ポストウクライナ危機でのグローバル化
2022-09-14 Perry World Houseにて各国の駐米大使話を聞いたことによる参考。(パネリストはシンガポール駐米大使、アフリカ連合駐米大使、パラグアイ駐米大使、NYタイムズ外交政策記者(司会))
シンガポール
シンガポールは資源が乏しい国のため、グローバル化せざるを得ない状況にある。そのため、各国に積極的に働きかけ重商主義などに反対し自由貿易を推進している。地政学上の特性から貿易の要所であり続けようとする姿勢が伝わってくる。
政治と通商
二国間主義より多国間主義、特定の国との同盟関係よりも国際的な枠組み・ルールの尊重という建前を使い、米中対立問題やロシアのウクライナ侵攻に関する質問から逃げていた。外交の舞台でロシアと中国との関係が大きなタブーになっている感じがした。シンガポールに限らずパラグアイ大使やアフリカ連合大使も同じような回答をしており、新興国は生存のために政治のイデオロギーより経済的合理性を尊重している模様。両国と強い経済的関係を築くことで戦争を未然に防ぐという構えだ。ペン大の教授は新しいnon alignment movementと称していた。
国家間格差
何よりも大きな学びだったのは、各国の駐米大使の能力の差が圧倒的だったことだ。
シンガポール大使は弁論が上手で、シニアなキャリア外交官。日本の外交官と似たところがある。とても良いイメージを保っていて、求められている情報を支障のない範囲で出している。頭脳は明晰だが、会話の場を支配しない程度の存在感を保っている。米国名門大の学者たちに、シンガポールの貿易政策に共感してもらおうという姿が伝わる。
アフリカ連合大使はよく喋るが、内容はどんな質問が来てもほとんど変わらない。投資が欲しい、というだけだ。植民地主義の弊害があったことは正しいが、各国は生存するのに必死なのである。アフリカ諸国はまとまっていると訴えていたが、それは数々のクーデタや紛争を無視して物を言っているのだろうか。ここはグローバル化について各国の利害や政策、展望を話す場なのに、無理やりFDIに結びつけているような気がしなくもない。ただ、グローバル化が進まないと食糧危機に陥り、アフリカ諸国の発展が遅れるという点は納得した。
ウルグアイ大使はいかにも南米らしく、現地の有力企業出身だった。外交官というよりはビジネスマンで、少し不慣れな印象が見受けられた。訴えは米国とのFTAに留まっており、あまり発展的な議論はしなかった。一小国の視点としてとらえた。