『三四郎』- 三つの世界と恋愛
主人公の三四郎によると、彼の前には三つの世界がある。
第一は、生まれ育った田舎の過去の世界。母と、母が勧める許嫁者がいる世界。
第二は、浮き世離れした学問の世界。尊敬する師がいる世界。
第三は、東京の富貴な人たちの世界。そして心惹かれる美しい女性がいる世界。
三四郎はどこに行きたいか。
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三四郎は床のなかで、この三つの世界を並べて、互いに比較してみた。次にこの三つの世界をかき混ぜて、そのなかから一つの結果を得た。──要するに、国から母を呼び寄せて、美しい細君を迎えて、そうして身を学問にゆだねるにこしたことはない。
結果はすこぶる平凡である。
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漱石さん、自分は三四郎じゃないもんから、気楽に結論を下させることが出来たわけだ。
ところで、この、田舎で質朴な許嫁者が待っているのに、都会で出会った富貴な美人の謎めいた言動に魅惑される、という話が漱石は大好きだな。いったい何回繰り返すんだろう。漱石の恋愛観、コリコリに固まっているな。この件だけで漱石に関する論文が書けると思う。(既にあるかも)