睡眠こそ最強の解決策である-WHY_WE_SLEEP-
2023/1/21 13:44 - 2023/1/21 16:19
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目次
PART1:眠りとは何か?
第1章 眠りという謎
第2章 睡眠リズムを取り戻す
第3章 レム睡眠とノンレム睡眠
第4章 ヒトは眠りで進化した
第5章 年齢と睡眠
PART2:なぜ眠りが重要なのか?
第6章 記憶力と睡眠
第7章 睡眠不足と脳
第8章 睡眠不足が寿命を縮める
PART3:なぜ夢を見るのか?
第9章 レム睡眠の異常な世界
第10章 夢は傷ついた心を癒す
第11章 夢と創造と問題解決
PART4:睡眠とどう向き合うべきか?
第12章 睡眠障害と眠らないことによる死
第13章 あなたを眠らせない犯人は誰か
第14章 眠りを妨げるもの、眠りを助けるもの
第15章 睡眠のために社会は何をすべきか?
第16章 21世紀の新しい睡眠
付録:健やかな眠りのための12のアドバイス
PART1:眠りとは何か?
第1章 眠りという謎
目覚ましをかけずにスッキリ起きれた日。うらやましい。
睡眠時間が6時間か7時間を下回る状態が続くと、免疫が衰えガンリスクが2倍になる
ほかにもいろいろ体に悪いよ
「落ち着かない心は眠りを妨げる」シャーロット・ブロンテ
心の問題にもつながるよ
睡眠不足の状態だと、食欲が湧く。過食につながる
睡眠は「最後の謎」だった。話の掴みとして良いキーワード。
脳の機能は「睡眠によって最適化される」ようにできている
睡眠という薬を規則正しく摂取する
健康に大事な3つのもの:食事、運動、睡眠。睡眠が一番重要。
一日ないがしろにした中で、いちばんダメージ出るのが睡眠!
人はなぜ眠るのか、その理由がまだ解明されていない!
睡眠の働きは、わかった!
第2章 睡眠リズムを取り戻す
カフェイン、時差ボケ、メラトニンの影響
寝起きのタイミングを管理している物
体内時計
化学物質
起きていると、睡眠につながる物質 アデノシン が溜まり「睡眠圧」のようになり、眠くなる 睡眠の質にも影響する
人間の活動がもっとも活発になるのは、午後の早い時間
生物は「体内時計」を持っている。洞窟で暮らしていてもだいたい「寝て起きてのリズム」がある
ただし個体差がある。24時間正確なひとも、28時間のひともいる
代表は、太陽光
それ以外にも、食事のタイミングだったり、運動、温度変化だったり
「視交叉上核」という脳の部位が体内時計をリセットする 目から繋がっている。だから視覚情報(明るい、とか)が影響する。
体温のリズム
12時を基準にすると、20時まで上がり、その後24時は基準より下がる。そこから午前8時までかけて基準に戻る。
就寝から二時間後にもっとも体温が下がる
概日リズム:個人の睡眠/覚醒リズム。みんな持っているが、個人差がある。
クロノタイプ:いわゆる朝型か夜方か。遺伝で決まることが多い。 朝型人間:人類の40%。覚醒のピークが午前にくる
夜型人間:人類の30%。午後にならないと起きないタイプ
中間人間:残りの30%。やや夜側。
社会は朝型を基準に作られている。
クロノタイプに幅があることで、群れとして活動するときは「群全体が止まる時間」が少なくなり、有利。
「暗くなったぞ!」を身体中に伝える物質
視交叉上核が松果体に指令を出し、松果体から分泌される 睡眠に入ると、体内のメラトニンはゆっくり減っていき、太陽光が目に入ると松果体はメラトニン分泌を止める。
メラトニンが体内からなくなると、体は睡眠をやめる。
メラトニン自体が眠りを引き起こすわけではない。メラトニンは「眠るペース」を体に知らせているだけ。
時差ボケ
太陽光を基準に、徐々に体内時計を現実のタイムゾーンに合わせることができる。
ただし、1回につき1時間ずつしか調整できない
太陽の位置の都合で、東に移動した時の時差ボケの方が、直すのがしんどい。「早寝する」必要があるから。
時差ボケが頻繁に発生すると、脳の部位が実際に縮小し、脳機能が低下する。病気発生リスクも高くなる。
アデノシンは、起きている間ずっと分泌され蓄積されていく。起きている時間を計るもの。
アデノシンが一定量たまると「眠りたい」状態になる。
カフェインは、このアデノシンの「眠りたい」信号を阻害することができる。
カフェインは、飲んでから30分後に体内量のピークを迎える
半減期:半分の量が体外に排出されるまでの時間
カフェインの分解能力は、人により異なる。また歳をとると分解能力が衰える。
カフェイン・クラッシュ:カフェインで睡眠を妨害している間、アデノシンは溜まり続ける。そしてカフェインの効果が切れると、大量のアデノシンが一気に(強烈な)眠気を引き起こす 日中に溜まったアデノシンは、睡眠中にとり除かれる。だいたい8時間かかる。
概日リズム と アデノシンによる睡眠圧 は独自に動いている
そのため、徹夜していると「概日リズムの覚醒タイミング」が再度やってきて、アデノシンの睡眠圧を和らげる
徹夜のハイな状態
ただし、徹夜中はアデノシンは溜まり続けている。なので次の概日リズムの低下時に猛烈に眠くなる
あなたの睡眠は足りているか?
午前中に眠くなる、または午前中に頭が回っていない場合(もしくはカフェインで無理やり起きている場合):
睡眠の量が足りないか、質が低い
睡眠時間は、最低でも8時間か9時間ほしい。オレの言ってたこと、あってるじゃん!
睡眠が足りないと、除去しきれなかったアデノシンは脳に残る。そこから一日が始まるので、借金状態でスタートすることになる。
第3章 レム睡眠とノンレム睡眠
なぜ、寝ている間は周囲の状況がわからなくなるのか?耳や鼻というセンサーは閉じていないのに。
眠っている間は、時間感覚が喪失する
夢を見ているとき、時間の感覚はたいてい引き伸ばされる
夢、とは?
覚醒時の経験(ラットの迷路の学習など)が、寝ている時に再生される。その時の時間ペースは、遅くなっている。
レム睡眠:REM(Rapid eye movement)、眠っているのに、眼球と脳波が活発に動く状態 ノンレム睡眠の深さはステージ1〜4があり、3、4になっている人はちょっとやそっとじゃ起きない。
レム睡眠、ノンレム睡眠(1→4)、ノンレム睡眠(4→1)、レム睡眠、を90分サイクルで繰り返す
最初のサイクルは、ノンレム睡眠(特に3、4)が長く、後半のサイクルはレム睡眠が長くなる。
(後で出てくる)この睡眠サイクルは「外の時間帯」に影響されるらしい。つまり午前5時から眠り始めたヒトはレム睡眠が長いサイクルから始まる?
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睡眠と記憶
深いノンレム睡眠:もういらなくなった古いニューロン連鎖(=記憶)を削除している
レム睡眠:必要となる新しい記憶(=ニューロン連鎖)を構築している
粘土造形に例えると:
大きな粘土の塊が、覚醒時に得た記憶
深いノンレム睡眠で、不要な部分を大きく削っていく
レム睡眠で、細かい部分を作っていく
これを繰り返す。これにより、新しい記憶が作られる
だから、後半のサイクルほどレム睡眠が長くなる
「睡眠時間を2時間けずる」=「レム睡眠の作業時間を削る」事になる。記憶形成に大ダメージ。
レム睡眠の60〜90%を失うことになる!
まずは覚醒している間に大きな粘土の塊を仕入れなきゃね。
脳波
覚醒時の脳波は、とても乱れている
ノンレム睡眠の脳波は、ゆっくりで安定している。1秒に3〜4回の波。予測できるくらいに安定。
睡眠紡錘波:睡眠中にたまに現れる波。睡眠状態を維持するため、外界の情報を遮断する役、らしい。 これが強く頻繁に現れるほど、起こされようとしていても起きない。
眠りの脳波はおでこから後頭部に向けて発せられる。反響はしない。
実は、ノンレム睡眠中、脳は高度に活動している。脳波が静か=機能が低い、は完全な間違い。
外界の刺激をシャットアウトしているからこそ、脳内で「統一された声」になっている
皮質が「デフォルトモード」にになる。
ノンレム睡眠で情報を整理し、レム睡眠で情報を統合する
FMラジオ:高速周波数。たくさんの情報を送れるため品質が高い。ただし長距離に届かない。
AMラジオ:低速周波数。情報量は少ないが、長距離に届けられる。
脳波は、覚醒時はFM、ノンレム睡眠時はAMに似る。AMは脳全体に行き渡り、遠くのもの同士の情報交換が可能。
AM状態で「ファイルの移動」ができる。短期記憶にある情報を長期記憶に移動する。
レム睡眠時、実は(脳のいくつかの部位は)覚醒時よりも30%活発になる
レム睡眠では、自分の記憶を再度見ている(自己フィードバック)
眠っている間、筋肉はマヒする(随意筋のみ。不随意筋は動き続ける)
レム睡眠に入る数秒前からマヒし、レム睡眠のおわりまでずっと続く
このおかげで「夢で見ている通りに体が動いてしまう」というトラブルを避けられている。
第4章 ヒトは眠りで進化した
ただし「眠りの内容」は種族によって異なる
レム睡眠をとるのは、鳥類と哺乳類だけ
水生哺乳類はレム睡眠をとらない
睡眠リバウンド 睡眠を奪われた日の翌日の夜は、普段よりもずっと睡眠時間が長くなる ノンレム睡眠の方がリバウンドが激しい!
失われた睡眠を一度で取り戻すことはできない!負債を作らないこと。
脳の半分だけを眠らせる
クジラ、イルカ、鳥(群れの両端にいるやつ)は、左右の片方の脳で寝て、もう片方の脳は起きている。
片方だけで取れるのはノンレム睡眠だけ。レム睡眠は両方の脳を眠らせないと取れない。
実は人間もしている。不慣れな場所で眠ると、片方の脳が眠りが浅くなるらしい。
睡眠と飢餓
栄養が十分にとれないと、食事を優先し、睡眠は短くなる(一時的に)
ある人が意識的に食事を減らした場合(=その気になればいくらでも食べられる状況)でも、同じことが起きる。
これは「命が危険に晒される状況」でも同じ。
現代人の眠りは自然ではない
夜にしっかり寝て、午後に30〜60分寝る、というのが自然。
シエスタをやめた国は、死亡リスクが上がった
人間の眠りは、特殊
霊長類で見ると、睡眠時間8時間は短い、がレム睡眠の割合は高い。
ホモ・サピエンスの祖先であるホモ・エレクトスが霊長類で初めて(樹上ではなく)地上で眠るようになった。
火を使い、短く深く眠るようになり、レム睡眠が身についた。
眠りの質により、ヒトは社会文化の複雑さ、認知力の高さにつながった
社会文化:EQの高さは、レム睡眠を日々十分にとれているかどうかで決まる
認知力:レム睡眠の間に情報の衝突、結びつきが起こり、創造につながる
第5章 年齢と睡眠
なぜ、若者は朝寝坊し、老人は早起きするのか
レム睡眠時、随意筋が麻痺するメカニズムが働いている
生まれたばかりのラットのレム睡眠を阻害したところ、脳の皮質が作られず、それ以降もう作られることはなかった。
生まれたばかりの時期に睡眠を阻害されると、脳の発達の遅れは一生残る
自閉症スペクトラム(ASD)とレム睡眠の関係
ASDのヒトは概日リズムが弱く、夜を感じてメラトニンが分泌される機能が弱い。睡眠も短く、レム睡眠が短い。
アルコールはレム睡眠を阻害する(胎児、赤ちゃんの場合)
赤ちゃんのうちは短い睡眠を繰り返す。1年経つと概日リズムが身に付く。4歳になると完全に概日リズムに支配される。
4歳くらいまでは二相睡眠、それより大きくなると単相睡眠
ノンレム睡眠とレム睡眠の時間比率:大人になると8:2
小児期:レム睡眠が多い。脳の連結を増やす時期
思春期:ノンレム睡眠が増える。連結を整理し効率化する時期
だから子供の脳は汎用型、大人の脳は個別型
脳の子供→大人への成長は、後頭部から前頭部へ進んでいく。つまり前頭葉だけまだ子供、の時期がある。
脳の成熟には深い眠りが重要。思春期にカフェイン等で眠りを阻害すると、発達が阻害され、永続的に尾を引く。
統合失調症を発症した思春期の子供は、ノンレム睡眠が平均の二分の一〜三分の一しかなかった。また質も悪かった。
「不要な情報の削除」がうまくできない状態。
大人の睡眠事情
20代の終わりから30代にかけて、深いノンレム睡眠が短くなってくる
40代になると、深いノンレム睡眠の時間も質も下がってくる
40代後半は、10代の頃に比べて深い眠りが60〜70%減少する。70代は80〜90%減少する。
年をとるほど、夜中に目を覚ます回数が多くなる
膀胱が弱くなり、トイレが近くなるため
睡眠効率:ふとんに入っている時間のうち、本当に睡眠できている時間の比率。 10代なら95%。90%以上なら、良い睡眠が取れていると言える。
高齢者は、メラトニン分泌のピークタイムが変化するため、早く寝て早く起きるようになる。
一日のどこかで居眠りをすると、睡眠圧が一掃されてしまい、肝心の夜に眠く無くなってしまう。
夕方など半端な時間の居眠りを防ぐには、夕方に太陽光を浴びること。
加齢による脳の劣化と睡眠
深い睡眠の信号は、おでこあたりから出ている。年をとると、まずここが劣化する。
深い眠りが少なくなるほど、寝ている間に失われる記憶も増える
PART2:なぜ眠りが重要なのか?
第6章 記憶力と睡眠
睡眠は「魔法の万能薬」!一晩ぐっすり眠ることで様々な恩恵が確実にある。
ショートスリープ信者、大丈夫?
海馬:一時記憶をする部位。長い指のような形で、左脳右脳にひとつずつある。 実験:100人の顔と名前を覚える。
グループAとグループBを用意する。
一回目のテストをする。
グループAは90分の昼寝をし、グループBは起き続ける。
二回目のテストをする。
グループAの方が20%成績が良かった。
グループB、集中力は維持されていた。ただ「記憶する力」が衰えていた。
睡眠には、脳の記憶容量を空ける力がある
脳のメカニズム:
睡眠中に睡眠紡錘波が多く出ているほど、記憶の容量が空いた。 謎の電気信号もあった。それが海馬(短期記憶)と皮質(長期記憶)を行き来していた。
これにより、海馬の容量が空く!記憶が皮質に移動する!
加齢とともに睡眠紡錘波が起こりにくくなる。なので、歳をとると記憶力が弱まる。
睡眠紡錘波が多く出るのは明け方。長いレム睡眠が発生するサイクル。
睡眠により記憶が定着する
クインティリアヌス(35〜100)も「一晩寝ると、その時すぐ思い出せなかったことも思い出せるようになっている」と言っている
情報をインプットした後8時間眠る:情報が記憶として定着した。
情報をインプットした後8時間起きている:記憶としては定着せず、忘れてしまった。
レム睡眠とノンレム睡眠、記憶の定着に効くのはどちらか?
結果、ノンレム睡眠。ノンレム睡眠をしっかりとったグループの方が明らかに「教科書の内容」をよく覚えていた。
何か情報を得た時、それを引き出すために使われる脳の部位は、寝る前と寝た後とで異なる。2つは離れている。
眠っている間に、情報は海馬から大脳新皮質(脳のてっぺん)に移動される。 睡眠紡錘波と徐波睡眠によって、情報が移動される。
海馬は「キャッシュ」、大脳新皮質は「カタログ」。毎日キャッシュがカタログに追加されていく。
昼寝も、20分のノンレム睡眠が含まれているのであれば、この効果がある。
サイモンとガーファンクル「サウンドオブサイレンス」でも、睡眠の力が謳われている
睡眠は「情報を記憶に定着させる」だけでなく「思い出せなくなったことも、掘り起こして思い出せるようになる」らしい
さらに記憶力を高める方法は?
外部から(電極などで)ノンレム睡眠中に「睡眠紡錘波」を人為的に引き起こす
記憶力が2倍になった!
これはノンレム睡眠時に効果がある。覚醒時やレム睡眠時(=脳がうるさい時)は効果がない。
電極ではなく「音による刺激」も効果がある。
寝ているヒトの脳波に合わせたチクタク音をスピーカーで流し続ける。
電極のような効果が得られ、記憶力が40%向上する!
ただし素人がやるのは要注意。自分のリズムとずれた音だと、却って害される。
ノンレム睡眠中にベッドを優しく揺られると、睡眠紡錘波が2倍以上になる。
覚えたいことを覚え、忘れたいことを忘れることはできないだろうか?
実験:100個の画像を暗記する。この時、画像を見せた時に「関連する音」が出るようにする(ベルならチリンチリン)。その後、眠っている間に「チリンチリン」をそっと聞かせる。
結果:眠っている時に音を聞かせた画像が、ばつぐんに良く記憶されていた。
洗脳にも使えるから、こわいね。
実験:画面に出てくる単語群を覚えていく。その時「赤いR(今のは覚えておく)」「緑のF(今のは覚えなくていい)」のサインを暗示的に単語と単語の間に挟み込む。
その後、寝る。(ノンレム睡眠)
起きた時「赤いRの単語が記憶され、緑のFの単語は忘れられていた」
この仕分けを行っているのは睡眠紡錘波。
1秒間に10〜15回、海馬(記憶)と前頭葉(意思決定)を行き来している。
前頭葉にいるとき「この情報はいる/いらない」を区別している。
運動スキルの取得〜一晩寝たら、なぜかできるようになっていた〜
ピアニストの話:何度やってみても上手く弾けない箇所が、次の日には弾けるようになっていた、という体験
怪我や発作で脳が損傷したときも、睡眠で修復される
実験:簡単なタイピングスキルの習得
「左手で数字を正確に打ち込む」新スキルを12分間練習してもらう。
もちろん、やる前よりもみんな上手くなった。
グループは2つにした。Aは「この練習を寝る前にやった」、Bは「練習をした後、ずっと起きている」
練習から12時間後、再度タイピングをしてもらった
グループAは「スピードが20%向上、正確性が35%向上」という成長を見せた。
グループBは「練習後から、特に変化なし」
グループBは損したのか?
NO。グループBが、その後8時間睡眠をとりさらに12時間明けてから再テストしたところ、スキルは向上していた。
練習をし、そのあとぐっすり眠ることでスキルが身に付く!
トライしているスキルの複雑さ、には特に影響なく、スキルの向上は発生する。
運動スキルの情報は、睡眠時に「意識下で動く脳の回路」に移動される。
脳は、睡眠の力を借りて、その動きを自動化していた
運動スキルの習得は「8時間睡眠の最後の2時間」、ノンレム睡眠のステージ2で強く発生する。
睡眠紡錘波が脳の運動野で大きく増える
ウサイン・ボルトはレースの前に昼寝をとっている
イチローは9時間睡眠
睡眠をケチっている選手(6時間)ほど、怪我をしやすい
第7章 睡眠不足と脳
ギネスブックは眠らない新記録をとることをやめた
睡眠が足りないと、まっさきに「集中力」が被害を受ける。
マイクロスリープ:一瞬だけ集中力が途切れること。数秒。
睡眠不足(一日4時間など)があると、反応速度の低下、そしてまったく反応しなくなる瞬間が発生する。
睡眠をしっかり取れている時のパフォーマンスを100%とすると:
毎日しっかり寝続ける:パフォーマンス100%を維持
睡眠不足に陥る:パフォーマンスは大きく低下
さらに睡眠不足を続ける:パフォーマンスはどんどん落ち続け、底に着くということはない。
慢性的な睡眠不足の危険:
毎日4時間睡眠を11日間続けると、48時間不眠の人と同じパフォーマンスになる。
毎日6時間睡眠を10日間続けると、24時間不眠の人と同じパフォーマンスになる。
これら慢性的な睡眠不足も、パフォーマンスの低下は止まらない。
慢性的な睡眠不足に陥ったヒトは「自分が異常な状態だ」という自覚を持てない。これが危険。
パフォーマンスの悪い自分、に順応してしまう。
慢性的な睡眠不足を経験した後、3日間好きなだけ寝れる生活をしても、パフォーマンスは戻らない。
19時間眠っていない人のパフォーマンスは、酔っ払いと同レベル。
4時間睡眠のヒトは交通ミスが6倍、ちゃんと寝て酔っているヒトも6倍。4時間睡眠で酔っ払ったら、30倍になった。
睡眠慣性:寝起きのだるい状態。20〜30分ある。この間は重要な作業(車の運転など)しないこと。 仮眠(20〜30分)は、回を重ねるごとに効果は弱まる。どこかでしっかり寝るしかない。
ぼろぼろに眠くなる前にとる仮眠が「予防」、そうなってからとる仮眠が「治療」
「予防で済ませる」方が絶対に良い
航空業界では、予防的仮眠をパワーナップと呼んでいる。が、仮眠は仮眠。本睡眠は絶対に必要。 真のショートスリーパー(遺伝的性質により、睡眠不足の悪影響を受けない)は実在はするが、極めて稀。パーセンテージで言うと、全人口で四捨五入したらゼロ%。
睡眠不足と感情
扁桃体:「怒り」の感情を司る。危険を感じると「戦うか逃げるか」を判断する 睡眠不足だと、扁桃体の活動が60%上昇する。一晩ぐっすり寝ると、扁桃体の活動は(正常に)抑制された
一晩ぐっすり眠ると、前頭前皮質(合理性、論理性、意思決定)と扁桃体が強く結びつく 線条体:「衝動や報酬」を司る。ドーパミンが豊富にある。扁桃体の近く。 睡眠不足だと、線条体も過剰に活動する。仕組みは扁桃体と同じ。
なので睡眠不足のヒトは「感情のぶれ幅が激しい」。ポジティブもネガティブも過剰反応する。
「極端にポジティブ」「極端にネガティブ」どちらも危険
極端にポジティブ:スリルを求め暴走やドラッグに手を出す
極端にネガティブ:鬱、自信の喪失、自殺
普通に睡眠をとっているヒトは、決して大きな精神病を発症しない
認知行動療法:睡眠を向上させる方法。これが知りたい!アリソン・ハーヴィー博士が権威。 大うつ病にかかった患者の3割程度は、徹夜により症状が改善することがある。
ただし、一度寝るとリセットされてしまう。また残りの7割は症状が悪化する。
アンヘドニア(無快楽症):「楽しい」と感じる機能がなくなっている。 「絶望と希望を結ぶもっとも確実は橋は、一晩ぐっすり眠ることだ」
睡眠と学習(記憶の定着)
徹夜は成績を下げる
徹夜を経験する学習は、成績を40%下げる
深いレム睡眠が妨害される(騒音など)だけでも、同じ効果がある。海馬が新しい情報を取り込まない。
睡眠が足りない状態で覚えたことは、あっという間に忘れてしまう
24時間眠っていない場合でも、2〜3時間睡眠を奪われた場合でも、同じ。
学習したその日に寝ないと、記憶は脳に定着しない
記憶の定着実験:
ある画像を記憶し、後日回答する。グループを3つに分ける。
グループA:画像を見た日、ぐっすり眠り、翌日回答する。
グループB:画像を見た後、2日間ぐっすり眠れる日を過ごし、翌日回答する。
グループC:画像を見た後、3日間ぐっすり眠れる日を過ごし、翌日回答する。
グループCが、もっとも記憶が定着していた。
もう1グループ、画像を見た日は眠らず、その後の2日間はぐっすり眠り、翌日回答するDを用意した。
Dは、画像を記憶できていなかった。
情報を得たその日にしっかり寝ないと、定着するチャンスを失ってしまう。後から取り戻せない。
睡眠中、脳の掃除が物理的に行われている
アルツハイマー病と睡眠の関係:アルツハイマー病の患者の60%が睡眠障害を持っている。
アルツハイマー病は、脳に毒性のタンパク質が貯まる。これは「睡眠を発生させる部位」を破壊する。
アミロイドβ。深いノンレム睡眠を発生させる前頭葉にダメージを与える。
深いノンレム睡眠の時、グリア細胞は60%まで縮む。縮むことで脳を掃除する髄液がよく流れる。
アミロイドβとかストレス因子とか、良くないものを排出してくれる。
若い時から睡眠時間の短い生活をしていると、アルツハイマー病にかかりやすい。
第8章 睡眠不足が寿命を縮める
睡眠時間が短いほど、寿命も短くなる。
死因上位すべてに睡眠が関係している。
睡眠不足は、全身の静脈を膨らませる。一晩徹夜しただけでも、血圧は上昇し、血管心臓にダメージを与える。
数分から数時間、体を「臨戦体制」にする。
睡眠不足中や、睡眠不足を抜けた直後はずっと交感神経系が過敏になっている。
コルチゾール:血管を収縮させ、血圧を上げる。交感神経系が過敏だと増える。 交感神経系は、ノンレム睡眠中は抑制される。
夏時間に切り替わった日(=睡眠時間が1時間少ない)に心臓発作が激増し、戻る日に心臓発作は減少する。
二型糖尿病:砂糖のとりすぎによる糖尿病。
インスリンが分泌されると、体が過剰な糖を排出する。糖尿病は、体がインスリンに反応しなくなる病気。
4時間睡眠を6日間続けただけで、健康だったヒトが「糖尿病予備軍」になった。
グルコースを吸収する能力が40%低下。睡眠不足のヒトの細胞は、インスリンに反応しない。
睡眠と肥満
実験:ただ睡眠時間を4〜5時間にするだけ。これを5日間続ける。
二日目から、食欲が大幅に増した。
レプチンが減り、グレリンが増す。
「睡眠が足りない人は、飽食の中で飢餓に苦しんでいる」状態
エンドカナビノイド:大麻に似た物質。睡眠不足の時、体内で生成される。間食を望むようになる。 睡眠不足でもよく眠れていても、一日の消費カロリーに違いはない。
睡眠が不足すると、ジャンクなものを食べたくなる。
甘いもの、しょっぱいもの、炭水化物を好むようになる。
脳の働きが「原始的」になるから。強烈なカロリーを与えてくれるものに手を出す。
睡眠を十分にとると、腸の状態(最近状態)もよくなる。交感神経系による緊張が緩和されるため。
コルチゾールは悪玉菌を増やす。
ダイエット(適切な食事療法)をしている間、しっかり寝ることが大事。
睡眠をしっかりとったグループ:落ちた体重の50%以上が脂肪だった。筋肉は残された。
睡眠を減らしたグループ:落ちた体重の70%が筋肉だった。
睡眠と生殖機能
男性:睡眠不足の状態だと、血中のテストステロンが減り、精子の量と質が下がり、睾丸が小さくなる。
女性:卵胞刺激ホルモンが減る。排卵、および受精への悪影響。
女性の睡眠不足は、生理不順、妊娠難、流産の確率が高くなる。
美容睡眠:8時間睡眠をした日の方が、5時間睡眠の日よりも、明らかに魅力的に見える。 風邪への耐性:
実験:人為的に風邪の菌を被験者に取り込ませ、一週間観察した。
睡眠時間5時間未満のグループ:感染率50%
睡眠時間7時間以上のグループ:感染率18%
「抗体を得る」のにも、睡眠が重要。寝不足が続いたあとでワクチンを摂取しても、抗体が作られにくい。
ワクチンを摂取してからちゃんと眠りだした、としても、効果はない。
一時的な睡眠不足により縮小した免疫機能は、1年経っても完全には回復しない。
睡眠とガン
ナチュラルキラー細胞:自然発生するガン細胞を退治する。睡眠が不足すると、ナチュラルキラー細胞も減る。 一晩、4時間睡眠にしただけで、血中のナチュラルキラー細胞が70%も少なくなる。
睡眠が6時間以下のヒトは、7時間以上のヒトに比べ、ガンになる確率が40%高い
M1マクロファージ:ガンよ抑制する。睡眠不足で減少する。
M2マクロファージ:ガンを進行させる。睡眠不足で増加する。
睡眠と遺伝子
遺伝子は、成人の体内でも活動している。細胞内の遺伝子が刺激されることで、アウトプットが生成される。
睡眠が不足すると、遺伝子の活動が鈍る。
睡眠不足な状態だと、染色体の端を止めるテロメアが損傷を受け、染色体をガードできなくなる。
PART3:なぜ夢を見るのか?
第9章 レム睡眠の異常な世界
夢のなかでは「でたらめな精神状態」になる
夢は、レム睡眠の時に見る。とはいえノンレム睡眠の時にも見ないわけではない。
フロイトの研究は、今では「科学的根拠がない」とされている。
眠っている間、感情を司る扁桃体あたりが30%活発になる。
逆に、前頭前皮質(理性的な機能)は活動しなくなる。
2013年の時点で、MRI画像と被験者の回答のすり合わせにより、夢に出てくるモノをMRIから特定することができている。
夢は、昼間の経験を再現しているのか?
NO。日記と夢日記を比較する実験では、昼間の経験は夢の1〜2%。
ただし「感情」は35〜55%で夢に反映されていた。
第10章 夢は傷ついた心を癒す
夢の「機能」は2つ
メンタルヘルス
創造と問題解決
メンタルヘルスの効能
レム睡眠中は、ストレスホルモンであるノルアドレナリンが脳から完全に除去される。
完全に除去されるタイミングは、このレム睡眠の時だけ。
レム睡眠中に、扁桃体と海馬が再起動する。
レム睡眠の効果の仮説2つ
日中に経験したことのうち、価値の高いもの、重要なものを統合し取り込む
日中に経験したイヤなことを、ストレスのない状態で解析、解体する(解決する)
これにより「感情の伴わない記憶」に昇華される
実験:つらい感情を想起させる画像を、被験者に2回見せる。
グループA:同じ日の朝と晩(=睡眠を挟まない)にテストを行った。=2回目も感情が動いた。
グループB:晩に1回目、睡眠を挟み朝に2回目のテストを行った。=2回目は感情の動きが小さかった。
興味深い考察:
トラウマになるような経験をした後に、そのことを夢に見たヒトだけが抑うつ症状を脱している。
1年かかるが、脱せられる。夢に見なかった人たちは脱せられなかった。
PTSD患者のレム睡眠は乱れている。記憶と感情の切り離しに成功できていない。
PTSD患者はノルアドレナリンを過剰に持つ。そのためレム睡眠中「感情の伴った夢」を見る。
プラゾシン:ノルアドレナリンを減らす副作用がある薬。上記の仕組みでPTSD克服に効果を示した。 「人の顔から感情を読み取る能力」は、前日に良いレム睡眠をとれているかに影響される。
レム睡眠が足りないと、「怖い表情/敵対的な表情」に解釈が傾く。
この機能は、思春期以降(自立するタイミング)から発達し始める。
第11章 夢と創造と問題解決
ノンレム睡眠は記憶を定着させる。レム睡眠は記憶をつなぎ合わせて創造をする。
メンデレーエフ:元素の周期表を作ったロシアの科学者。表のアイデアは、夢の中で得た。
ポール・マッカートニー:イエスタディ、レットイットビーは、夢の中で得た曲。
キース・リチャーズ:サティスファクションのリフ。
実験:アルファベットを組み合わせる簡単なパズル。
レム睡眠から起こされて回答した場合、正解率が15〜30%向上した。
回答の仕組みも違った。「答えがふっと浮いてくる」感覚であり、ロジカルな思考ではない。
意味的知識:系統樹だった知識体系。論理的とも言える。
レム睡眠中の脳は、意味的知識に縛られない。良い意味で逸脱したひらめきを見せる。
言語習得の時も、学んだ後ぐっすり眠ることが効果的。レム睡眠時、「知識」ではなく「知恵」として身に付く。
実験:単純な算数の計算を山ほど解かせる。実は裏ルールがあり、それに気づけば簡単に回答できる仕掛けがある。
グループA:朝と夜、睡眠を挟まずに2回受けた。裏ルールに気づいたのは20%。
グループB:夜と朝、間に8時間の睡眠を挟み2回受けた。裏ルールに気づいたのは60%。
実験:バーチャルシステムで迷路を歩く。グループAはその後昼寝をし、グループBは起きたまま。その後、もう一度同じ迷路に挑戦する。
グループAの方が迷路をよく覚えており抜けるのが早かった。迷路の夢を見たヒトの成績が10倍もよかった。
エジソンやダリは意図的に夢の創造性を仕事に活かしていた:居眠り中に強制的に起き、夢をスケッチする。
明晰夢は、実在する。明晰夢を見れる人は、自分の意志で夢の内容を操作できる。できるのは人口の20%以下。 PART4:睡眠とどう向き合うべきか?
第12章 睡眠障害と眠らないことによる死
どのくらい眠れば良いのか?
夢と関係のある病気
夢遊病
レム睡眠(=夢を見ている時)ではなく、ノンレム睡眠時に発症する。
自覚症状がない、また害がないことがほとんど。
不眠症
不眠症、とは:
睡眠を発生させる能力が不十分である。
睡眠の機会が十分に与えられているのに睡眠が十分に取れない。
睡眠状態誤認
医学的にはちゃんと眠っていたのに、本人が眠っていたと自覚できていない。
これは、不眠症ではない。
不眠症の種類
入眠障害型
なかなか寝付けない、という症状
睡眠維持障害型
夜の間に何度も目が覚める、という症状
不眠症の基準
睡眠の量、質に不満がある
日中も極度のだるさや眠気が残る
週に3日以上の不眠があり、3ヶ月以上続いている
他の不眠症に似た病にかかっていない
アメリカでは9人に一人が不眠症
男性より女性の方が不眠症に陥りやすい、白人は比較的不眠症にかかりにくい
不眠が親から子に遺伝する確率は28〜45%。ただし、不眠症の原因は遺伝と環境のどちらもある。
不眠症のメカニズム
精神不安(心配事)が原因で交感神経が刺激される。
交感神経が刺激されると、体温(中核温)が2〜3度上がる。寝付くには、逆に2〜3度下がるべき。
コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンも発生する。脈拍が上がる。
熟睡できるヒト:
扁桃体、海馬、脳幹内の緊張を司る箇所、の3箇所が、眠る時にすぐ静かになる。
入眠が下手な人は、これらが静まらない。視床(目からの刺激を受ける)も活動が収まらない。
これらが静まらないのは「交感神経系」が活発であるため。
ナルコレプシー
遺伝子の異常(突然変異的で遺伝しない)に起因する。2000人に1人。
ナルコレプシーの症状:
日中の強烈な眠気
金縛り。日中に「レム睡眠中のように」筋肉が麻痺する。
カタプレキシー。突然筋力が抜けてしまう。ポジ/ネガどちらでも、感情が高まると発症する。
視床下部(=体内時計、および睡眠/覚醒のスイッチ)が静まることで、脳幹(緊張を司る)がオフになり、睡眠状態に入れる。
オレキシン:視床下部から脳幹に送られる物質。覚醒状態オンにする。夜になると、オレキシンが止まる。 ナルコレプシー患者は、オレキシンの分泌/受容する機能が壊れている。そのため、起きているか寝ているか不安定。
現時点で、ナルコレプシーを治療する方法は見つかっていない。
オレキシンを操作する仕組みで不眠症を解消する薬を作れないか?現在開発中
致死性家族性不眠症
遺伝性の病気。ずっと眠れなくなり、いずれ衰弱して死亡する。
悪性プリオンが視床をスポンジ上に破壊してしまう。このため、覚醒をOFFにする機能が損なわれる。
遺伝的なもので、イタリアとの特定の地方にこの病が発症する可能性のある遺伝子を持つヒトが多く住む。
睡眠不足による死
睡眠を奪われると、食事をとらなくなったのと同じくらいの期間で、死に至る。
レム睡眠のほうが重要度が高い。レム睡眠を奪われるとこうなる。ノンレム睡眠のみ奪った場合は、幾らかはマシ(平均して45日間で死に至る)。
睡眠不足のため、免疫力が下がり、腸内の菌に感染し、敗血症を発症する。
睡眠不足により死亡したラットは、内臓全体に障害を負い機能不全になっていた。
7〜9時間。これは「睡眠のために確保する時間」。入眠時間も含む。
9時間以上寝ていると、逆に寿命が縮まる?
これは表現が逆。「重い病気にかかった人が9時間以上寝ないといけなく、病気のために早く亡くなる」。
(この本が言うには)元々が健康なら、長く寝すぎて寿命を縮めることはない。
とはいえ、食事と同じで、無制限に撮り続けては健康のバランスを損なうかもしれない。
第13章 あなたを眠らせない犯人は誰か
現代社会が「適切な眠りをとりにくい環境」になっている
通勤時間、テレビやネット、早すぎる始業時間、夜でも明るい、室内温度が人工的……
真っ暗にならないと、メラトニンの分泌は始まらない。
ロウソク程度の明かりでも、メラトニンの分泌を阻害する。
真っ暗になってから、さらに幾らか時間が経つと、やっとメラトニン分泌が始まる。
青色LEDは、もっとも視床下部に「昼」を感じさせる。
スマホ、パソコンの画面もLED。
寝る前のiPadの読書は、紙での読書に比べ、メラトニンの分泌を20%減少させた。
iPadを使っていると、メラトニン分泌の開始が3時間遅くなる。
iPadの使用をやめても、数日間はメラトニンの分泌が90分遅かった。
よく眠れる環境とは?
夜は(天井の強い蛍光灯ではなく)間接照明にする。
パソコンを使う場合は、ブルーライトカットのメガネを使用したり、デバイス側の設定で青色を抑える。
MacBook, iPad, iPhone のNightShift 日の入り〜日の出 でONにした。
アルコールがレム睡眠を奪う
お酒で眠くなる、は間違い。
「脳に麻酔をかけた状態」に等しい。前頭前皮質から沈静され、全体に効果が及んでいく。
「夜にワインを1杯飲む」だけでも、確実な影響がある
アルデヒドが、レム睡眠の発生を阻害する。アルコール中毒患者は夢を見ない。
不足したレム睡眠を、覚醒中に得ようとして脳が譫妄状態になり、幻覚を見る。
アルコールは学習を阻害する(数日後であっても!)
実験:新しいプログラム言語を学習した場合:
学んだ後、一週間ちゃんと睡眠をとり、その後テストを受けた場合:学習は定着、むしろ向上した
学んだ後、初日にお酒を飲み、一週間後にテストを受けた場合:50%を忘れていた
学んだ後、3日後にお酒を飲み、その4日後にテストを受けた場合:40%を忘れていた
学習に悪影響があったのは「学習に必要なレム睡眠が奪われた」から。
朝にお酒を飲み、眠らないまま日中を過ごし、完全に排泄されてから寝れば、大丈夫。
夜は涼しく〜理想の室温は18.3度〜
暑すぎる部屋よりは、寒すぎる部屋の方が寝つきが良い。中核温を下げてくれるだろうから。 中核温が下がると、視床下部がそれを感知し、メラトニン分泌につながる。
手、足、頭は血管が多いため、夜になると放熱のために暖かくなる。
手、足、頭を濡らしておくと、気化で放熱されるため、中核温が下がり、眠くなる。
逆に、足を暖めると、足に血液が集まるので放熱に繋がり、中核温が下がる。
「温かいお風呂につかるとよく眠れる」のは、本当。ただし仕組みは「中核温が下がる」から。
お湯に浸かる→血液が体表に集まる→放熱される→中核温が下がる→眠くなる
目覚まし時計は、本当に危険
驚かして無理やり起こすのは「臨戦体制にさせる」こと。心臓や神経に負担がかかる。
「毎日、同じ時間に自然に起きる」のが理想。不眠症対策にはこれが一番よい。
第14章 眠りを妨げるもの、眠りを助けるもの
睡眠薬は、自然な眠りの代わりにはならない。
睡眠薬の多くは「沈静剤」。アルコールと同じで、脳を外郭から麻痺させているに等しい。
本来あるべき「深い眠り」が起こらない。
睡眠薬は依存性があるものもあり、それらを断つと不眠リバウンドが起こり、より眠れなくなる。
実際、睡眠薬の効果はほぼプラシーボ。偽薬テストをした時、有意な差は見られなかった。
睡眠薬が効いた場合、眠りの質が悪く、記憶の定着が悪くなった。
睡眠薬(アンビエン等)を常用していると、死亡率が4.6〜5.3倍になる。
ガンの発生率も高い。
「免疫力が弱まるから(=不自然な眠りでは免疫を得られない)」と考えられる。が…
「元々の不眠が致命的だったから」か「薬自体に害があるか」は不明
薬に頼らない睡眠改善とは?
認知行動療法(CBT-Ⅰ)
まず、良い睡眠環境を整える。
カフェイン、アルコールを控える。
寝室にスマホを持ち込まない。
起床と就寝の時間を定める。
眠くなったら布団に入る。うたた寝をしない。
眠れなかったら、いつまでも布団の中にいない。
夜眠れないのなら、昼寝を控える。
夜寝る前に、心を落ち着かせる。
時計を意識しない環境で眠る。
布団の中で眠れないなら、いつまでも寝ようと頑張らない。
最初は6時間以上は布団の中にいないようにする。活動時間を増やすことでアデノシンによる睡眠圧を高めることを狙う。
睡眠と運動の関係
良く運動をするとよく眠れる、は本当
ただし、運動している人が「運動した日」と「運動しなかった日」で大きく違う、ということはなかった。
「運動するとよく寝れる」というより「よく寝れると良く運動できる」のかもしれない
寝る前に運動をしてはいけない
運動をすると体温が上がり、1〜2時間はそのまま下がらない。
なら、運動をするのは朝だな!
睡眠と食事
極端に摂取カロリーが少ない生活(1日800kcal)を続けると、睡眠時間が短くなる。
「炭水化物が多く脂質が少ない食事」は「脂質が多く炭水化物が少ない食事」よりも深いノンレム睡眠が減り、レム睡眠が増える
糖質と炭水化物が多く、食物繊維が少ない食事を摂ると、深いノンレム睡眠が減り、夜中に起きる回数が増える。
結論として、空腹すぎても満腹すぎても睡眠に良くない。糖質(=炭水化物)は控えめにすること。
第15章 睡眠のために社会は何をすべきか?
日本では66%の大人が7時間以下の睡眠となっている。
日本は睡眠不足によるパフォーマンス低下で、年間1380億ドルの損失を出しているハズだ。
「休日に寝溜め」をしようとしているが、それは無理。発生した寝不足を後で帳消しにはできない。
睡眠不足の労働者は、決まって「一番簡単な作業」を選ぶ。睡眠を十分にとった人は創造的な仕事を選ぶ。
睡眠不足の労働者は、正しい判断もできなくなる。前頭葉の活動が鈍るため。
昼寝が認められる社会
グーグルやナイキは昼寝や概日リズムに配慮した勤務スタイルを取り入れ、業績を伸ばした。
26分の昼寝でタスク効率は34%向上し、覚醒度は50%上昇した。
「寝る子は育つ」は本当
長い睡眠をとっている子供は、比較的知性が高い
学校の開始時刻を一時間遅らせた(=子供の概日リズムに合わせた)ところ、成績が全体的に上がった
現代の子供は、100年前の子供に比べ、睡眠時間が2時間も短い。
睡眠不足(=睡眠障害)とADHDは似た症状
誤診されADHD用の薬を与えられる危険
医療事故、チェルノブイリ原発事故、アラスカの原油流出事故も「睡眠不足のヒトが起こした人災」
第16章 21世紀の新しい睡眠
テクノロジーをうまく使い、睡眠にとってアウェーな現代社会で良質な睡眠サイクルを手に入れる。
身体情報をモニタリングするデバイス(スマホ、アップルウォッチ)を活用する。
照明に気を付ける。夜間のブルーライトを避け、逆に寝起きはブルーライトで覚醒を促す。
新生児は、睡眠しづらい環境に置かれる(=明るい保育器)
「熟睡しやすい保育器」を使用した新生児は、5週間も早く退院できた。
睡眠不足は「人類に蔓延る疫病」と見るべき。
付録:健やかな眠りのための12のアドバイス
いつも同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
夜寝る前に運動してはいけない
カフェインとニコチンを摂取しない
寝る前にアルコールを摂取しない
夜の遅い時間に大量の飲食をしない
可能なら、睡眠を妨げるような薬を飲まない
午後3時をすぎたら昼寝をしない
寝る前にリラックスする
寝る前にお風呂に浸かる
室内を暗くする、室内を涼しくする、デジタル機器を持ち込まない
日中に太陽の光を浴びる
眠れないままずっと布団の中にいない
読み終わって
……いいんじゃない!?
「睡眠」についての知識
全体的、俯瞰的に得られた。
もちろん、学術書と比べれば平易だし、逆のことを言う本もあるだろうが。
僕の「睡眠についての基礎知識」は、この本を土台にできる。
単語もたくさん身についた。
「読書体験」として
(電子書籍だったけど)物理本としては、結構ぶ厚いのではなかろうか。
1日3時間1パートずつ、を4日間で読み切れたのは「読書の良い成功体験」になった。
翻訳が、とても読みやすかった。ん?とひっかかる文章がほとんどなかった。
また「誰にでもわかるレベルに噛み砕いて」ひとつひとつが書かれているので、難解で読み返す、ということもなかった。
この本をどう活かす?
続けて、他の「睡眠本」を何冊か読んでみよう。比較が面白い。
睡眠、および夢と記憶のメカニズムをヒトに説明できる様になった。(それが本当に正確かどうかはさておいて)
「良い睡眠」の視点から見た、身の回りのものの価値がわかった。
カフェイン、アルコール、気温/体温、勤務時間(概日リズムは人によって違う!)、光原、テクノロジー
レム睡眠/ノンレム睡眠の機能。学習は「昼に情報を収集し、夜眠って完成される」。学んで、寝よう!
運動スキルは、眠りを挟むことで向上する(=できるようになる)。
眠りは体(=免疫系)も精神(=トラウマ改善)も癒す
「つらい経験を夢で見ることで「感情」と「記憶」に切り離され、克服できる」ということを知った。
毎日、睡眠時間を9時間確保しよう!
睡眠導入時間も含む
一日でも、一時間でも睡眠不足が発生すると「負債」が発生し、それは後からでは取り戻せない。
睡眠サイクルの後半ほどレム睡眠が長い。睡眠時間を削る=レム睡眠が大きく削られる仕組み。
「健やかな眠りのための12のアドバイス」読み返して、実践しよう!