ジェイムズの多元的宇宙論
二〇世紀初頭の大いなる転換期に、もう一つの宇宙意識、異なった宗教意識を求めて、人の心の「昼と夜」を探険した、類まれな精神の軌跡。多重人格や霊媒現象などの異常心理の研究から、宗教経験の世界へと分け入り、座礁寸前に追い込まれた理性が紡ごうとする新しい意味と、秘かな音楽に耳をすます。「科学から宗教へ」、巨大な落差を跳躍した経験は、やがて純粋経験の哲学と多元的宇宙論という、革命的な世界観に結実する。生と存在の根源としての純粋経験を包む、色彩と音楽と精神性にあふれた、曼荼羅のような多元宇宙。西田幾多郎、鈴木大拙、フェヒナー、宮沢賢治らと交差させつつ、理性と非理性のはざまを抜けて、いきいきしたヴィジョンのほうへと歩んだ思想の冒険を描き出す。 https://gyazo.com/62fa5e5969c3eaf264c0b48f2473b747
経験論から形而上学へ至る筋道と、多元的宇宙論の全貌を本書で解明する。
意識経験に徹底して寄り添えば、〈多元的宇宙〉は合理的に思考し得る最も無理のない仮説である――。錯綜したジェイムズの宇宙論を解きほぐし、そのプラグマティズム的基礎と射程とを明らかにする。
目次
序章
第1章 徹底的プラグマティズムの帰結
――実在論への通路の発見
第1節 哲学者ジェイムズの復権
第2節 根本的経験論の〈根本的〉たる所以
第3節 パースとの懸隔と近似
第4節 プラグマティズム徹底化の帰結
第5節 プラグマティズムから多元的宇宙論へ
第2章 複数世界論の転回
――複雑性の解消から複雑性の全面受容へ
第1節 宇宙及び世界概念の多義性にまつわる問題
第2節 〈一〉への還元――複雑性の縮減と解消の方策としての複数世界論
第3節 現象と絶対者のパズル
――〈充満の原理〉と〈存在の連鎖〉に基づく複数世界の要請
第4節 ありのままの世界の受容――外なる複数性から内なる複数性へ
第3章 多元的宇宙の相貌
――経験の連続性から心的な宇宙像へ
第1節 直接的経験と宇宙の脈動
第2節 脈動の舞台――実在の基底的次元
第3節 大小様々な意識――実在の階層的秩序
第4節 創造と主体性の起源――〈私有化〉による絶え間ない統一
第4章 多元的宇宙論のシステム論的解釈
――その有効性と限界
第1節 システム論的世界観と多元的宇宙論の近似と懸隔
1〈.システム〉の懸念
2.システム論的に見た多元的宇宙
第2節 精神のシステム論――〈情報〉による組織化の理論
1〈.情報〉懸念に基づく精神の定義
2.二種類の梯子の交錯――進化過程と精神過程
第3節 四象限と累進的進化の構図――内面性の復権
1. 連なるホロンと実在の四象限
2. 平板な世界への抵抗