2人で書く
ドゥルーズとガタリの共同執筆は、いくつかの同時に進行するプロセスからなっている。 基本的に毎週火曜日の午後にドゥルーズの家での直接の会合があり、そのとき出てきた問題や概念は各自が持ち帰りそれをめぐってバラバラにテクストを書き、できたものを相手のところに送る。受け取った方は、伸ばすべき点をマークし、書き足し、相手の議論を補佐するような材料を探し、相手にふたたび返し、テクストを循環させる。つまり、手紙を交わし、話し合いの機会を持ち、一方が概念を提起し、双方が概念の同じ理解に達せずともテクストを書きはじめ、それを交換する。そしてテクストに互いに手を入れながら、別の道筋を挿入し、逸脱させ、線を伸ばし、ふたたび話し合い、問題を限界までもたらし、新たな概念で裁断しなおし、ふたたび持ち帰って一人でまた書き、それを送る…という具合である。
(芳川泰久・堀千晶,2015,『ドゥルーズ・キーワード89 増補版』,せりか書房,pp.106-107)