龍樹「中論」150「觀去來品第二」
Q. 已去無有去 未去亦無去 離已去未去 去時亦無去
動處則有去 此中有去時 非已去未去 是故去時去
A. 云何於去時 而當有去法 若離於去法 去時不可得
若言去時去 是人則有咎 離去有去時 去時獨去故
若去時有法 則有二種去 一謂爲去時 二謂去時去
若有二去法 則有二去者 以離於去者 去法不可得
若離於去者 去法不可得 以無去法故 何得有去者
去者則不去 不去者不法 離去不去者 無第三去者
若言去者去 云何有此義 若離於去法 去者不可得
若去者有去 則有二種去 一謂去者去 二謂去法去
若謂去者去 是人則有咎 離去有去者 說去者有去
已去中無發 未去中無發 去時中無發 何處當有發
未發無去時 亦無有已去 是二應有發 未去何有發
無去無未去 亦復無去時 一切無有發 何故而分別
去者則不住 不去者不住 離去不去者 何有第三住
去者若當住 云何有此義 若當離於去 去者不可得
去未去無住 去時亦無住 所有行止法 皆同於去義
去法卽去者 是事則不然 去法異去者 是事亦不然
若謂於去法 卽爲是去者 作者及作業 是事則爲一
若謂於法去 有異於去者 離去者有去 離去有去者
去去者是二 若一異法成 二門俱不成 云何當有成
因去知去者 不能用是去 先無有去法 故無去者去
因去知去者 不能用異去 於一去者中 不得二去故
決定有去者 不能用三去 不決定去者 亦不用三去
去法定不定 去者不用三 是故去去者 所去處皆無
「去る者が去る」と言ふならば
現に去りつつある (去時)
去る者 (去者。去る主體)
「去る」と云ふ事 (去法)
Q.「去る者が去る」ならば、「去る」と云ふ事 (去法) が有る筈だ
去法は去時に有る
已に去ったもの (已去) は去らない、已に去ったから
未だ去ってゐないもの (未去) は去らない、未だ去ってゐないから
「去る」と云ふ事が無ければ「去る者」は成り立たない
A. 「去る」と云ふ事 (去法) が有るとすれば
「現に去りつつある者」を成り立たせる去る働きと、去る時に於いて有る去る働きと、二つの去る働きが有る事になる
二つの去る働きが有れば、二つの去る者が有る事になる
「去る」と云ふ事 (去法) が有ると假定したから歸謬された
「去る」と云ふ事が無いのだから、「去る者」も無い
A. 去る者が「去る」と云ふ働きによって去るならば
「去る者」に於いて働く「去る」と云ふ事と、去る者が去ると云ふ事自體との、二つの去る事が有る事になる
「去る」と云ふ働きが有る以前に「去る者」が有ると言ふならば、「去る」と云ふ働きが無くても者は去る者であると言ふ事になる
去る者が「去る」と云ふ働きによって去ると假定したから歸謬された
A. 去ると云ふ事がいつか生起するならば
已に去ったところで去る事は始まらない。未だ去らないところで去る事は始まらない。現に去りつつあるところで去る事はもう繼續していて、そこで去る事が始まりはしない
故に去ると云ふ事は生起しない
A. 「去る者」が有るならば
去る者は住しない (留まらない)、去るから
「去る」と云ふ性質を持たない者 (不去者) は、去るか住するか區別がつかない故に住しない (留まらない)
故に何も住しない
A. 去法と去者とは同一ではない
作者 (行ふ主體) と作業 (行ひ) は同一ではない
去法と去者とは異なりもしない
「去る」と云ふ働きが無くても者は去る者であると言ふ事になる
A. 去法によって去者を認識するならば
去法と去者とが同一ならば、去者より前に去法は無いから、去法を去者の說明に用ゐられない
去法と去者とが異なるならば、去者を成り立たせる「去る」と云ふ働きと、去者を說明する「去る」と云ふ働きの、二つの「去る」と云ふ働きが有る事になる
「觀時品第十九」は、別の話題だなぁ
「觀因果品第二十」は「觀時品第十九」に近い
「觀成壞品第二十一」は「觀去來品第二」に近い