうかはもはや問題ではなく、その社会運動が社会を動かす方向が好ましいものだと考える人々が「迅速に」「驚異的な展開」を付与しようとする
関連しているものをくっつけることによってくっつけられた双方の価値が上がるため、くっつけるインセンティブが生まれる