トップダウンの信号は感覚入力の予測を表す
from Evaluating the neurophysiological evidence for predictive processing as a model of perception | Annals of the new York Academy of Sciences (2020)
予測(expextation)そのものを調べるのはどうしたら良いのか?
1つの方法は、錯覚(illusion)の利用が考えられる。
カニッツァの三角形(Kanizsa Triangle)
この錯覚では、線が描かれていない(ボトムアップ(Bottom-Up)な入力がない)のにも関わらず三角形が見えてしまう(トップダウン(Top-Down)?)
Shape perception simultaneously up- and downregulates neural activity in the primary visual cortex | Current Biology (2014)
本当は感覚刺激が存在しないが、三角形が見えてしまう領域(illusory contours)においてもBOLD信号の上昇が見られた
しかし、これが予測ユニットなのか、エラーユニットなのかは不明
マカクザル(macaque monkey)のsingle unit recordingではV1とV2がillusory contoursに応答しており、V2がV1よりの応答の開始が早かった
Dynamics of subjective contour formation in the early visual cortex | PNAS (2001)
系列刺激を学習させて、系列刺激の一部分だけを省略して神経活動を見る
ヒトでもマウスでも、省略した場合としていない場合で類似した応答が見られた
Learned spatiotemporal sequence recognition and prediction in primary visual cortex | Nature Neuroscience (2014)
系列刺激を学習させて、一番最初だけ同じ刺激を与えた時の神経活動を見る
最初の刺激が同じ場合は、系列刺激に対するプリプレイ(preplay)が見られる
最初の刺激を変更した場合は、このプリプレイ(preplay)は見られない
これが一次視覚野(Primary Visual Cortex; V1)で確認されている
ヒトBOLD信号: Time-compressed preplay of anticipated events in human primary visual cortex | Nature Communications (2017)
マウス多点電極アレイ(multielectrode arrays; MEAs): Activity recall in a visual cortical ensemble | Nature Neuroscience (2012)
これらはヘブの学習則(Hebbian Learning)からの予測ができない(?)
Naa_tsure.iconこれ、系列刺激を途中でパターン分岐させた場合、どのようなmemory replayになるんだろうか?
Naa_tsure.iconまあ海馬とかの仕事で既にありそうだが
motion illusionに関しても、予測による感覚入力の補間が確認されている
Reconstructing representations of dynamic visual objects in early visual cortex | PNAS (2015)
一次感覚野のレベルでも、刺激の軌道(時系列変化)を元に現在の入力を予測している可能性がある
従来のフィードフォワードネットワーク(Feed Forward Network)型のモデルと回帰(Recurrency)を含むPredictive Processing; PPのモデルをどのように実験的に区別することができるのか?
Predictive Processing: A Canonical Cortical Computation | Neuron (2018)
感覚運動連関を利用する
有名な例は随伴発射(corollary discharge; CD)など
自分の運動によって生じる感覚刺激を抑制するシステムだが、より広くとらえると異なるモダリティ間の予測処理と考えることができる
例えば、マウス(mouse)のanterior cingulate cortex; ACCから一次視覚野(Primary Visual Cortex; V1)への投射は、自身の運動による風景の変化に関する予測を伝えている
A Sensorimotor Circuit in Mouse Cortex for Visual Flow Predictions | Neuron (2017)
Experience-dependent spatial expectations in mouse visual cortex | Nature Neuroscience (2016)
そして、ターゲットとされたV1のニューロンはMismatch negativity; MMNを出すことが知られている
Sensorimotor Mismatch Signals in Primary Visual Cortex of the Behaving Mouse | Neuron (2012)
注意したいのが、トップダウンシグナルが予測を表しているからといって、PPのような予測誤差(Prediction Errors)の計算をしているとは限らないということ
予測誤差(Prediction Errors)はさまざまな実装が提案されている
Predictive Processing: A Canonical Cortical Computation | Neuron (2018)では、負の予測誤差ユニットと正の予測誤差ユニットを提案している
Fitting predictive coding to the neurophysiological data | Brain research (2019)は引き算ではなく、割り算的な計算に基づく予測誤差ユニットを提案している
Predictive Processing; PPでは、知覚体験は事前の経験に強く制約される
この事前の経験は主に2つからなる
系統発生的に獲得されたもの
繋ぎ方が遺伝的に決まっている神経回路など
個体の経験によって形成されたもの
感覚入力のパターンに応じて、神経の応答パターンが形成される
例えば、
cardinal bias:方位選択性を持つニューロンの応答性質を調べると、縦方向のラインに強く応答するニューロンがやけに多い
これは、自然画像において縦方向に伸びる線が多いことと一致
Cardinal rules: Visual orientation perception reflects knowledge of environmental statistics | Nature Neuroscience (2011)
フェレット一次視覚野(Primary Visual Cortex; V1)における活動は発生過程を通じて自然画像に対する応答が段々と安定していく。
Spontaneous Cortical Activity Reveals Hallmarks of an Optimal Internal Model of the Environment | Science (2011)
Unsupervised Natural Experience Rapidly Alters Invariant Object Representation in Visual Cortex | Science (2008)
どのように予測誤差(Prediction Errors)によって予測が更新されるのか?
Large-Scale Cortical Networks for Hierarchical Prediction and Prediction Error in the Primate Brain | Neuron (2018)
Prediction error and repetition suppression have distinct effects on neural representations of visual information | eLife (2018)
解決されていない疑問としては、
どのような生理学的メカニズムによって
自然界の法則性(制約)を抽出しているのか?
トップダウン(Top-Down)の予測はどのように生成されるのか?
予測は単一なのか複数の並行的なプロセスなのか?
予測は異なる内容に対して形成できる
色んな時空間スケール!