アカデミアとビジネスの評価関数が違う
ビジネス上はシンプルで枯れた手法で問題を解決した方が、その後のメンテナンス性などが良いのだが、アカデミアではそれは論文になりにくい ビジネス上は「キャッチーな技術を使ってプレスを打ち、それによって顧客や優秀な人材を誘引する」という戦略が割と有益なのでよく使われる。
そういうプレスのための研究は、実ビジネス案件に比べて、前提条件に都合の良いものを選んでる。
例えば深層強化学習で難しい問題(囲碁)ができる!というのは、他の難しい問題がなんでもできるわけではなく、囲碁が大量の人間によって研究され、その研究結果である棋譜データが綺麗に揃ったフォーマットで大量に入手可能で、自然界の現象ではなく人間の作ったゲームなのでシミュレーションが容易であり、自己対戦というシミュレーションによってさらに大量のデータを作り出すことができる、という前提条件がある。
ビジネス上、顧客誘引は重要。顧客からの実案件をやることによって社内にそのドメインにおけるノウハウが蓄積し、他の競業他社に対して参入障壁として機能する アカデミアでは「問題解決に複雑なモデルを使ってみたけど学習がうまく行かなくて討ち死にしました」は論文として公開されない。
「シンプルなロジスティック回帰で問題が解決しました」は、解決できなかった問題を解決したり、精度がすごく上がった場合には論文になるかもしれないが、あんまりキャッチーではないので話題になりにくい。
ビジネス上は、キャッチーな技術を使ったデモには正の公開バイアスがかかるのに対し、実案件に対してどういう解決をしたかの情報には競合の参入を防ぐために負の公開バイアスがかかる
仮にワトソンがクイズ番組で優勝したのを誘引としてやってきた顧客の案件が決定木で解かれたとして、そんなことは絶対にプレスリリースに乗らない。