2024/7/20
https://scrapbox.io/files/669cacaeee5334001d8b4793.png
お二人とも発表お疲れ様でした。
内容が整理されており、難しい概念もわかりやすく説明されてて素晴らしかったです。
Naa_tsure.iconリアルの発表だとkawaii要素をスライドにねじ込めないので、こういう場で全開放していくスタイルすき
Naa_tsure.icon事前知識ゼロの人が独学で学習するにはあまりに複雑なので、すでに勉強した人が学習のヒント(コツ?)みたいなものを初見の人向けに少しでも残せたらいいよなあと思う今日このごろ
ということで、何か残すためにも喋ったことの整理and補足Naa_tsure.icon
hl.icon
私たちは世界を直接知覚しているのだろうか?
教科書的には、脳は感覚入力を階層的な構造によって処理を行うことで外界を知覚しているらしい。
感覚刺激がまず最初にあって、その入力が脳内で順行性ネットワークで処理されていくイメージ。
私たちの知覚は純粋に感覚入力によって決定される……?🤔
いくつか実験をしてみよう!!Naa_tsure.icon
実験1. 下の図に三角形は何個ある???
https://scrapbox.io/files/669cdc4845ae52001cc08d7a.png
左右の図を構成しているパーツ(位置)は同じでパーツの角度だけ異なる。
左の図でのみ大きな三角形が見えるはず。
https://scrapbox.io/files/669cde1471fa72001cfa56d4.png
本当に外界の入力をそのまま反映しているのであれば、白い領域に線が見えるのはおかしいのでは?
存在しない感覚入力が処理の過程で何かしらの形で補われている?
実験2.次の音声は何と言っている?
ノイズだらけの音声が流れます。
ノイズを加える前の音声を聞いた後に、再度ノイズだらけの音声を聞くと…
https://www.youtube.com/watch?v=eUzm63RDOXo
最初にモザイク音声を聞いたときは全く分からない
しかし、解答を聞いた後ではなんとなーく聞き取れるようになったはず
元音声を聞くという経験によって、モザイク音声の聞こえ方が変化した
感覚入力が同一であっても、一瞬の経験でその感じ方(知覚体験)は大きく変化する…
Naa_tsure.icon個人的にはノイズの中から脳が都合のいいパターンを見出してるって感覚
Naa_tsure.iconその見出し方が経験によって変容する感じ?
Naa_tsure.iconこれの仲間にSine Wave Speech(正弦波音声)というものがあってこっちも面白い
実験3.次の音声は何と言っている?
一回目は頭の中でBRAINSTORM(ブレインストーム)という音声をイメージして聞いてみる
二回目は GREEN NEEDLE(グリーンニードル)という音声をイメージして聞いてみよう
https://www.youtube.com/watch?v=1okD66RmktA
頭の中で思い浮かべる言葉によって聞こえてくる音声が変わる(!?)
しかし、実際に流れている音声は完全に同じ……
脳における予測(期待?)が感覚入力の解釈を変更している
Naa_tsure.icon頭の中での考え次第で知覚を変えることができてしまう
Naa_tsure.iconちなみに、グリーンストームでもブレインニードルでもいける
他に例をあげるとすれば、
自分で足の裏を触ってもくすぐったくない
ポケットに入れたスマホが振動してる気がする
より詳しく知りたい方は、Andy Clarkの動画がおすすめ
How the brain shapes reality - with Andy Clark
https://www.youtube.com/watch?v=A1Ghrd7NBtk
Naa_tsure.icon最初の釘が刺さったと勘違いして激痛を味わった気がした人のエピソード好き
もっともっと詳しく知りたい人は同じくAndy Clarkが出している本がオススメ
The Experience Machine: How Our Minds Predict and Shape Reality
https://scrapbox.io/files/669d18144cb986001cce1e87.png
Naa_tsure.icon残念ながら英語版しかないけど、一般向けに具体例ましましで書かれてるので読みやすい
で、予測が感覚に影響するのはなんとなく分かったけど、もう少し真面目に考えてみたいNaa_tsure.icon
予測する脳-神経系
視点を移動することを考えてみよう
目線を左に移動するとき、景色は右に向かって移動していく
世界自体が右に移動するときも、景色は右に向かって移動していく
では、景色が右に向かって移動していると感じるとき、
この感覚入力はどこまでが自分の行動由来で、どこまでが外界由来なのだろうか?
ここで必要となるのが予測
目線の移動(行動)がどんな景色の移動(感覚入力)を引き起こすのかという予測
この予測があれば、自分の行動由来の外界の変化と純粋な外界の変化を区別することができる
この自身の行動指令に基づいた将来の感覚入力の予測は随伴発射(corollary discharge; CD)と呼ばれる
Naa_tsure.iconちゃんとした解説はこちらをどうぞ
Naa_tsure.iconはじめに紹介されてるハエの例がわかりやすい
この予測は外界が自分の行動でどのように変化するのか?という外界のモデルとも捉えられるため、
動物は外界の仕組みを脳内でシミュレーションする神経機構を持っていると考えられている。
このモデルは内部モデル(Internal model)と呼ばれる。
外界の仕組みを脳内でシミュレーション、すごそう。
しかし、これは世界のすべてをシミュレーションするという意味ではなく、自分が受容できるシグナル(光や音など)を生み出す世界をシミュレーションするという意味合い。
人間は地磁気を受容できないので、これは脳内でシミュレーションしていない。
内部モデルとは、自分にとって関連のある感覚入力を生み出す、直接観測することができない"世界"がどのようなものかというモデルともいえる。
脳が内部モデルを獲得するというアイディアを受け入れると、脳-神経系の捉え方が文字通りひっくり返る。
順行的な処理を行う脳
外の世界
世界(直接観測できない)
↓
感覚信号 (光など)
↓
--------感覚受容器-----------
↓
低次感覚野(単純な特徴; 線分の傾きなど)
↓
高次感覚野(複雑な特徴; 顔など)
脳内
予測的な処理を行う脳
外の世界
世界(直接観測できない)
↓
感覚信号 (光など)
↓
--------感覚受容器-----------
↓感覚入力
低次感覚野(単純な特徴; 線分の傾きなど)
↑予測 ↓予測と感覚入力の差分
高次感覚野(複雑な特徴; 顔など)
脳内
内部モデルが最も詳しく調べられている例として、小脳の運動制御の研究がある。
環境の変化に応じて運動を制御するシンプルな方法として、フィードバック制御があげられる。
しかし、これを実装するには生物のシステムはあまりに遅い。じゃあどうするか?
未来の感覚入力を事前に予測してしまえばいい。
Naa_tsure.icon例えば、格闘ゲームやRTAではしばしば数フレーム単位での行動制御が求められるが、60 fpsで動くゲームの1フレームは約16.7 ms
Naa_tsure.iconそれに対し、視覚情報が網膜を通って運動の計算を行うまでには50-150 msもかかってしまう
Naa_tsure.iconこの時間差を克服するために、この操作をしたら次の状況はこうなるだろうという予測が行われているはず
詳細は以下を参照
視覚情報処理だと視覚入力がV1→V2→V4→ITという階層性のある順行性ネットワークにより段階的に処理され、低次のV1では線の傾きといった単純な特徴、高次のITでは人の顔といった抽象的な特徴に対応する。