転座
「転座」とは、遺伝学の分野では、染色体の一部が切断されて、別の染色体や同じ染色体の別の位置に再結合する現象を指します。この染色体の異常は、遺伝病やがんの原因となることがあります。
転座の種類
転座は、染色体の構造変化の仕方によっていくつかの種類に分けられます。
1. 相互転座
最も一般的なタイプで、2つの異なる染色体の断片が互いに交換されるものです。
遺伝物質の総量に増減がない均衡型と、増減がある不均衡型があります。
均衡型転座
遺伝情報の過不足がないため、通常、当事者には健康上の問題がありません。
しかし、生殖細胞を作る際に不均衡な染色体が形成されることがあり、流産や不妊、子どもに先天性異常が生じる原因となることがあります。
不均衡型転座
遺伝情報に過不足が生じるため、ダウン症候群や白血病など、深刻な遺伝性疾患を引き起こす可能性があります。
2. ロバートソン型転座
特定の染色体の動原体(セントロメア)付近で切断が起こり、2つの染色体が融合するタイプの転座です。
ヒトでは、13、14、15、21、22番の染色体で起こります。
ダウン症候群の原因の一つになることがあります。
転座がもたらす影響
転座が遺伝子に与える影響は様々です。
がん:特定の遺伝子の位置が変わることで、がんの原因となる異常なタンパク質が作られることがあります。慢性骨髄性白血病の原因であるフィラデルフィア染色体は、9番染色体と22番染色体の相互転座によって生じます。
不妊・流産:均衡型転座を持つ親から、不均衡な染色体を持った子どもが生まれることがあり、これが不妊や流産の原因となります。
先天性疾患:転座によって遺伝情報の過不足が生じると、発達障害や知的障害などの先天性疾患を引き起こすことがあります。
診断
転座の有無は、染色体検査(核型分析)やより詳細な遺伝子検査によって調べることができます。妊活中のカップルが流産を繰り返す場合などには、均衡型転座の保因者かどうかを調べることもあります。
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