『三四郎』
まだ読み始めたばかりだけれど。
非常に読みやすい。これまでで一番読みやすかった『坊っちゃん』と甲乙付けがたい。(何でそんなに読みやすさに拘るのか、、、) そして、瑞々しい青春の心の動きが心地良いので、立ち止まることなく読み進めることが出来る。
この小説に描かれたキャンパスに憧れて東京大学に入った人って、多いんじゃないかな。多くあって欲しい。
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読みやすく、面白い小説だった。
読みやすさは『坊っちゃん』と同じぐらいで、私が今まで読んだ漱石の著作では最も読みやすい部類に入る。
面白さについては、漱石自身が書いた「『三四郎』予告」という短い文章がすべてを語り尽くしている。反則かも知れないが、これ以上は短くできないので、全文を引用する。
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田舎の高等学校を卒業して東京の大学に這入つた三四郎が新しい空気に触れる、さうして同輩だの先輩だの若い女だのに接触して色々に動いて来る、手間は此空気のうちに是等の人間を放す丈である、あとは人間が勝手に泳いで、自ら波瀾が出来るだらうと思ふ、さうかうしてゐるうちに読者も作者も此空気にかぶれて是等の人間を知る様になる事と信ずる、もしかぶれ甲斐のしない空気で、知り栄のしない人間であつたら御互に不運と諦めるより仕方がない、たゞ尋常である、摩訶不思議は書けない。
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『三四郎』は漱石の意図通りの小説になっている。漱石は自らの関心事について自ら考えて述べるのでなく、必要と思われる場所と人物を準備するにとどめて、彼らに勝手に行動させて観察する。