自在化身体論
稲見昌彦
北崎充晃
宮脇陽一
ゴウリシャンカー・ガネッシュ
岩田浩康
杉本麻暉
笹原俊一
瓜生大輔
発行:2021年2月5日
https://scrapbox.io/files/649038f8489d5a001ce65f8e.png
目次
はじめに
稲見昌彦
ITが社会に浸透することで「情報のやりとり」による行動が増えてきた。
これは「脱身体化」の流れと言える。
人の心と体は不可分。現在の「体を置き去りにした情報通信によるコミュニケーション」はストレスになる。
身体も情報空間に持っていければ。
「稲見身体自在化プロジェクト」
「最新テクノロジーによる新しい肉体」とは何か。が本書のテーマ。
「ムーンショット型研究開発制度」
政府が1000億円を投入するプロジェクト。
第一目標として「人が体、脳、空間、時間の制約から解き放たれた社会を実現」。
2020年9月から開始。
1:変身、分身、合体まで
稲見昌彦
キーワードは「自在化」
メタリウム
第三、第四の腕を追加する装置。
仕掛けとしては、足の動きを反映させている。
2017年、シーグラフで最優秀デモ賞を受賞。
自在化は、ロボティクスに限定した話ではない。
CGアバター、VR、AIなど多岐にわたる。
物理空間と情報空間を自由に行き来できること。
「自動」と「自在」の違い
自動:装置が「代理として」用を満たしてくれる
自在:自分の能力の拡張。自在に使い、本質的に自分自身として振る舞う
「人間拡張(Human Augmentation)」。技術により人間に能力を付与する。
自在化と同じ分野ではあるが、自在化は「さらに広い」。
稲見自在化身体プロジェクトのテーマは5つ。
超感覚:感覚の強化
超身体:物理身体の強化
幽体離脱・変身:肉体と心を分離して設計
分身:複数の身体(アバター、ロボティクスetc)を使い分ける
合体:複数人で一つのアバターを使う。
要になるのは「幽体離脱・変身」。
生まれつきの自分の身体に違和感があるなら、それと心(意識)を切り離せれば解決になる。
その後「変身」にて、理想の体(アバターなど)を得る。
Society5.0(超スマート社会):
サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた社会で「人間中心社会」を実現する。
この社会に適応した者を「ディジタルサイボーグ」と呼ぶ。
道具が変える自分
例えば「タトゥー」。古くからある「身体拡張」。本人の意識に影響を与える。
バイク、車を「自分の手足のように」感じる感覚。
こうした「身体感覚の拡張」を工学的に設計できるようにするのが「自在化身体」。
「変わらない原理原則」を確立する
実際の人間にフィットする「自在化身体」の方針を見い出せば、それはこの先数十年活き続けるはず。
TELESARによる「分身」体験
現実世界とVR世界に「同時に存在している感覚」。
「自動」と「自在」の連携。〜をしたいという「意志」は人間が持ち、実行は「自動的に」行う。
これは、人間がすでにそうである。手足の操作が上達する=体内にロボットを設けている。
分身の好例:ウイニングイレブン
合体の好例:チームスポーツ、だんじり祭り
PickHits:想定システム。ボールを投げて的に当てる。AIがサポートすることで、よそ見をしても必ず当たる。
ウィーナー界面:自分で操作できるものとできないものの堺。
「私」とは、自分が調節制御できるもののすべてである。
自在化とは、ウィーナー境界を動かす試み。
シャノン界面:サイバー界とフィジカル界の堺。
フィジカル界はコストが高い。サイバー界で低コストに済ませられるものは多くある。
サイバー界に移行できないものは残る。商品、医療、食事、etc。
自在化が作る未来
自在化の実現により、社会の観念が変わる。