【ご挨拶】
展示会期終了のお礼
本展示は、2020年8月16日20:00にて終了しました。
多くの方のご来場および、課題へのチャレンジありがとうございました。
菅俊一プロジェクトの次回の展示や4年生の卒業制作展にご期待ください。
多摩美術大学美術学部統合デザイン学科菅俊一プロジェクト一同
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デザインや教育に携わっていると、様々な場面で「問題発見」と「問題解決」という2つのキーワードを耳にする。振り返ってみると、私が大学生だった20年前にも全く同じキーワードが使われていたことを考えると、未だに社会ではこの2つの思考技術は重要なものとして扱われているということなのだろう。
私も、この2つが重要であるという意見には賛成するが、人間がどうやってクリエイティビティを発揮できるかという視点で考えると、実はその2つよりも重要な能力があるのではないか?と考えている。
それが、私がプロジェクトの4年生に前期の課題として与えたテーマである、「問題設計」だ。
問題設計とは、問題発見と問題解決の間に存在するプロセスだ。見つけた(気づいた)問題を上手く言い換え加工して、解きたくなる気持ちや、創造性のある問題解決方法が出てくるように、お題を作り変えるという技術だ。
例えば「新しい椅子をつくる」というテーマがあった時に、そのままの問い方をすると、単に現状の椅子のスタイリングを変えていくアイデアがたくさん出てしまうわけだが、これを「自重を預けておける場所をつくる」と加工し直すと、おそらく従来の椅子の形からはかけ離れたアイデアが出てくるはずだ。
今回私たち、多摩美術大学統合デザイン学科菅プロジェクトでは問題設計の一環として、「新しいデザインの教科書を考える」という枠組みで、「コミュニケーション」「プロトコル」「ルール」「インタラクション」「レイアウト」「抽象化」「観察」「分類」「分解」「リソース」「バランス」「翻訳」というデザインを構成する概念から1つを選び、そのテーマを学ぶための課題を考え、お互いに解き合うという試みを行った。
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図:課題出題時に検討していた、各概念間の関係性のメモ
考えてみれば美大の課題は、問題設計の良い例題に溢れている。4年間様々な課題に取り組んできた彼らに改めて、課題設計に挑戦してもらうことで、過去に取り組んで来た課題を見直しながらデザインを学ぶこととはどういうことかを考えてもらおうとしたのである。
2020年8月現在、コロナ禍は広がりを見せ続け、先行きも見えない状況ではある。しかし、私たちは現在も途切れることなく、デザインをアップデートするために学び・探り・作り続けている。この文章を読んで頂いた皆さんには是非、11人の学生が考えた課題にぜひ一度目を通し、よければ実際に考え、手を動かしてみてもらいたい。
社会的・商業的な文脈から切り離された、純粋にデザインの概念だけを探求していく楽しさや面白さに触れることで、デザインという考え方が拓く、次の時代の可能性を感じて頂ければ幸いである。
2020年8月4日 多摩美術大学美術学部統合デザイン学科講師 菅 俊一
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