平凡
かつて同僚に、なにか変わった執筆習慣はあるかときかれて、ギャスはこう答えている。
「いや、残念ながら、いたって平凡だよ」ギャスはため息をついた(中略)「朝はいつも最初になにをするんだい?」「ああ、外出して二時間ほど写真を撮る」「なにを撮るんだ?」「町のみすぼらしい一画だ。虐げられ、見捨てられたような場所。だいたい汚らしいゴミや朽ち果てたものかな」ギャスはそっけなく手を振りながら、たいしたことじゃないという風にいった。「毎日?腐ったゴミを撮ってるのか?」「ほとんど毎日」「そのあと執筆?」「うん」「それを変わってるとは思わないのかい?」「ぼくにとっては変わってない」