デモクラシーファーストとセキュリティファースト
「デモクラシーファースト」とは、国家建設において民主主義の確立を最優先させるアプローチです。選挙の実施や議会の設置などを通じて、政治的な正当性を確保しようとします。しかし、コリアー氏は、十分な治安や行政機能が整わない状態で民主化を急ぐと、かえって混乱を招くと指摘しました。 コリアー氏は、内戦や紛争を経験した国では、「セキュリティファースト」の方が有効だと論じました。例えば、シエラレオネでは内戦終結後、まず武装解除と治安部門の改革が行われ、その後に民主的な選挙が実施されました。一方、コンゴ民主共和国では、包括的な和平合意の下で性急に選挙が行われたものの、政府の統治能力は脆弱なままで、その後も暴力と政情不安が続いています。 ただし、「セキュリティファースト」にも課題があります。治安部門が肥大化し、民主的な統制が利かなくなるリスクがあります。また、長期的な視点からは、治安と民主主義のバランスをどう取るかが問われます。
コリアー氏の議論は、一つの有力な視点を提供していますが、普遍的な処方箋があるわけではありません。各国の歴史や社会状況に応じて、国家建設の戦略を考える必要があるでしょう。国際社会としては、脆弱国家の治安部門改革と民主化を、状況に応じて柔軟に支援していくことが求められます。